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慎悟が用意したプリントにはメンバーが遭遇したモンスターの一覧もあった。

慎悟達の他に麻衣や雅輝の体験が参考になっている。

「さて、ここまでで何か質問はあるか?」

慎悟は会議室を見渡した。

何人かの手が上がった。

「では時計回りで質問していってくれ。」

慎悟が促す。

雅輝が口を開いた。

「クラスの使い心地はどうだったよ?」

クラスを持たない雅輝はどういったメリットとデメリットがあるのか気になるようだ。

「そうですね、基本的にデメリットは無いように思えます。それに合わない運用をすれば違うのでしょうが。」

「ふむ、具体的に説明してくれるか?」

「例えば、私は剣士のクラスですが、剣の使い方の習得がクラスが無い場合に比べて格段に早いですね。専門的なことはわかりませんが、恐らく剣に必要な知識、筋力が自然に身に付いていたように思えます。」

「そうか。ということは、その存在に特化していくということなんだろうな。」

「……もしかすると、あの世界では存在というものがキーワードなのかもしれません。」

雅輝は質問が終わったという感じで自らの思考に埋没する。

慎悟は次の人の質問を促す。

「私達は朔夜ちゃんと会ったんだけど、このメンバー以外に召喚された人に出会った人いるのかな?」

美綺が尋ねる。

「私達は会っていないが、出会った人はいるか?」

皆に尋ねる慎悟。

柔耶が手を上げる。

「そういえば、会ったよ。竜介君とゆきちゃんだったかな?3日目にアオ姉が敵を殺しちゃったら、怒っちゃってさ。すぐに別れたんだ。忘れてたよ。」

笑って話す柔耶。

「その二人について何かわかるか?」

「うーん、あんまり話してないからねー。とりあえずこの学校じゃないことと、二人は幼馴染みだってことぐらいかな。確か、朔夜さんと 同じ時期に来たって言ってたけど。」

「わかった。他にはいるか?」

手は上がらなかったので、再び質疑応答が始まる。

「なんでリーアさんがこっちの世界にいるんですかー?あと、昨日はどこにいたんですかー?」

シロウがなんだかワクワクして尋ねた。

「秘密です♪」

ちょうどケーキとお茶を運んできたリーアが人指し指を口元に当てて、ウィンクをして答えを返した。

シロウはその笑顔に免じて、とりあえず納得しておくことにした。

「その辺りのことはおいおい明かしていきたいと思いまーす♪でも、今日は別のことを話し合おうと思ってまして。」

リーアは慎悟に話してもいいかどうか目で聞いてみた。

慎悟は続きを促した。

リーアは一礼して、周りを見渡した後、語り始めた。

「率直にいきましょうか。衛星様、刀夜様は生き返らせることが出来ます。」

その言葉に思わず席を立つ衛星。

「そ、それは本当なのか!?」

声を荒げる衛星。

「お茶でも飲んで落ち着いて下さいな♪刀夜様が生き返るかどうかは衛星様達の働きにかかっていますから。」

柔らかい笑みで衛星をなだめるリーア。

衛星はなんとか気を落ち着けて席に座った。

「では、続けますね♪こちらの世界は死者は復活出来ませんが、あちらの世界では復活させることが出来ます。こちらの世界で出来ること と、あちらの世界で出来ることは違います。ここは重要なことなので覚えておいて下さいね?」

リーア先生の言葉に、元気良く返事をしたのはシロウ以下数名。

話は続く。

「神官の高位の奇跡に『復活』があります。それが一番手っ取り早いのですが、他にマジックアイテムなんかでも同じ効力を発揮するものもあります。ですが、どちらもかなりのお金がかかります。」

櫻が立ち上がり口を開いた。

「お金の問題に関してはお任せ下さい。」

リーアは頷く。

「恐らく、『肉体の復元』と『復活』は別の奇跡を使うことになるでしょう。さらに、別の奇跡を使わなければならないかもしれません。それは司祭クラスの方に判断してもらわなければならないでしょうが。」

