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「……んあ?……。」

唐突に意識が浮かび上がってきた。

完璧な目覚め方と言える。

だが、一つだけその完璧な覚醒に水を差すものがあった。

「……体のあちこちが痛い……。」

筋肉痛だな、これは。

存在力を扱った反動とはいえ、地味に不快。

それにしても、添い寝無しで眠れるとは。

「相当、疲れてたんだな……。」

その時に気付けないのは危険だと思うが、これから改善していくしかない。

「てか、腹減った。」

体が栄養を求めているのだ。

そういえば、あれからどれぐらい経ったんだろう?

何か空気がざわついているような気がする。

こうなったら、枕元に置いてあった呼び鈴を振りまくるぜ。

誰か来てー。

「もしもーし。」

騎理が目を覚ます少し前、真矢は通話の水晶に話しかけていた。

『私だ。』

「慎悟?今、時間ありますか?」

通話の相手は慎悟だった。

そもそも、通話の水晶を真矢に渡したのは慎悟である。

何かあった時の連絡手段のために。

『大丈夫だ。そっちで何かあったのか?』

「目の前のことは解決したのですが、気になることがありまして。色々と意見を聞こうと思ったんです。」

『ふむ。聞こう。』

真矢は騎理とトライハートの戦い、勇者王への攻撃、ハサン村からの襲撃について、

自分が見たこと聞いたことを詳細に伝えた。

『塔の爆破、勇者王への自爆攻撃、いや、これに関しては本人の意図ではないかもしれないが、 同一犯の可能性が高いな。しかも勇者だろう。』

「勇者王もそう言ってましたね。」

『なぜなら犯人がやっていることは、いわゆるテロ行為だ。

これを考えつくことが出来るのは私達の世界と同じ人間である可能性が高い。

ゆえに勇者。それも人間を殺すことに躊躇いのない非道な勇者だ。』

慎悟の声は静かであった。

しかし、ひしひしと怒りの気配が伝わってくるのが真矢にはわかった。

『時限式の爆弾か、遠隔操作の爆弾か、

そのあたりの能力があることを想定しておかなければならないだろう。……これは厄介だ。』

「ですね。もしも、複数用意出来るのであれば……。」

『王城も、城下も、安全な場所が無い。そして、それが民衆に知られれば大きな混乱が起こる。』

「早急に対策が必要、というわけですか。」

『さらに、ハサン村の蜂起。これはタイミングが良すぎる。

おそらく、王城の混乱と同時に起こったと見るべきだ。どこかの誰かがタイミングを見計らったと考えていいはず。』

「……一体誰でしょう?何の目的で……。」

『まだ明確な答えは出せないが可能性として考えられるのは、

魔王の仕業、勇者王もしくはそれに連なる者へ恨みを抱く勇者の仕業といったところか。

魔王の仕業の場合、魔王が人間を操ったということになる。しかし、私は後者だと思うが。』

「……勇者の仕業ですか?」

『あぁ。魔王は聞くところによると、良く言えば正々堂々。悪く言えば傲慢。

人間を見下している傾向にあるようだ。そんな魔王が今回のような手の込んだことをするとは思えない。

……やっていることがどうにも人間臭いんだ。』

「なんにしても、まだまだ情報が足りませんね。」

『そうだな。また新しい情報があったら連絡してくれ。こちらも何か判れば連絡する。』

「わかりました。」

『……それにしても、真矢から頼りにされるのも珍しいな。』

「そうですか?」

『真矢は騎理ばかり頼るからな。羨ましいことに。』

「いえいえ、むしろ騎理のほうから頼ってくるぐらいですよ?」

『それは甘えているんだな。羨ましい。』

「……甘えたいんですか?」

『うむ。甘えたいし、甘えられたい。』

「……普段の慎悟からは想像出来ないセリフですね。」

『電話越しだと素直になれるのだ。』

「電話じゃないですけどね。そういうのは面と向かって言ってくださいな。」

『む、面と向かえば甘えさせてくれると?』

「さぁ?どうでしょうねぇー?」

『……うむぅ。チャレンジするべきか、せざるべきか……。』

水晶の向こうで激しく葛藤する慎悟。

