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「約束通り来たぞ♪」
スキップでもしそうなほど陽気な雰囲気で現れたのは、白いワンピースの女の子。
もちろん白い帽子もセットである。
さらにタキシードをビシッと決めた初老の男性もセットである。
「お?闘技場で会った子だ。よく俺のいる場所が分かったなー。」
ポイポイッと双剣を放り捨てながら女の子を出迎える騎理。
剣は大気にサラサラと溶けて消えた。
「私にとって人探しなど造作もないことのだぁー♪というか、すぐに見つかったぞ?
闘技場の活躍で有名になったんじゃないのか?」
「実感ねぇなぁー。」
帽子を取って小走りに騎理の元へとやってくる女の子。
騎理はぐりぐりと女の子の頭を撫でた。
女の子の髪が乱れるのを気することもなくスキンシップ。
抵抗なく頭を撫でられていたのだが、ふと女の子は視線を違う方をやった。
そして、少し驚いた様子で口を開いた。
「あれ?厳重朗じゃないのか?」
「ん?あっ、お姫様じゃねぇか?」
お互いが驚きに満ちた表情をしながら指を差しあう。
「……お姫様?」
騎理はお姫様と呼ばれた女の子の髪をいじりながら、特大のクエスチョンマークを浮かべている。
「お久しぶりでございます、厳重朗様。」
「うっす。ご無沙汰ですなギニアスさん。」
ギニアスと呼ばれたタキシードの男は鮮やかな礼をして応えた。
「……どういうことなんだ?」
状況を理解出来ない騎理は近くに佇むエイラに助けを求めた。
「あの子はお姫様なんですよ。この国の。」
ため息混じりの解答。
「名前は、リナンシアス・オーダ・ミヒュアンダルデ。始まりの民の末裔と勇者の子です。」
始まりの民の末裔。
騎理達のいる国、ルファはこの世界で最初に創られた国。
ルファを建国した民の末裔が、この国を治めている。
ミヒュアンダルデは、初期のこの世界において英雄と呼ばれた人物のことである。
一説では『勇者』だと言われているが、資料が少なく定かにはなっていない。
「勇者の子、って?」
「10年前、魔王との戦いに参加した英雄が今の王妃と結婚したんです。
現状はその勇者がこの国を治めていることになりますね。いわば、勇者王。」
「……なんかどっかで聞いたことのあるフレーズだな。」
「気にしてはいけません。」
「……まぁ、それはいいけどさー。で、厳重朗さんと知り合いなのは?」
「勇者同士のつながりがあるのでしょうが、盗賊ギルドと王宮のつながりがあるということですね。
詳しくは知りませんけど。」
一般人が首を突っ込むようなことではないですから、と付け加えるエイラ。
「んー、なんていうか、案外、世界は狭いというか、ご都合的過ぎるというか……。」
闘技場に出場した目的は、世間の注目を集めつつ王宮につながりを持つということ。
世間の注目を集めるというほうは、納得いくほどの成果が出ているわけではない。
しかし、一人の女の子の登場によって王宮への足掛かりが出来た。
「とは言っても、リナンシアスの目的次第だよなぁ。」
「ですね。何の目的があって近付いてきたのでしょう?」
厳重朗と話し込むリナンシアスを鋭い視線で見るエイラ。
「なんとなくだけど、物騒なことじゃないと思うぜ?見た目、そんな感じじゃないし。」
「……見た目判断とは愚かしい。」
「大丈夫、大丈夫。可愛い子に悪い奴はいないのさ。」
「……幼女趣味?」
「いや、幼女ってほど幼女ではないと思うんだが……。」
「節操無し?」
「……それは否定しない。」
「……そこは否定しときましょう。」
「なぁ、キリ。話があるんだがよいか?」
話が逸れつつあるところに、厳重朗との話を終えたリナンシアスが現れる。
「おー、聞いてやるぞー。」
気軽に請け負う騎理。
少し言いにくそうにもじもじするリナンシアス。
騎理はリナンシアスが落ち着くまで待った。
「わ、私の・・・。」
決心がついて言いかけた瞬間、突如、周辺から殺気が立ち昇った。
『!?』
厳重朗、エイラ、ギニアスが殺気が放たれた方向へと振り向く。
屋敷の庭、立派な木が植えられた場所ゆえに身を隠すところは多数あった。
しかし、迷いなく三人が動き始める。
