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ルファから南東のハサン村方面へ進軍したルファの騎士団。

前回の魔王の戦いから今日ほどの規模の戦は無かった。

村と村の小競り合いやモンスター退治などを行なった経験はある。

しかし、大軍対大軍を体験したものはごくわずかであった。

勇者王の名の下に集まった者達ゆえに、士気は高い。

だが、士気の高さだけで戦えるかどうかはまだわからなかった。

指揮を任されたギニアスは、その辺りに若干の不安を抱えながらも毅然と指揮を取るしかなかった。

ルファを守るために。

「敵は拠点を潰しながらルファに向かっています。数は最初と変わらず約五千。

砦の戦力では大した抵抗も出来ませんので撤退させています。」

ギニアスは受けた報告をまとめてながら語った。

ハサン村方面に築かれた砦は五つ。

ルファにハサン村蜂起の報告が届いた時点で一つ目の砦が突破されていた。

そして、騎士団が動き出しルファに一番近い砦に辿り着いた頃には二つ目の砦が潰されていたのである。

普通では考えられない速さでの侵攻だった。

勇者が絡んでいる可能性が限りなく高いゆえに、下手に抵抗させず砦の兵士を撤退させているとはいえ、早すぎた。

斥候からの情報によると、反乱軍は一切の休み無しで侵攻していることがわかった。

傀儡の技により強制的に動かされていることが予測される。

疲れを知らない従順な兵士と化す村人達。

正確には疲れていても動かざるを得ない状態ということ。

「我々は現在、四つ目の砦にいます。おそらく、三つ目の砦に向かえばちょうど鉢合わせになるでしょう。

三つ目で迎えうつか、ここで迎えうつか……。」

ここで迎え討つのであれば三つ目の砦を放棄することになる。

すると、四つ目と五つ目の砦のみとなり、後がなくなる。

しかし、ここで迎えうつことを選べば戦闘まで兵を休ませ、万全の状態で戦闘に臨むことが出来る。

ギニアスとエイラ、他に部隊長を含めた一同は砦の一室を作戦会議室にして作戦を練っていた。

「ここで迎えうちましょう。こちらは兵を休ませ万全の状態へ。

反乱軍にはさらなる強行軍を押してもらい消耗させます。傀儡とはいえ動きが鈍くなるはずです。」

冷静に言い放つエイラ。

(騎理がいたら反対しそうな作戦ですけどね。)

操られている村人達へ追い討ちをかけるような作戦。

騎理の優しさがそれを許さないはずなのだ。

(・・・ですが、私は効率的な作戦を提示させてもらいます。)

自分に全てを助けるような力は無く、そのつもりもない。

身の程をわきまえている、と言えば聞こえはいいかもしれない。

しかし、可能性を狭めていると言われてしまうだろう。

(・・・その辺りは出来る人、やりたい人にまかせましょう。私はそれを助けるぐらいが器です。)

「ふむ、確かに兵達にも余裕を持たせてやりたいところです。ここで展開させるのが妥当かもしれませんな。」

ギニアスが思案を巡らせての結論を出した。

ここで新たに斥候からの報告が入る。

反乱軍の最後方に反乱軍を指揮する者の存在を確認したという情報。

遠見の水晶を覗いたところ、

数頭の馬で引かせた円形の舞台のような車の上で、三人の人間が確認された。

1人はヒラヒラとした薄布を纏った露出度が高めの女。

1人は少し腰の曲がった年老いた男。

1人は軽鎧を身に着けて腰に剣を差した男。

「・・・そうか、おそらく女はダンサー。テンプテーションダンスの効果で操っているに違いない。」

ギニアスの言葉通り、女は移動舞台で踊っているのが確認されていた。

定期的に踊ることで効果を持続させることが出来る。

そのために用意された舞台。

「ちょっと待ってください。例え最大レベルだとしても、効果範囲が広すぎます。」

エイラの知る限り、見たことも聞いたこともない規模だった。

「はい。なのでそばにいる老人か男、もしくは両方かもしれませんが勇者である可能性が高い。

そして、勇者の武具でテンプテーションダンスの効果を増幅させていると見てよいでしょう。」

なぜ勇者が?、という疑問がどうしても付きまとう。

しかし、現状では考えても答えは出ない。

問題なのは騎士団の士気に影響が出ないかということ。

この世界は勇者というものは絶対的な光の存在。

救世主であると信じて疑わないものが多数である。

そんな世界で勇者が人々の敵になるということはありえないことなのだ。

理屈ではなく、必然。

それを覆すことが起こってはならない。

それは世界の混乱を意味するから。

その混乱から導き出されるのは、混沌・・・そして闇。

(・・・あぁ、それこそが狙いなのかもしれない。)

答えのようなものに辿り着いたエイラ。

しかし、その先の何があるというのだ?という疑問が浮かびあがる。

その先には何もあるわけがないのに。

勇者が絡んでいるという認識があるのはギニアスとエイラと一部の部隊長のみ。

一般兵達に勇者のことは極秘で話を進める。

「私に何人かの兵を貸してください。周り込んでダンサーを討ちます。」

エイラが提案したのは、小人数で反乱軍の側面を駆け抜けて指揮官を狙うというもの。

失敗すれば死のリスクがある危険な作戦だった。

「正面からの騎士団と反乱軍の戦いを囮にすると?」

「押しきれるのであればそちらが本命でも構いません。

しかし、敵の正体が分からぬ以上、搦め手も必要でしょう。」

騎士団の数は八千、神官と魔術師は二千で合計一万の軍勢。

さらに、五つ目の砦に二千の騎士団を置いている。

正面か戦えば負けるはずはない。

しかし、相手は恐れも疲れも知らぬ傀儡兵。

その後ろに控える推定勇者達の存在。

いくつも作戦を用意しておいて損はない。

「それならば、私がその役目を担いましょう。単独行動には慣れていますゆえ。」

聖騎士であるギニアス。

前線で戦えて、回復もこなすことが出来る。

さらにエイラよりもレベルが高かった。

その作戦にうってつけのように思えるが、エイラは首を振る。

「いえ、軍を指揮するのにギニアス殿は残っていなければなりません。

私に軍を指揮する能力はありませんし、他に適役もいない。

ルファで勇者に次ぐ実力者と言っても過言ではない貴方は、皆の見えるところにいなければ。」

何らかの不測の事態を収拾出来るのはギニアスしかいないのだ。

前回の魔王との戦いで生き残った英雄に1人。

ギニアス本人が思っているよりも、影響力が高い。

それは今もなお劣化することのない、ギニアスの存在を見ればわかる。

「まぁ、大丈夫ですよ。準備もしてきましたから。」

ギニアス達を納得させるために余裕の笑みを浮かべた。

ため息をついて渋々頷くギニアス。

さらに細かい部分を打ち合わせるため作戦会議は続いた・・・。



あとがきっぽいもの。
作者「トライハート(闇)の勇者の武具の紹介、もといまとめ?」
美綺「書くネタが無いと。そういうことね〜。」
作者「・・・言うな。」

武器レベル1     『ソウルイーター』
盾レベル1+レベル2 『イージスの盾』
鎧レベル1+レベル2 『闇の牢獄』

美綺「トライハート君はレベル6だから武器レベル2は未使用だね。」
作者「うむ。ちなみに属性反転で『闇の牢獄』は『光の庭』になりました。」
美綺「今後の活躍に期待というわけですなー?」
作者「うっす。」
                    おわり



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