そんな慎悟を可愛いなぁ、と真矢が思っていたら、呼び鈴をガチャガチャ鳴らす音が聴こえた。

「じゃあ、そろそろ切りますね。」

『ん?そうか。用が無くても電話してくれていいからな。』

「気が向いたらしますよ。ではまた。」

『また。』

通話が切って、水晶をしまう。

そして、騎理が適当に呼び鈴を鳴らしている所へ小走りに戻る。

「おっと、その前に注文しておかないといけませんね……。」

きっと騎理はお腹を空かせているだろうと思って待機しているメイドに食事を頼んだ。

それから騎理のいる部屋へと急行。

だって単純明快に心配だから。

「別に好きとかどうとかじゃないけど……。たぶん、きっと。」

そんなことを呟いてみるものの、なんだか嘘っぽい。

ひとまず、飛び出してきそうな感情を抑えつけて部屋へ足を踏み入れた……。

「どうやら目が覚めたみたいですね。」

「うん、おはよう。」

真矢が思っていたよりも元気そうだった。

無邪気に笑う騎理の姿につられて真矢も微笑む。

(はっ!?いけない、いけない。和んでる場合じゃない。)

起きたばかりで悪いとは思うが、今の現状を伝えなければならないのだ。

疲れた体に鞭を打たせることになりそうで、どうしても躊躇う。

「真矢ちゃん、ご飯が食べたいのですが?」

真矢の葛藤には気付かずお腹を鳴らす騎理。

真矢は苦笑いを浮かべてから、とりあえずご飯を食べてもらうことにした。

話はそれからでも出来るから。

「頼んでおきました。もうすぐ来ますよ。」

「おー!なんという先見の明だ!」

おもむろに両手を広げる騎理。

「……なんですか、それは。」

「ご褒美だ。俺の胸に飛び込んでくることを許す。」

「遠慮します。」

「……残念。」

そうこうしてる間に騎理の食事が運ばれてきた。

ぶ厚いステーキとか大盛りのライスとか、デラックスなんちゃらセットみたいなガッツリな内容だった。

「病人が食べる食事じゃないよな。」

「病人じゃないですからね。」

「そりゃそうだ。いただきまーす。」

飢えた騎理はガツガツと口に運び始めた。

端から見ていると、ちゃんと噛んでいるか心配になる食べっぷりである。

「真矢も喰う?」

フォークに突き差した肉を向ける騎理。

「私はさっき食べましたから。」

「そっか。がつがつがつ!」

再び一心不乱に食べ始める姿は、いっそ清々しいものがあった。

真矢はその様子をもう少し眺めていたかったが、迷いを振りきって現状を伝えることにした。

「食べながらでいいので聞いて下さい。」

「んん?」

サラダを飲み干しながら騎理が頷く。

サラダは飲むものじゃないとツッコミたい気持ちを抑えて真矢は騎理が爆睡してからのことを語った。

トライハートのこと。爆睡テロのこと。 ハサン村のこと。

最初はテンポ良く食事を楽しんでいた騎理だったが、だんだんとペースが落ちてゆき、

機嫌の良さそうな表情だったのが深刻な表情に変わってしまった。

「それで、ギニアスさんとエイラさんが騎士団を率いて鎮圧に向かいました。」

「……マジかよ。それっていつ?てか、俺はどのくらい寝てた?」

「大体六時間ぐらいですね。ギニアスさん達は二時間前に出発しましたよ。」

「これは飯食ってる場合じゃないな。」

ナイフとフォークを静かに置いた。

今にも立ち上がり駆け出してしまいそうな気配。

「ダメですよ。もう少し寝てなくちゃ。ご飯も残ってます。」

「でも、行かないと。休んでるヒマなんてない。」

「はい、あーん。」

「む?」

真矢は仕方ないので最終手段に出た。

フォークを手に取り、適当な肉に刺して騎理へと向けたのだ。

ついでに、柔らかい笑顔を添えて。

「……これは罠か?俺を足止めするための罠なのか!?」

「あーん♪」

「くっ!?」

「お口開けてくださーい♪」

「……あーん。」

騎理の完敗だった。

大人しくもぎゅもぎゅと口を動かす騎理。

「……フッ、ちょろいですね。」

そんな真矢の呟きは、都合良く騎理には聞こえていないのである。

(やはり、聞けば自分を省みることなく行ってしまうと……。

そこが魅力的でもあるけれど、危なっかしいんですよねー。)

