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闘技場から屋敷に帰るまでのことは覚えていない。

傍から見れば、危なっかしいことこの上なかっただろう。

ぼんやりとしたまま俺は屋敷に辿り着き、自分の部屋のベッドに転がっている。

別に、生きて帰れたことを噛み締めていたわけでもない。

きっと、現実を見せ付けられたことにショックを受けていたのだ。

ここではもっと死は身近で、生きることが想像以上に難しいこと。

元の世界では、生きることが簡単過ぎたのだ。

もちろんどこでも同じなわけではないが、俺のいた所ではそうだった。

楽に生きたいなら、戦わなければいい。

そんな誘惑が聞こえてくる。

例え俺が戦うことをやめたとしても、慎悟や真矢は止めはしないだろう。

それならそれで、次の手を考えてくれるはずだ。

だが、それでいいのか?

この世界にいる限り、いつまでも逃げ続けることなんて出来ないんじゃないのか?

全てに決着がつくまで、戦うことが運命付けられる。

なぜ、俺が?

なぜ、俺達が?

疑問が尽きることはない。

結局のところ、疑問を抱えながら戦っていくことしか出来ない。

それはきっとどこにいても同じことだろう。

元の世界でも、この世界でも。

生きていることの意味を求め続けながら戦い続ける。

考えないといけない。

考え続けていかなければならない。

そうじゃないと、きっと生きることが霞んでいく。

「結論なんて、出ないだろうな・・・。」

どこかで折り合いをつけるか、無謀にも答えを探し続けるか。

その答えさえも、まだ見つかりそうにない。

「むおっ!?」

ドサッと音がした。

何の音かと聞かれれば、俺がベッドから落ちた音。

カーペットがふさふさだったからたいしてダメージは無い。

「・・・何をやっているんですか?」

問題は真矢が呆れた顔で見下ろしていたことだ。

「なんでもねぇよ・・・。」

照れ隠しにそのまま這って移動。

真矢のスカートの中を覗いてやるぜ!

「案外元気ですね。」

ムギュ。

踏まれて進行阻止された。

「・・・まぁ、なんとか折り合いをつけたというか、解答を先延ばしにしたというか・・・。」

真矢の足から解放してもらい、とりあえずベッドに腰掛ける。

「お話、聞いてあげましょうか?」

ちょこんと隣に座る真矢。

俺に選択権のあるような言い方だが、聞き出すつもりまんまんである。

どうせ聞き出されてしまうなら、素直に話してやるさ。

思ったことを、考えたことをつらつらと語る。

おとなしく的確な相槌でもって聞いてくれた真矢さん。

こうやって話すだけでも、気分転換になったかも。

「騎理はもっと諦観、いえ、達観しているかと思っていたんですけど。」

「イメージダウン?」

「そんなことないですよ。いいんじゃないですか?青春してて。」

そんな真矢の物言いこそ達観しているかのように聞こえる。

「俺のほうが子供ってこと?」

「んん〜、発展途上?」

成熟してるとは自分でも思っていないが、面と向かって言われると微妙な気分。

「騎理ならちゃんと自分なりの答えが見つけられますよ。」

にっこりと可愛らしいグッとくる表情で言われてしまった。

ありきたりな台詞でも、それがあるだけでやる気が出てくる辺り俺も単純だ。

完全完璧に体を弛緩させてベッドに寝そべりながら思考停止。

「もう寝ますか?だったら退散しますけど。」

「ん〜、ちょっと神経尖ってて寝れそうにないかな。」

「じゃあ、もうしばらく話し相手になってあげましょう。」

「いんや、それよりお願いがあるんだけどぉー。」

柄にもなく甘えた声を出してみたり。

基本的には見栄っぱりでカッコつけたいお年頃。

でも、今日はそんな気分なのさ。

「ふむふむ。とりあえずは聞いてみましょうか。」

聞くとは言ったが、叶えるとは言っていないのがミソ。

まぁ、こっちも言うだけ言ってみるのが吉なわけだ。

「膝枕してくんない?」

柔らかいけど、適度な固さを合わせもつ極上のもも肉を人差し指でつついてみたり〜。

「いいですよ。」

「おぉ!あっさり!」

今日はなんか優しい真矢さん。

「いつも優しいですって。」

心が読まれた!?

しかし、読まれたところでやましいことなんてないし!

今はね!

「カモン。」

ポンッポンッと膝を叩いて丁重に招かれる。

どうやら歓迎されてるらしいので、遠慮なく招かれてやろうじゃないかー!

膝の上に頭を置く。

ちなみに今日の真矢はスカートなので、体温がじんわりと伝わってくる。

人肌っていいね。

「……うーむ。なぜこういう枕が流行らないんだろう?」

遠慮なく太ももを触りつつ、そんなことを呟く。

「高さが合わせづらいですし、気分というか感情による膝枕良し!っていう部分が大きいからじゃないですか?」

俺のセクハラを気にも止めずに、大真面目に返された。

「好きな女の子にやってもらうのが一番ということか……。」

「あっ、私もやってもらいたいな、って思いますよ。」

「……今日は俺の番だ。」

ぶっちゃけ未来永劫される側がいいのは、我が侭なんだろうなー。

「じゃあ、今日は勝利のご褒美ってことにしときましょうか。」

「ん?だったら、勝つたびにやってくれんのか?」

期待を込めて言ってみた。

「ん〜、私の気分次第ですね。」

そんな気はしてたけどな〜。

とりあえずは、今を堪能するとしよう。

「こ、こら、顔を埋めるな!」

うつ伏せー。

「うっせ、匂いかいでんだから邪魔するなっての。」

引き剥がされたりしないように、がっしと太ももを固定。

「騎理は変態だね。変態だ。」

わしゃわしゃと髪の毛をいじりたおされる。

「……真矢の匂いって安心すんの。」

「むぅ……。」

必殺の意を込めたセリフ。

いい感じに反論を封じ込めてやったぜ。

……あー、だんだん眠くなってきたかも。

膝枕って偉大。

てか、最強!

眠い時に寝るのは一番体に良いよな。

だから俺は寝る!

ぐっすり寝てやるぜ。

……おやすみぃ〜。

「……騎理?」

ペチペチとおでこを叩いても安らかな寝息しか返ってこない。

「寝付き良すぎ。」

苦笑いを浮かべた真矢の呟きは、全くもって届いてはいないのだった。

うつ伏せで呼吸が苦しくなったのか、体を動かす騎理。

真矢の胴体の方を向いて、幸せそうな寝顔。

そんな表情を見たからには、起こすに起こせなくなってしまった真矢。

騎理の髪の毛をクルクルと指に巻きつけたりして遊びながら、暇つぶし。

「ん〜、もう少しだけ貸しといてあげましょうか。」

たまにはこんな日もいいかもしれない。

甘やかすよりは甘えたいほうなのに。

でもなんとなく、これが自分の役割なのかもしれないなぁ〜、と思う真矢であった……。





あとがきっぽいもの
作者「久しぶりの更新!」
リーア「別に病気とかだったりしたわけではないのであしからず♪」
作者「しばらくは二日に一回ぐらい、アップ出来ればよいかなと思います。」
リーア「この空白の期間に書き溜めていたものを放出です!」
作者「うぃっす!!!」
                おわり



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