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「さて、勇者よ。覚悟は出来たかな?」

男は余裕の笑みを浮かべながら、剣を構えた。

こいつ、かなり強いな・・・

おそらく、この世界の人間の中で能力の高い部類に入るんだろう。

そもそも、剣技に関しては確実に負けている。

「・・・あんた、名前はなんだっけ?」

雑談でもして、時間稼ぎをしなければ。

地力で負けている分、頭使わないと勝てない。

「対戦相手の名前ぐらいは知っておいて欲しいものだな。まぁ、いい。私はギルムント。

勇者よ、我が名を抱いて朽ちるがいい。」

あれぇー?殺る気マンマン?

やべぇな、斬り合いでは勝てない。

ひとまずは距離を取って戦うか?

俺は氷の魔剣を構えてギルムントの出方をうかがう。

「先日の魔剣が無いのであれば、一気に決めさせてもらう!」

ギルムントが踏み出す瞬間、氷を放ち牽制。

しかし、鮮やかに鞘から抜き放った炎の魔剣の効果で打ち消される。

チッ!このままではマジでやばい!

距離を取るべく後退するが、舞台の上でたいして逃げ場があるはずがない。

ジリジリと追い詰められていく。

・・・腹を決めて斬り合うしかないのか?

氷の剣を収めて、背中の剣に手をかける。

「させん!」

俺に剣を抜かせるつもりもないようだ。

あと一息で距離が詰められる!

「このっ!」

盾の裏に仕込んだクナイを放った。

五本のクナイがギルムントへと迫る。

この距離で避け切れるかよ!?

「せいぃぃぃっ!」

目にも留まらないとは、このことを言うのだろう。

凄まじい速度で全てのクナイが打ち払われてしまった。

その勢いのまま迫るギルムントの刃。

「くっ!?」

キィィンッ!!!

なんとか盾で受け止めることが出来た。

「そらそらそらそらそらぁっ!!!」

連撃。

必死でついていくのがやっとだ。

いや、確実に押されている。

少しずつこっちのテンポが遅れ出してきた。

「調子に乗りやがって!」

いつまでも好き放題やらせるか!

舞台に散らばった、クナイへと意識を送る。

持ってきたのはただのクナイではない。

用意してもらったのはマジックアイテム。

精神力を注ぎ込んだ量×1分の間だけ、自在に動かすことが出来るもの。

密かに5本を宙に浮かべ、ギルムントの背中めがけて飛ばす。

卑怯と言われようが、勝てば正義!

無防備な背中へクナイが吸い込まれるように走る。

「むっ!?」

こいつ、背中に目でもあるのか?

クナイの存在に気づくと、瞬時にそちらへと向き直る。

今だ!

俺は残りの5本のクナイを放った。

前後からの合計10本のクナイの攻撃。

これは避けられまい!

「ぬうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

ギルムントはまるで駒のように鋭く、速く回転した。

迫るクナイ全てを薙ぎ払わんと剣を振るう。

「ちぃっ!」

意識を飛ばしてクナイを操る。

四方八方から狙いを定めて宙を走らせる。

払われても、払われても、隙をうかがいながら攻撃の手を休めない。

だが、ギルムントは強かった。

浅い傷を負わせることは出来ても、致命傷を与えることは無い。

このままでは時間切れになってしまう。

積極的に斬りにいくしかない。

背中の剣を抜き放って構える。

ちょっとした肉体強化の魔術がかかった剣。

他の剣は能力優先と外見優先だったため、俺の体格に合った剣ではなかった。

だから、これは体格に合わせた剣。

使いやすい反面、ほとんど普通の剣と変わらない。

俺の腕が試されるということだ。

・・・不意でも打たないと勝てる気がしないが。

「ふっ!」

クナイを操りながら攻撃を仕掛ける。

「なんの!」

クナイの攻撃で手一杯かと思われたが、あっさりと対応されてしまった。

もっとクナイを機敏に、剣も重く速くだ!

しかし、ことごとくはじき返されてしまう。

舞うように戦うギルムント。

全てに対応しながらも反撃を繰り出す余裕まである始末。

「くらえ!」

最後の切り札。

左手にある盾を投げつけた。

「単なる盾ごとき!」

斬り払うまでもないと、体を捻って避けるギルムント。

「ただの盾なわけがあるか!」

俺の盾は、所持するものの能力を発揮する盾。

回転しながら氷の魔剣の力を発揮する。

いくつもの氷の塊を放つ盾。

「チィッ!?」

速度を上げて氷塊を撃墜してゆくが、容赦無く連発。

すかさず、クナイで狙い撃つ。

ギルムントのマントを斬り裂き脇腹をかすめた。

惜しいな。

俺は1本のクナイを手元に戻した。

そして、盾にクナイと同様の力を発揮させる。

精神力を注ぎこみ、自在に盾を操る。

弧を描き、再びギルムントへと飛来。

「くっ!?」

氷塊を吐き出しながら迫る盾を大きく跳んで避けた。

そこへ、斬りかかる俺。

力を込めた大振りの攻撃。

体勢の崩れたところへ放つのであれば、これで十分なはず!

「・・・舐めるなよ、小僧!」

突然、ギルムントの口調が変わった。

殺気を孕んだギラリとした気配。

ぶち切れたってことか!?

