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俺と真矢はルファの大通りを歩いている。

人が多過ぎて、並んで歩くのには苦労する。

「手でもつなぐ?」

俺は冗談めかして隣りを歩く真矢に言った。

真矢が俺の方を振り向く時に艶やかな黒い髪がサラサラと動いた。

「遠慮しますわ。」

ニコリと笑って断られた。

まぁ、いいけど。

「はぐれなければどうでもいいさ。それより買うものとかある?行きたい場所とか。」

言われたところで案内出来るわけではないがな。

「そうですわね……特にありません。白の部屋で大体のものは揃いましたし。」

「ふーん。じゃあ、適当に見てまわるか。」

「はい、そうしましょう。」

真矢はポンッと手を合わせてニッコリ笑う。

そして、自然な動作で俺の腕を取って組む。

「腕……組むの?」

「いけませんか?」

「いいや。」

手をつなぐのはダメで腕を組むのはいいのかよ?と口に出そうとしたが、やめた。

真矢は少し変わってるところがあって、考えてることがわからないほうが多い。

なによりも、腕組むのって色々楽しいからな。

端から見ると、カップルに見えるんだろうなぁ、と思いながらあちこちを歩きまわる。

小物やら、服を売る店をはしごして、その後は適当なカフェに入る。

香茶を頼んで一息入れる。

俺と真矢の関係は友達以上恋人未満。

お互いに恋愛にいくほどの好意は抱いていない、と俺は思っている。

今日みたいなデートのようなことをたまにやっているが、恋人同士の甘い感じにはならない。

友達以上には距離が近い。

俺としては心地よい距離感だ。

真矢の性格がそうさせるのか、俺と真矢だからそうなのかはわからないが。

俺に寄ってくる女の大体が下心ありだったから、余計にこの関係を崩したくないと思っている。

「ケーキも頼んでよろしいでしょうか?」

「いんじゃね?」

俺はいらないが。

甘いのはあまり好きじゃない。

香茶もストレートだし。

真矢は甘党みたいだがな。

「女の子は皆そうですよ。」

「……太るぞ。」

「細い方がお好みですか?」

「うーん、どっちかというと、少しふくよかなほうがいい。胸とかあるほうが好きだし」

そんなたわいない話をして、時間を潰す。

てか、真矢の食べるスピードが異様に遅いから時間を潰そうとしなくても潰れる。

「宿に帰るか。真悟も誘って晩飯に行こう」

席を立ち、会計を済ませ店を出る。

「どこか目当てのお店でも?」

「こういうのはお決まりがあるんだよ。情報収集も兼ねて酒場だ」

RPGの基本だ。

「お酒はダメです。」

「……堅いこと言うなよ。」

「ダメです。」

「……。」

「ダメですからね。」

あえて返事をしない。

よし、真矢には酒を飲ませてみよう。

美味さに気付かせればいい。

意外と強そうな気がするしな。

自然と笑みが出た。

ふと、軽く視線を上にすると、暮れかかった空に一筋の光が走った。

その力強い光は一瞬で消えてしまったが、印象に残る光だった。

「あれはなんでしょうね?」

真矢も今の光を見たらしい。

「さぁ?ファンタジーだからなぁ。」

気象やら、魔法やら、ドラゴンが火を吹いたとか、考えればきりがないだろう。

俺達は深く考えずに宿へと帰った。

俺達は今、酒場にいる。

料理の匂いと、酒の匂い、にぎやかな笑い声と喧騒が入り混じり、ひたすら活気のある雰囲気。

嫌いでは無いが俺は静かなほうが好みではある。

「カウンター席でいいか?」

真悟が確認する。

俺と真矢は頷き、3人分の席を確保した真悟に促され座った。

それと同時にウェイトレスが注文を取りにやってきた。

なかなか可愛い子だった。

「まずお飲み物からお願いしまーす。」

メニューを見る。

真矢の言葉を思い出したが、まぁ、忘れよう。

「エール三つで。」

「はーい。」

真矢が軽くむくれるが気にしない。

あとは適当につまみを頼むとウェイトレスは注文を確認して行った。

「お酒は大人になってからですわ。」

むくれ顔が可愛いくて頬を人指し指でツンツンッとつつきながら、

「酒場で酒を呑まないのは不自然だろ?それに、この世界は俺達の年齢でもオッケーなんだよ。」

酒場には俺達よりも年下に見えるものが豪快に飲んでいた。

頬をつつくほうとは違う指でそちらを指すと真矢は頷いた。

「じゃあ問題ありませんね。」

あっさりと頷く真矢。

いいのかよ、とつっこみそうになったが黙っておく。

そこにちょうどエールがやってくる。

「乾杯。」

何に乾杯だかわからないから、その一言だけで杯を合わせる。

俺は喉の渇きを潤すため、一気に半分ほど飲んだ。

真悟は味わうように少しだけ飲む。

真矢はというと…

「ん…ん…ぷはぁ…」

飲み干しやがった…。

「…大丈夫か?」

「えぇ。初めて飲みましたけど、おいしいですわね。」

「…そうか。」

不安を感じながらも、真矢が酒に強いことを信じることにする。

真矢がエールのおかわりをしている時、真悟が砂肝の串を取りながら酒場の店主に声をかける。

「我々、この町に初めてきたのですが、何かいい仕事でもありませんかね?」

酒場、いや酒場兼冒険者の店、ようはなんでも屋の店主は真悟を品定めするように見つめてから口を開く。

「あんたら3人か?レベルは?」

「私と騎理は3。真矢は2です。」

俺は2杯目の注文をしていて、真矢は3杯目を飲んでいた。

「軟骨うまいぞ。」

「ちょっと塩辛すぎますね。」

真悟をほったらかしにして、俺達は飲み食いする。

「ふむ。いくつかあるぞ。モンスター退治、警護、輸送護衛。あそこの壁に依頼内容の書いた紙が貼ってあるから、やりたいものを持ってきてくれれば手続きする。システムはどこも一緒だ。」

「わかりました。ところで、魔王の居場所はわかりますか?」

直球すぎやしないかと思ったが、他に聞きようがないのも事実。

俺は成り行きにまかせて鶏皮を食べる。

「…魔王?」

店主が怪訝な表情を浮かべる。

そんなこと知ってどうするんだ?、っていう顔だ。

「いえ、あてもなく旅をしていますから、魔王と遭遇するのを避けるために場所を知っておきたいんですよ。」

おっ、ベストとは言えないがベターにごまかしたか。

「…ふぅん、まぁ、いい。夕方ぐらいだったか、空に光が走ったのを見たか?」

「いえ。」

真悟は首を振る。

「俺は見たぜ。」

「綺麗でしたねぇ。」

俺達はあの光景を思い出す。

「その光があった場所が魔王城だ。近付かないほうが身のためだ」

真悟は頷く。

てか、あの光はなんなんだ?

まぁ、店主が知ってるとは思えない。

そのうちわかるかもしれないが…。

「おかわり〜。」

真矢が、もう何杯目かはわからんがまたエールを頼む。

どうやら真矢はお酒が気に入ったらしい…。



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