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「・・・で、そいつらってなんなんだよ?」

あっという間の出来事だった。

騎理達は何も出来ずに成り行きを見守るだけ。

結局、アサシンの数は三人。

厳重朗は意識を失った相手をかついで現れ、エイラの相手は自害。

ギニアスは相手をヒョイッとつまみあげて帰ってきた。

「こいつらの服装を見る限り、ルファの南東にある部族の人間だな。」

「でしょうね。毒の使い方が酷似しています。」

二人のアサシンの武装を解除させながら、厳重朗とエイラが分析を始める。

「狙いは姫様でしょうか?」

ギニアスは屋敷のメイドに差し出された、新たなタキシードを纏いながら疑問を口にする。

武装解除を終えて、縄でグルグル巻きにしたところで一段落。

「その辺はこれから聞いてみるとするか。」

「そう簡単には話しませんでしょう?」

「そこは盗賊王としての力の見せ所だぜ。」

右手の黒と赤の手袋を見せる厳重朗。

「そういえば、さっきは何をやったんだ?攻撃したようには見えなかったぜ?」

説明を要求する騎理。

他のメンバーも気になる様子だった。

「俺は盗賊王。だから盗んだんだよ。意識をな。」

サラリとそんなことを言ってのける厳重朗。

意識を失ったアサシンの額に右手をかざす。

「・・・あ?・・・」

ビクリと体を動かした後、意識を取り戻すアサシン。

そして周りを見渡して状況を理解した。

「おっとぉ!自害はさせないぜぇ?」

舌を噛もうとしたアサシンの口をガッ、と押さえる厳重朗。

アサシンはフルパワーで掴まれているため、顎がはずれそうになっている。

少し気の毒な様子だが、厳重朗はそのまま説明を続ける。

「今度は情報を盗んでやるよ。」

左手で口を押さえたまま、右手をアサシンの額にかざす。

一見、何も起こったようには見えないが厳重朗がため息をついたことから事が終わったと分かる。

「何か分かりましたか?」

エイラが尋ねる。

それに対して厳重朗は首を横に振りながら答えた。

「ダメだ。こいつら、単に『姫を殺せ』という依頼内容しか知らない。まぁ、アサシンなんてそんなものだが。」

もう一度、アサシンから意識を盗んで眠らせる。

結局のところ、大した情報もない現状では推測することしか出来ない。

「姫様がお忍びでここにやってくることを知っているのは、王宮でもごくわずかの人間のはず・・・。」

ギニアスはそのわずかの人間が暗殺を企むとは信じられなかった。

だから、他の可能性を探る。

「お忍びとは関係無しで、ずっと狙ってたのかもしれないぞ?王宮にいる時も。

で、今日襲うのが容易いと思ったのかもしれん。とんだ勘違いだがな。」

レベル10で盗賊王(勇者)の厳重朗と、レベル10で聖騎士のギニアスと、レベル8で武闘家のエイラ。

せいぜいレベル4、5のアサシンが三人では歯が立つわけがなかった。

騎理達だけの場合なら分からなかったが。

「今日狙ったのは愚の骨頂とも言うべきでしょう。むしろ、王宮で狙ったほうがマシだったのでは?」

エイラはストレートに言った。

それは王宮に強いものがいない、と言っているようなものである。

「ふむ、これは手痛い言葉ですな。しかし、王宮には勇者王がいますからな。」

ギニアスは自分の誇りであるかのように勇者王のことを言った。

正真正銘の英雄。

魔王を倒し、世界を平和へと導いた人物。

そして、元の世界へは還らずにルファの王となった。

「しかし、全盛期の力は失われていると聞きますが、実際のところはどうなんですか?」

それは街にまことしやかに流れる噂。



『勇者王はその力を失った。』
『だから、現在の混乱を鎮めることが出来ない。』
『いや、勇者の力を子供に継承したのだ。』
『違う、復活した魔王に吸い取られているんだ。』
『それも違う、魔王を抑えるのに力を使っているんだ。』
『勇者王はもう年なんだよ・・・。』