「ふんっ!」

俺の剣が届く寸前に右足を振り上げ、一気に下ろされた。

ガキィィィンと音がして、剣の平に命中。

どうやらブーツに鉄板でも仕込んでいたらしい。

衝撃で剣を落としそうになる。

それをカバーするべく、クナイと盾をギルムントへと向かわせる。

「ハッ!」

気迫を込めた一撃が振るわれた。

向かいくるクナイが順番に砕かれていく。

襲いくる盾は氷塊を鮮やかなステップでかいくぐり、力を込めたただの拳で叩きおとされてしまった。

「なっ!?」

あまりにもあっけないその光景に呆然としてしまった。

強すぎる。

こいつには勝てない!

横目でギラついた視線と目が合う。

これが、殺気というもの。

殺し合いをするということ。

「・・・勇者よ、君はどうやらやっと認識したようだ。」

ギルムントの踏み出す一歩に合わせて、一歩後ろへ下がる。

それは無意識の行動だった。

「真の殺し合いの場では、小細工など通用せんよ。」

ヒュンッと空気を切り裂く剣を振るう音。

背中を冷や汗が伝う。

呼吸が苦しくなる。

そして訪れる、時間切れ。

クナイは力を失い、地に落ちる。

いや、俺はそれらの存在を忘れてしまっていた。

迫りくる死の恐怖の前には全てが単純になる。

ただ一つの思考に辿り着くということ。

死にたくない。

生きてる限り、この心臓が動く限り、強制的とも思えるほど抱く想い。

・・・あぁ、これが生きているということなのか。

死を感じて、生を実感。

いつ死んでも構わないと思っていたけれど、いざ身近に感じるとそうでもないようだ。

脳がピリピリとする。

心臓の鼓動が早まる。

全身が、あがいて、あがいて、あがきぬけと叫んでいるようだった。

「さぁ、死んでくれたまえ。」

ひどく冷めた、そんな台詞を言い放つと心臓を狙った一撃が放たれた。

俺は奥歯を噛みしめて、必死で剣を振るった。

重く鋭い一撃をなんとか受け止めた。

「見苦しいぞ!」

「うるせぇ!」

連撃を食い止める。

体のあちこちをかすめて、血が噴き出す。

これが痛み。

これが血の味。

そんなことも知らずに俺は戦っていたのか?

手が痺れる。

腕があがらなくなってくる。

それでも、俺は最後まであがいてやる。

傍から見れば、格好悪く映るかもしれない。

俺だって、こんな暑苦しいのは嫌だ。

でも、死にたくはない。

生きていたい。

まだ、俺は何もしてないんだ!

ついにギルムントの攻撃に耐えられず、剣がはじかれてしまった。

放物線を描いて宙を舞う剣。

「終わりだ!」

上段の構えから放たれる死の一撃。

俺はそれから目をそらすことなく、ただ睨みつけた。

ここで終わるのか?

本当に?

耳鳴りがする。

瞬間、目の前が真っ白になる。

そこは一点の曇り無き白の世界。

澄み渡る意識の中、がむしゃらに腕を伸ばした。

そこに何かある気がして。

それはきっと夢のような希望だった。

ハッ、と気がつけば目の前に迫る刃。

伸ばした手が刃に触れる瞬間、現れたのは眩い光。

この世のものとは思えない黄金の輝き。

「ぬうぅぅぅぅぅぅっ!?」

確かな力を持った光はギルムントへとぶつかった。

踏ん張るギルムントだが、ジリジリと押されていった。

そして、溢れ出した光はそんままギルムントを吹き飛ばした。

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

観客席へと吹っ飛ばされていくのを俺はただ呆然を見送った。

今のはなんなんだ?

ドンッ!と大きな音を立てて、観客席へとめり込むギルムントの体。

闘技場全体が静かになった。

走る審判のお姉さん。

ギルムントの状態を確認すると、意識は無いが生きてはいるらしい。

観客達がざわめき始めた。

俺と同じく、今のはなんだったんだ?と。

俺だって何なのかわからない。

だが、あの光は確かに俺が放ったものだ。

「現在、審判による審議中です。しばらくお待ちください!」

アナウンスが流れた。

舞台外の審判も含めて、話し合いが始まる。

ギルムントは医務室へと運ばれてゆく。

俺は手持ちぶさたで舞台に突っ立っていた。

勝ち負けより、生き残れたことの嬉しさが心を占めている。

自分で思っていたよりも、生への執着があったようだ。

新しい自分のを発見してしまったかもしれない。

「審議の結果、騎理選手の勝利とします!」

物思いにふけっていると、審議が確定したらしい。

観客席からは、ブーイングの嵐。

「騎理選手から放たれた光は魔術のように思えましたが、魔力を感知出来ませんでした。

ですから、今回の使用は有りということにし、次回からの使用は不可ということにします。」

審判の説明に渋々納得するものもいれば、まだ文句を言っているものもいる。

・・・次の戦いではアウェーになるかもな。

苦笑いを浮かべながら、審判から勝利の言葉を受けた。



あとがきっぽいもの。
作者「ハプニングで間が開いてしまって申し訳ない・・・。」
葵「おわびに更新頻度を上げるということで、ここは一つ♪」
作者「やってやるさぁー!」
葵「おおーっ!」
                 おわり



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