騎理や真矢や仁は少し遅れて、状況を把握。
かろうじてリナンシアスを守るようにして動いた。
「ここまで近づかれるとは・・・アサシンか?」
呟きながら脚に光を纏う厳重朗。
ゆらりと体を揺らすと、凄まじい速さで木に突っ込んで行った。
空中で体を回転させると、木に向かって回し蹴りを放った。
葉や枝が吹き飛ばされる。
そこに現れたのは黒衣に身を包んだアサシンの姿が。
「チッ!?」
ダガーを投擲しながら離脱を計る。
が、瞬時に具現した『盗賊の七つ道具』の一つのナイフではじき返す。
光を発しながら空中を蹴り、追随。
右手に新たな勇者の武具が具現する。
黒と赤の入り混じった、皮のような素材の手袋。
「・・・盗賊王の力、見せてやる。」
不敵な笑みを浮かべてアサシンとの距離を詰める厳重朗。
右手をアサシンの額へとかざして、その力を発揮させた。
交錯。
屋敷を囲う塀に、危なげなく着地する厳重朗。
アサシンは木の枝に体を打ちつけながら落下してゆき、地面に不時着した。
起き上がることなく、ピクリとも動かなかった。
一方、エイラのほうはというと・・・
「・・・誰が狙いなんでしょう?」
狙われそうな人物が集まりすぎていた。
ひとまず捕まえてしまおうと判断し、殺気のする方向へ。
花壇を飛び越え、植え込みへと駆ける。
「死ね!」
数本のダガーが植え込みからエイラに向かって飛んできた。
刀身は光を反射することがなかった。
「・・・毒か。」
疾風のように蹴りを放ち、瞬時にそれらを叩き落とす。
そして地を這うような低い姿勢からアサシンへと迫る。
アサシンの蹴りを見切り、そのままの勢いで突っ込む。
片足を取り、アサシンの体を地面に叩きつけた。
「ぐぅっ!?」
呻き声を上げながらも、抵抗するアサシン。
「抵抗するなら容赦しませんよ?」
アサシンの両腕の関節をはずしながらエイラは言った。
それでもジタバタとあがくアサシンを冷静に見下ろしながら、右顎に掌底を打ち込む。
まだ瞳からは抵抗の意志が消えない。
「フッ!」
今度は左顎に掌底を打ち込む。
そこで抵抗の意志が消え失せた、と思った瞬間、アサシンの瞳から光が消えた。
ぐったりと体から力が抜ける。
「・・・自害した。」
アサシンの死を確認すると、エイラは立ちあがった。
少しのやり切れない思いを残して。
そして、ギニアスは・・・
「・・・姫様を狙う輩か?ならば容赦はしませぬぞ!」
タキシードの上からでも分かる筋肉が躍動する。
屋敷の執事の1人をギロリと睨み付ける。
アサシンは執事の1人に変装していたのだ。
アサシンはニヤリと笑って、ダガーを投げつけた。
「ふん!」
目にも止まらぬ速さで繰り出した拳でダガーを砕き割る。
「触れたな!それは触れるだけで死に追いやる毒なんだぜ?」
嘲笑いながら蝶ネクタイをはずして身軽になる。
しかし、ギニアスはアサシンの言葉を鼻で笑った。
「馬鹿め!私に毒など効かぬ!」
気迫の込められた叫びとともに、タキシードが筋肉に押されてはじけた。
上半身をさらけ出し、地面を踏み抜く勢いで地を蹴る。
一息にアサシンとの距離を詰めるギニアス。
「なっ!?」
反応出来ないアサシンはほとんど棒立ちだった。
風を斬り裂いて拳が突き出される。
吸い込まれるようにしてアサシンの腹へとめり込んだ。
「ぬうりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
振りぬく拳。
何の抵抗も出来ずに塀まで吹き飛ばされた。
レンガに体を思いっきり打ちつけ、血を吐き倒れる。
痙攣を起こす体を抑えようとしながら立ち上がろうとする。
しかし、立ち上がれずに完全に沈んだ。
「ふん、修行が足りぬな・・・。」
物足りないと言わんばかりのギニアスであった・・・。
あとがきっぽいもの。
作者「キャラ人気投票の絵はもうちょいかかります・・・。」
リーア「気長にお待ちくださいませ♪」
作者「忘れてはいないからね!」
おわり
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
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