様々な噂が流れている。

世界が混乱している時、等しくこの国、ルファにも混乱が訪れていた。

モンスターの凶暴化。

終末信仰の流行。

それらによる生活状況の悪化。

それによる不安が魔王を活性化させる。

悪循環。

それを断ち切るには、再び勇者の力が必要不可欠であった。

噂の根底にあるのは、勇者が再び立ち上がることを望む人々の叫びである。

「・・・確かに全盛期ほどの力は無いでしょう。傍で戦ってきた私にはよく分かる・・・。」

沈痛な面持ちのギニアス。

厳重朗は自分の手を見ながら、それが自分自身にも起こっていることを再確認した。

「俺達の存在は劣化している。要は俺達の時代が終わったということだ。」

騎理の瞳を正面に捉え、重々しく口を開いた。

「おまえ達は新しい時代の勇者なんだ。

この世界は俺達の故郷ってわけじゃないし、まだ愛着が湧いてきたってこともないだろう。

だが、おまえ達には力がある。望んで手に入れたものじゃなくても力があるんだよ。

だから、その力を使って出来ることをして欲しい。世界を救え!なんて大それたことは言わない。

それは出来る奴がやればいいんだ。自分が出来ることをやってくれ。」

厳重朗の言葉をしっかりと受け止める騎理。

まだ、自分が出来ることなんてわからない。

何が出来るのかはわからないけど、後悔はしたくなかった。

「あぁ、俺は俺の出来ることを全力でやる。・・・ガラじゃないけどな。」

確かな想いがこもった言葉と共に、微かに溢れ出た光。

厳重朗は幻視た、かつてみたことのある友の背中を。

渦巻く光の粒子を纏った勇者の姿。

思わず熱いものがこみ上げてきそうになったが、グッとこらえる。

「だったら、俺はおまえを全力で鍛えてやるよ!」

豪快に笑う厳重朗。

この声があいつに届けばいいな、と思った。

「僭越ながら私も協力いたしましょう。というよりも姫様のお話を聞いてくださいませぬか?」

「おう!?」

ぬぅっ、と割り込んできたギニアスの顔に身を引いて驚く騎理。

突然濃い顔が目の前に現れたら誰だって後ずさる。

「ささっ、姫様、先程の続きを。」

「う、うむ。というか、急に積極的になったな。さっきまでは文句を言っておったのに・・・。」

「私も厳重朗様と同じものを視たということですよ。」

「・・・むぅ、わからん。」

それでも、ギニアスの機嫌が良いに越したことはない。

そういう用件なのだ。

「そういえば、さっきは何か言いかけてたな。なんなんだ?」

「ちょっと待て、少し心の準備をするから。」

深呼吸を始めるリナンシアスを微笑ましく見守る騎理。

ちょっと離れたところから、真矢とエイラが並んでいた。

「告白でもするんでしょうか?」

「近いですが、微妙に違いますね。」

「何を言うか知ってるんですか?」

「時期と人物で予想出来ます。まぁ、納得ですね。」

「気になるんですけど。」

「見てのお楽しみです。」

エイラの言う通り、真矢は待つことにした。

なんとなく、本当になんとなく、面白くない気分だった。

「・・・。」

いまいち納得出来ない感情が湧きあがってくる予感がして、真矢は考えるのやめにした。

すーはー、と息を吸って吐いて、ドキドキを抑えようとするリナンシアス。

意識すればするほどドキドキが高鳴ってゆく。

「ええい、埒があかぬ!キリ!」

キッと半ば睨み付けるような表情で騎理を見る。

「ドンとこい。」

対象的にゆったりとリラックスした様子で待ち構える騎理。

はっきりと意志を固めたリナンシアスはその想いを言葉にする。

「私の守護騎士になってくれ!」

「いいよ。」

即答である。

今までの溜めはなんだったんだと言わんばかりの即決。

あまりのストレートさにリナンシアスの時が止まってしまった。

「・・・ねぇ、絶対よくわからずにOKしたでしょ?」

「俺は今日から何事にも積極的に取り組むことにしたんだ。」

真矢のツッコミに真顔でそう返した騎理。

エイラやギニアスが明らかに落胆したため息がこぼれる。

「ほ、本当にいいのか?」

我に返ったリナンシアスが再確認する。

「うーん、一応何をするか説明してくれたまえ。」

説明の要求はするものの、騎理の中ではやる気満々なのである。

後悔しないためにやれることを、出来ることをやる。

全てのことがこの身の糧になるはずだと。

それはきっと強さに繋がると。

(全部やってやるさ。そして全部終わらせる。)

それが最良の選択だと信じて・・・。



あとがきっぽいもの。
作者「なかなか話が進まない気がするなぁ(笑)」
リーア「まぁ、内容を濃くしてるということでよいのでは?」
作者「そうなってると思いたい。」
リーア「ポジティブにいきましょ♪」
作者「ういうい。ひとまずはこのペースをキープっすよ。」
リーア「がんばりましょう!」
                  おわり



お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)


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