「ということは、刀夜を生き返らせるのに、いくつかの手順を踏まなければならないんだな?」

真剣に話を聞いている衛星。

「そうですね。あとはコネが無いとダメですよ。司祭クラスの人まで話が通らないと問題外ですから。資金とコネが鍵です。」

そこで、麻衣がおずおずと手を上げて発言する。

「えっと、私、もしかしたら……。」

麻衣は森で出会った、派遣討伐神官団のことを語った。

「派遣討伐神官団の方ですか。うーん、微妙ですね♪そういう方達は、力はあっても教会内では権力が無い方が多いですから。コンタクトを取っておいて損は無いでしょうが。」

麻衣は残念そうにうつむいた。

自分では役に立てなくて悔しかったのだ。

「麻衣様には他にやってもらいたいことがあります。伝説の七剣、コキュートスのことなんですが……。」

リーアの言葉に麻衣は顔を上げた。

「コキュートスを使いこなして下さい。剣を扱うということと、コキュートスの能力、氷を操る力も使えるようにして下さい。操れるようにしないと、刀夜様を封印している『氷の棺』を解除出来ませんから。」

麻衣は頷いた、しかしふと疑問が出来た。

「……リーアさんが解除するのはダメなんですか?」

リーアは首を振る。

「私ではどんな努力をしても成功しないでしょう。こちらの世界の人とあちらの世界の人では、やはり基本能力の差があるんです。実は『氷の棺』が成功したのはメイドのクラスに備わった特殊能力のおかげなんですよ?」

「それってどんな能力なんですか?」

「あらゆることに対して一度だけ成功するという能力です。この能力のおかげで、本来は成功しないことを一度だけは成功することが出来るんです。ですから、コキュートスの『使用』を成功させたので、解除のための『使用』が出来ないんですよ。」

リーアが苦笑しながら言った。

慎悟が手を上げた。

「一つ尋ねたいことがある。」

「はい、どうぞ。」

「『復活』を『成功』させることは出来ないのか?」

リーアは首を振る。

「『復活』や『勇者の武具』といった習得していないものには使えません。苦手でも習得しているものなら効果を発揮します。あと、習得うんぬんに関係無いマジックアイテム、この場合『コキュートス』の使用には効果を及ぼします。」

慎悟がふむふむと頷いている。

「例えば、リーアさんが『復活』を習得していて、『復活』の対象が、通常では『復活』させるのが不可能な場合でも、メイドの特殊能力で『成功』させることが出来るのか?」

「はい、それは大丈夫ですよ♪」

「便利だな……。」

「ですが、クラスをメイドにするとメイド服着用が義務です。」

「当たり前だろ!」

シロウが机を叩き叫んだ。

その目は真剣だった。

そんなシロウを無視して話しは続く。

「えーと、脱線したので話を戻します♪刀夜様を生き返らせるためにやってもらいたいことは、

1、『復活』を使うことが出来る司祭級の人物との接触。

2、資金集め(クリア?)

3、麻衣様がコキュートスを使いこなす。

基本はこの三つです。」

衛星、櫻は頷いた。

「……あの、別に嫌ってわけじゃないんですけど、コキュートスを使うのがなぜ私なんですか?」

麻衣は戸惑いの表情を隠せずに発言する。

「単純なことなんですよ?麻衣様がこの中で一番基本能力が高いんです♪」

ニコッ、と麻衣に微笑みかけるリーア。

麻衣が顔を赤らめる。

「……俺、今からシルビアのところに行ってくるから、後はよろしく!」

いきなり衛星が、椅子を倒しそうになるぐらい勢いよく立ち上がると、会議室から走り去っていった。

衛星が去った後も、話は続いた。

「そもそも、なんで刀夜君をコキュートスで封印したんですか?」

美綺がケーキを口に運びながら尋ねた。

「一つは肉体の損傷、腐敗を防ぐためです。あと、こちらの世界に帰還させるのを防ぐためです。」

リーアはお茶のおかわりを注いで周りながら答えた。

「あ、どうもです。……帰還を防ぐため、ですか?」 光騎はリーアにお礼 を言いながら疑問を口にする。

「死者は帰還した時点で、召喚対象から除外されます。こちらの世界では生き返らせることが出来ませんから、あちらの世界に封印しておかなければならなかったんです。」

奏歌は納得したといった感じで頷いた。

会議は一旦休憩を挟んで、今度はそれぞれの体験を語り合うことになった。

たった5日間のことだったが、その日のうちに、全員が語り尽くすことは出来なかった。

後日改めて集まることを約束してその日は解散になった……。



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