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それはある日の出来事だった。

男の子は森へ冒険に出かけた。

大人には内緒の大冒険。

リュックサックに食べ物と冒険に必要な道具と夢と希望を詰めて。

いつも煩わしい大人はいない。

楽しい楽しい物語の始まり。

男の子は期待に胸を躍らせながら、緑生い茂る森へと入っていった。

木や草や土の匂いが立ちこめる森。

単なる木漏れ日にも心をときめかせながらずんずんと奥に入っていく男の子。

見たことのない花に感嘆の声を上げ、見たことのない虫を発見してははしゃいでいた。

見るもの全てが新鮮で、男の子の世界はどんどん広がっていく。

そのまま調子良く進んでいると、唐突に拓けた場所に出た。

そこには一軒の朽ちかけた家が。

仄暗く、薄気味悪い場所。

しかし、男の子は勇気を振り絞ってそこへ足を踏み入れることを決意した。

これこそ冒険だと、期待と不安を抱えながら前進。

ギシギシと軋む床に緊張しながら奥へ。

すると、人の気配がした。

黒衣を纏いフードで顔のほとんどが隠れていたが、わずかに出ている部分で老婆だと分かった。

男の子はその姿を見て素直に思ったことを口にした。

「お婆さんは、悪い魔法使い?」

以前に読んだ絵本に登場した、悪い魔法使いに風貌がそっくりだったのだ。

老婆は男の子の言葉にクックックッ、と喉の奥のほうだけで笑った。

そして、男の子の顔に自分の顔を近づけて口を開いた。

「そうだよ、ボウヤ。あたしは悪い魔法使いさ。」

老婆の覗き込んできた瞳が、黒く澱んでいて気持ちが悪かった。

恐怖を感じた男の子は思わず後ずさろうとしたが、それより早く老婆に両肩を掴まれてしまった。

顔に老婆の息がかかる。

「今更どこへ逃げようってのさ?もう踏み入れちまったんだよ、ボウヤは。」

老婆の目が細められ、鋭くなった目が男の子の瞳を捉えた。

男の子は口をパクパクとさせるだけで、何もしゃべることが出来ない。

泣きそうになりながらも、必死でこらえながらどうにか抵抗しようとした。

しかし、男の子は非力で何も出来ない。

「さて、どうしようかね?実験材料にしてしまおうか?」

老婆は狂気じみた笑いを浮かべながら、舐めるように男の子を見た。

思わず両手に力が入り、爪が男の子の肩に食い込む。

「ッ!?」

その時、男の子の中で何かがはじけた。

痛みから自分を守るべく、自己防衛のための力が現れる。

それは純粋無垢な勇気の光。

男の子の内から光の奔流が溢れでた。

「なっ!?」

咄嗟に防御結界を張るが、威力を打ち消すことが出来ずに老婆は吹き飛ばされた。

壁に叩き付けられ、一瞬意識が飛びそうになる。

うつ伏せに倒れながら、今起こったことを瞬時に理解していた。

「勇者か・・・。」

いつか見たことのある力。

再び見ることになるとは思わなかった輝き。

しかし、不可解なことがあった。

「あんな幼い召喚されし者がいるはずが・・・。」

何事にも例外があることは分かっている。

だが、『勇者』というような雰囲気は無い。

そもそも、今の世界に『勇者』は必要無いのだ。

じゃあ、アレはなんだ?

あの幼さで、あんなにも輝く存在感は?

「わ、悪い魔法使いなんて!僕が倒してやる!」

手近にあった箒を手に取って正眼に構える男の子。

燃えるような瞳は幼いながらに芯の通った、見る者を熱くさせるような瞳をしていた。

そして、老婆にはその瞳に見覚えがあった。

忌まわしき光を纏うもの。

「そうか、そういうことか・・・。」

老婆の内に深く眠っていた憎悪が膨れ上がる。

皺だらけの顔に、激しい憤怒でさらに深く皺が刻まれる。

こんな場所へと追いやられた恨み。

それをぶつける対象が、まんま目の前に現れた。

「生まれついての勇者。英雄の再来というわけか!!!」

右手で左手首を掻き毟る。

皮膚が剥がれ、血が滲み出る。

それでも、まだ止めない。

「ハハッ!ギャハハッ!ギャハハハハッ!!!」

その光景をただ唖然として男の子は見ていた。 噴き出る赤。

削れた手首から溢れ出た血が辺りに撒き散らされる。

男の子は頬に付いた血の生暖かさに、吐き気を覚えた。

「ボウヤ!我が命を注ぎ、呪いを授けよう!」

その言葉にハッと驚き、辺りを見渡すと男の子を中心にした魔法陣が完成していた。

そして、男の子には理解不能な言葉が老婆の口から発せられる。

暗くて、ドス黒い気配が充満してゆく。

逃げなくてはならない、しかし、もう遅かった。

逃げ場など無いし、闇が男の子の体を捕らえているから。

「あぁ?ああああああぁぁぁっ!!?」

まとわりつく闇が、侵食を開始する。

振り払うことも出来ず、じわじわと入り込んでくる様を見ていることしか出来ない。

老婆の人生を賭けて完成された呪いは、男の子を汚染してゆく。

「ケハッ!ゲヘッ!ヒャハハハハッ!!!」

薄気味悪い声を上げながら、男の子が闇に呑まれてゆく様を眺める老婆。

命の灯火が消え行く状態でありながらも、嬉々とした表情を浮かべていた。

男の子の存在感から輝きが失せてゆく。

代わりに現れるのは闇色の澱み。

太陽の輝きにも似た金の髪色が、墨を落としたような真っ黒な色へと変わる。

男の子は呪いの負荷に耐え切れず、気を失ってしまった。

崩れ落ちた男の子を見届けると、老婆の体が黒い粒子に分解され始める。

「世界に絶望を振り撒き給えっ!!!」

最期に呪われた言葉を吐き捨てて、老婆は消滅した。

同時に、朽ちかけた家も消え去る。

男の子は、草木の生えない森の広場に横たわっていた。

その後、目覚めた男の子はその足で家路へと着く。

そして、呪われた子として幽閉されることに。

男の子はいなかったことになったのだ。

暗い、とても暗い場所で今も世界を呪っている。

あの老婆の思惑通りに、その身に絶望を蓄積している。

いつか、それを世界に振り撒くために。



あとがきっぽいもの
作者「ペース上げます。マジで!!!」
リーア「言いましたね?有言実行ですよ?」
作者「うぃっす!!!」
                 おわり



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