内心ため息をつきながらも、笑顔を絶やすことなく騎理の口に食事を運ぶ。

騎理は親鳥から餌をもらう小鳥みたいに、ひたすら運ばれてくるご飯を食べていた。

「たんとお食べ〜。」

「がつがつがつがつ。む?シチュエーションの割にラブが足りない気がする。」

「今はお腹を満たすことだけを考えてください。」

「んー。」

「ついでに、そのまま話を聞いてくださいね。」

「んー?」

「ひとまず、体を休めて下さい。勇者が軒並み倒れてる現状ではありますが、今は未だ大丈夫です。」

「は?軒並み?」

「トライハートさんは騎理と同じく疲労で寝込んでいます。ちなみにリナちゃんがついてます。

で、勇者王はギニアスさん達が出撃した後、

『やっぱり私が行くのだー!』ってだだをこねたんですよ。」

「お子様か・・・。」

「それを王妃様がワン・ツー喰らわせて黙らせたんです。『大人しく寝てなさい!』って。」

「・・・何気に王妃様って強い?」

「ギニアスさんの弟子だそうです。そんなにレベルは高くないみたいですけど。」

「と言われてましても、俺の中の王妃様への脅威度が上昇したのは否めない・・・。」

「ですから、まともに稼動してる勇者は盗賊王だけです。」

「稼動って。」

「事態が動き出してから対応するのはシャクですが、そうするしかないのが現状です。

休める内に休んでおいて下さい。」

「・・・うーん。」

「ギニアスさん達を信頼して吉報を待ちましょう。信じられるでしょう?」

頷きたくは無かったが、そこまで言われては納得するしかなかった。

「・・・わかった。」

そう言葉にすると、体から力を抜いた。

表情も気だるげな表情へと変わる。

食事を終えたら、早速眠そうにする騎理。

(やっぱり痩せ我慢してたみたいですね。

あの勇者の力、存在力を操る力は相当体に負担がかかるのでしょう・・・。)

真矢は水差しからコップに水を注ぎ、おもむろに錠剤を取り出した。

「なにそれ?」

「ビタミン剤です。疲れに効くので飲んでください。」

「・・・もしかして睡眠薬とかだったりしない?」

「そんなベタなことはしませんよ。芸がない。」

「だよねー。」

騎理はそれを受け取って飲んだ。

そして、再びベッドに潜り込む。

「さて、大人しく休んでて下さいね。何かあれば起こしますから。」

「ん。あ、添い寝はしてくんないの?」

「しなくても寝れますよ。」

「えー。寝れませーん。」

「寝れますよ。さっきの睡眠薬ですし。」

「ふーん・・・はぁ!?てめぇ、謀ったな!?」

サラリと言うものだからそのまま流してしまいそうだった。

真矢はクスッと笑って立ち上がると、

「こうでもしないと大人しく休んでくれそうにありませんでしたから。

これだけ言っても、何かあれば走り出しちゃうんでしょうから。」

空になった皿の入ったおぼんを持ち上げた。

「無我夢中もいいですけど、周りのこともちゃんと考えて下さいね。」

「・・・ちゃんと考えてるよ。」

「んー、伝わってませんね。貴方のことを考える周りの人の気持ちも考えて下さいって意味です。」

「・・・。」

「これでも、けっこう心配してるんですよ?」

「・・・ごめん。」

「謝らなくてけっこうです。だから、ちゃんと休んで下さいね?」

部屋の扉の近くから騎理の反応を待った。

そして、素直に頷く騎理の姿を見ると、真矢は満足気な笑みを浮かべて部屋を出た。

真矢が出ていくのを見送った騎理は大きく息を吐いた。

「・・・寝るか。」

そう呟くと目を閉じた。

すぐに意識は途切れ、眠りに落ちる・・・。



「さて、私も気合を入れないといけませんね。」

覚悟を決める。

心に一本の芯を通す。

「守られてばかりというのは性に合いません。」

理由はそれだけじゃないけれど。

守ってもらいたいと思うのと同時に、守ってあげたいのだ。

(そういえば、慎悟が言ってましたね。

『甘えたいし、甘えられたい』って。そういうことなのかも。)

まだ自分の感情が形になってるとは思えない。

だけど、兆しがあるのはわかる。

それを確かめるためにも、ここは積極的に動きたかった。

「騎理じゃないけど、ここは一つ本気を出しますか!」

そう口にしたら、なんとなく晴れやかな気持ちになった。

背筋なんかも自然と伸ばしていたり。

しかし、そうやって真矢が決意を固めていた頃。

再び事態は動き始めていた・・・。



あとがきっぽいもの。
作者「色々と片がついた気配なので、加速するぜ。」
美綺「しかし、積みゲーに手を伸ばしたい気分なのであった!」
作者「出来るだけ我慢する(苦笑)」
美綺「きっぱりやらないと宣言出来ないあたりヘタレだね!」
作者「反論はしない!」
美綺「開き直るなー。」
                 おわり



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