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「ねぇねぇ、光ちゃん?」
クイッ、クイッと光騎の服を引っ張る美綺。
「なに?美綺姉。」
光騎は振り向いて美綺を見た。
「朔夜ちゃんがいないなぁー、と思って。」
光騎は辺りを見回す。
朔夜の姿はなかった。
「初めてじゃない人はここを通らないんじゃなかったですか?」
奏歌は朔夜の言葉を思い出しながら言った。
「はいはーい!じゃあ次は眞彩達も通らないってことー?」
光騎に抱きついて眞彩が言った。
「そうなんじゃないか?よくは知らんが。」
貴人は適当に言った。
「そうなんですか?」
光騎はガイドに尋ねてみた。
「いや、移動中、もしくは移動が始まる前に行きたい場所を念じれば、ある程度の融通はきくらしい。」
「ある程度とは、また曖昧な……。」
奏歌は呟いた。
「そんなの関係ないもーん。光ちゃんのことしか考えてないから、光ちゃんと一緒に決まってるんだから〜♪」
光騎に抱きつく美綺。
眞彩と美綺の両方に抱きつかれて、やはりたじろぐ光騎であった。
「あっ、でもでもー、違うクラスに変えたいから次にこっち来る時、ここ寄ってこー?」
上目使いで光騎を見る美綺。
抱きついた状態で、いや、体が密着した状態だとかなりの破壊力である。
「う、うん。いいんじゃないかな。」
光騎は頬を赤らめながら頷いた。
その様子をムスッとしながら見ているのは奏歌と眞彩。
どうやって気をひこうか思いつかないので、とりあえずギュッと抱きつく二人だった。
「……ラブラブでいいよなぁ……。」
居心地の悪くなってきた貴人。
というより、影の薄くなってきた貴人は、ゆかり達の横に並んで座ってみたり。
『なんだかなぁ…。』
三角座りでため息をつく4人だった。
「そろそろだな。」
ガイドがそう呟いた時、光騎達の体が白く発光し始めた。
「……元の世界に戻るのか……。」
衛星が苦渋の表情で言った。
「……刀夜のいない世界なんて……。」
シルビアのか細い悲しみの声。
発光が激しくなる中、縁はふと疑問に思ったことがあった。
「てか、このままの格好?」
ウェイター姿の縁。
「それは困る!」
ヒラヒラのウェイトレス姿のゆかりはきっぱりと言い放った。
どうにもシリアスにならないセリフを最後に白の部屋を後にした。
日が沈みかけた学校の屋上。
そこの風景が揺らぎ、白い光が明滅する。
そして、光の粒子が降り注いでいき、それが形を成した。
「お?学校か?」
雅輝は見慣れた景色を確かめるように辺りを眺める。
「あれ?元の格好になってる……。」
麻衣はついさっきまで持っていた剣と弓矢が無くなっているのに少しの違和感を感じた。
(……ずっと戦い通しだったからなぁ……)
今は着慣れていたはずの制服姿。
それでも、腕や足の擦り傷はそのままだった。
「なぁ、慎悟。俺達が移動してから約5時間しか経っていない。」
騎理が携帯を見ながら言った。
「……ふむ、あっちの世界では5日間を過ごしたから、こっちの1時間が向こうの1日といったところか。」
頷く慎悟。
新たな情報が慎悟の脳にインプットされた。
「すまない、みんな聞いてくれ。」
慎悟は全員を見渡して言った。
「明日あたり、全員で集まらないか?情報交換と情報整理が必要だと思うんだ。」
慎悟の言葉に一同が頷いた。
「場所は〜?」
美綺が聞いた。
「そうだな、学校の会議室はどうだ?」
「使っていいの?」
「生徒会長権限だ。」
「おお〜、権力者の香りがする〜。」
「……みんなはそれでいいか?」
それぞれが了承の返事をした。
「でも刀夜様のことはどうするんですか?」
リーアが衛星達に尋ねた。
「なんでリーアさんいるの!?」
「メイドですから♪」
シロウの疑問をさらっ、と流したリーア。
「刀夜は一人暮らしだから……。」
衛星が答える。
シルビアは虚ろな表情のままであった。
「そうですか。明日は必ず来て下さいね。」
「……えぇ、俺は行きますよ。シルビアはちょっと無理かもしれませんが……。」
そう言うと、衛星はシルビアを立たせる。
ふらつくシルビアを支えながら屋上を去った。
それをきっかけにその日は解散となった。
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
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