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白い閃光が脳髄を貫いていく。

体が光の粒となって砕け散ってしまいそうな感覚。

いや、実際に砕けてしまったのだ。

そして、その光の粒が世界を越えて、白の部屋へと収束されていく。

それぞれの体が形成され、収まった光の中、白の部屋に集まった者達が瞳を開けた。

「あれ?なんでここにいるんだろ?」

光騎が辺りを見回しながらきょとんとしている。

他のメンバーも同じような表情でキョロキョロしていた。

「ふむ、どうやら誰かが魔王を倒したようだな。」

ガイドが頷きながら言った。

「ねぇ!?刀夜は!?なんで刀夜はいないの!?」

シルビアが青冷めた表情で叫ぶ。

必死で周りを見渡し、刀夜の姿を探す。

光騎達を押し退け、シロウを突き飛ばして探す。

しかし、刀夜の姿は見つからなかった。

「どこ!?どこよ!?ねぇ!あんた知ってるんでしょ!刀夜はどこよ!?」

シルビアはガイドに食ってかかった。

襟をつかみ揺さぶる。

「お、おい、落ち着けよシルビア!」

衛星がシルビアをガイドからひきはがす。

ガイドは少し咳き込んで、襟を直した。

「……ここにいないということは……。」

言葉を濁すガイド。

それを聞いたシルビアは顔をひきつらせる。

そして、体から力が抜けてその場に座り込んでしまった。

虚空を見つめて呆然とするシルビア。

刀夜騎士団はうつむいた。

衛星は拳を震わせ血をにじませる。

メイディアは瞳に涙をためた。

櫻は唇を噛みしめる。

菫は拳を固めて壁を殴った。

「……あの、刀夜さんのことでお話があるんですけど……。」

悲しみに沈む騎士団におずおずと麻衣が話しかける。

その手には青く透き通った剣があった。

衛星が顔をあげると、麻衣の隣りにはリーアもいた。

「……それで、あの刀夜さんのことなんですけど……。」

麻衣は言いよどんでしまい、なかなか言葉を紡げないでいた。

そこで、リーアが一歩前にでて言い放つ。

「刀夜様は亡くなりました。魔王との相討ちでしょう。麻衣様と私が刀夜様を発見した時には既に息はありませんでした。」

リーアは表情を変えずに淡々と事実を述べていった。

「……そう……ですか……。」

衛星が力無く頷く。

麻衣はいたたまれなくなって、うつむいた。

「うわぁぁぁっ!あぁぁぁぁぁ…………!」

シルビアが手で顔を覆い泣き叫んだ。

指の隙間からボロボロと涙が溢れる。

場は静まり、シルビアと騎士団達の嘆きだけが響いた。

「ねぇ、柔耶?」

葵が不思議そうな顔をしている。

「なに?アオ姉。」

柔耶は微笑んでアオ姉に答える。

「なんであの人達は泣いてるの?」

シルビア達を指差して意味わかんなーい、って感じで言い放つ。

ちなみに葵には空気を読む機能が備わっていない。

柔耶はどう説明するか悩んだ。

「だってね、ここはそういう世界なんだよ?死んだり、殺したりするのは当たり前なんだよ?いちいち悲しむのはおかしいよ。」

柔耶にまとわりつきながら問いかける葵。

柔耶はそっと葵を抱き寄せて口を開いた。

「悲しみの受け止め方は人それぞれなんだ。それがどれだけ心に響くかもね。大切な人なら余計に悲くなるんだよ。僕だってアオ姉がいなくなればすごく悲しいし。」

「ふーん。そっかー。あたしはよくわかんないや。柔耶は好きだけど。」

いまいち理解していないような顔の葵。

それでも柔耶はいいと思った。

葵が自分を必要と思ってくれてる限り、あとはどうでもよかった。

必要と思われなくなればただ消え去るのみである。

「ふむ、魔王を倒すと帰還か。これは元の世界に戻るということでいいのか?」

何かを考えながら慎悟がガイドに尋ねた。

「うむ。まもなく移動が始まるだろう。」

「そうか。案外あっけなく終わったように思えるが……。」

慎悟が拍子抜けしたように言った。

しかし、ガイドは首を振る。

「まだ終わってはいない。」

「ん?魔王は倒したんだろ?それなら終わりだろうよ。」

慎悟の隣で聞いていた騎理が言った。

「倒したのは一人だけだ。魔王はまだ他にもいる。」

ガイドがさらりとそんなことを言った。

ほとんどのものがまだ知らぬ情報である。

「あらあら〜、大変ですねー。」

真矢はマイペースな反応。

事の重大さを理解しているか謎である。

「……。」

仁は本来の姿で壁によりかかり、黙って成り行きを眺めている。

(……まだ情報が足りなさすぎるな……。)

興味なさそうな仕草をしながらも、その眼光は鋭く辺りを見据えていた。

「おらっ!さっさと起きろ!」

足元の物体を蹴り飛ばす雅輝。

「ぐぶふっ!?」

シロウの脇腹に足のつま先がめり込む。

そのまま軽く飛ばされ、地面を跳ねた。

二人は薄汚れた格好をしていた。

顔は泥で汚れ、服はあちこち破けている。

シロウは受け身をとった勢いで立ち上がると軽く埃を払うようにして、顔をあげた。

「なにするんですか。くそぉ、敵を欺くにはまず味方からってことですか!?」

「うっせぇ、黙っとけ。」

雅輝のパンチがシロウの顔面を捉える。

まだシロウには避けられない、だから当たると同時に後ろに飛んでダメージを緩和する。

この体術は、リーアと別れてから雅輝との修行?で身に付けたものである。

とりあえず死なないために身に付けた。

ないよりマシだろうということで。

だが、シロウは詰めが甘かった。

確かにパンチのダメージを緩和することに成功したが、シロウの後ろには壁があった。

「ガフッ!?」

勢いよく飛んだだけに、勢いよく壁に激突した。

「……こいつダメだわ……。」

雅輝が呆れて呟いた。

「……うわぁ、私達すごく場違い……。」

ヒラヒラのウェイトレス姿のゆかり。

ウェイター姿の縁に、割烹着な時也。

だいたい他のメンバーは薄汚れていて、顔つきまで変わっていたりするのに、この3人はごく普通のバイトの人である。

なんとなく邪魔にならないように隅に座る3人。

意味もなく三角座り。

「俺達、またあっちに行ってもバイトだよな。」

「だよねー。」

縁と時也がそんなことを呟いた。



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