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「……状況はどうなっている?」
重厚な鎧を纏った男が思考を止めて顔を上げた。
「まずいね。全く歯止めが効かない。これだからイレギュラーってやつはねぇ〜。」
尋ねられた男は気軽に言った。
実際は由々しき事態であるのだが。
「継承者は?」
「見つからないよ。完全に空席状態。誰かが『ここ』まで辿り着いてくれれば手っ取り早いんだけどねぇ。」
肩をすくめ苦笑いを浮かべると、青みがかった髪をかきあげた。
「あと、残りの七剣のほうだけど、契約されちゃったみたい。五本でやるしかないね。」
「……そうか。成功率が下がるな。」
「協力要請はしてみるけど。まぁ、エクスカリバーの主は断りそうなんだよね。」
「他の成功率を上げる手段を探すしかあるまい。それは最後の手段だ。」
「はいよ。じゃあ俺は他の手段を探してくるとするかー。」
ポケットに手を突っ込んで、散歩にでも出掛けるような感じで部屋を出ていった。
入れ替わりで部屋に入ってくるのは法衣のようなものを着た女。
目を閉じ、かといって危なげなく、鎧を纏った男の前に座る。
「ごきげんよう、1か月ぶりですわね。」
思ったより深く沈むソファーに、居心地の悪さを感じながら女は言った。
「……あぁ。お互いに忙しいな。」
鎧の男は疲れたように言った。
「私はそうでもありませんわよ?周りのものが優秀ですから。」
クスクスとほのかな妖艶さを醸しだして微笑む女。
「今日は機嫌が良さそうだな。いい人材でも見つかったのか?」
鎧の男は苦笑しながら女へと尋ねる。
「えぇ、何人か。今回の召喚者達はとても興味深いわよ。『見つめる』のが楽しみ。さらけだされた後、どんな表情を見せてくれるのかしら……。」
甘い痺れが体を走り、女は体を震わせた。
「壊すなよ?」
たしなめるように鎧の男は言う。
「そんなもったいないことしないわ。手元に置いて愛でるだけ。」
その微笑みは聖母のように見えたが、何かが違っていた。
「それより、ガナートはどうなった?」
今日、鎧の男が尋ねたかったことである。
「半減した力を取り戻すって、出ていったわよ?返り咲けるとは限らないのに。」
若干の哀れみを込めて女は言い放つ。
「確かに例は無いが、現状が現状なだけにガナートにも頑張って欲しいな……。」
鎧の男はため息をつきながら呟くように言った。
「また動きがあれば教えて下さいね。しばらくは傍観させてもらいますから。有名人というのも困りますわ。」
女は席を立ち、優雅に一礼すると部屋を出ていった。
「相変わらず、マイペースだな……。」
鎧の男は苦笑した。
そして、女を見送ると、目を閉じ思考の海に埋没した。
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
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