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舞台車の上であぐらをかいている老人は、戦場の様子を眺めながら満足気な表情を浮かべていた。

「ふむ。首尾は上々のようじゃな。しっかり動いとるわ。」

横ではいかにも座り心地の良さそうなソファーに身を委ねてくつろいでいる女がいる。

その隣りにはグラスにワインを注ぐ軽装備の青年の姿があった。

グラスを女に差し出すと傍に控える。

女はワインの香りを楽しみながら戦場を眺めた。

「それにしても悪趣味ね。美しくもないし、可愛くもないわ。そうよねぇ?ミツル。」

「……はい。セレーネ様。」

セレーネの言葉に何の疑いもなくただ頷くミツル。

その瞳には己の意志など感じられなかった。

その二人のやりとりにふん、と鼻を鳴らす老人。

(傀儡も趣味がいいとは思えんがのぉ。)

人の趣味にとやかく言うつもりは無いので口には出さなかった。

「見るかぎり、神官部隊が右往左往してるみたいね。

それでカンムさん、結局のところアレはどうやって動かしているの?私、聞かされてないんだけど。」

日の光にワインを透かしてみたりしながら、尋ねるセレーネ。

いまいち興味があるように思えなかったが、聞かれれば説明したくなるのがカンムの性であった。

「アレはネクロマンサーの技でないのは一目瞭然じゃろう。

見た目や能力面ではネクロマンサーの技で創ったものと似ておるがの。

儂が創りあげたのは、ほれ、TVゲームやら映画であったろう?それらをヒントに創ったウィルスが死体を動かしておる。」

「ウィルス?まさかうつったりしないでしょうね?嫌よ、あんな姿になるのは。」

「空気感染することは無い。ウィルス自体はそれほど強くないんじゃよ。

発病するのも、抵抗力がほぼゼロになってからじゃしの。

要は死体になってからウィルスが活性しだすということじゃな。

たまにひどく衰弱した死にかけのものも発病することがあるがの。」

「仕込んだのはいつ?ハサン村の井戸水にでも撒いておいた?」

「ご明答。水にはわりかし強いからの。温度調整が面倒だったが。

あと、念のため行軍中に配った水にも仕込んでおいたわい。」  

「あぁ、そういえばそんなこともやってたわね。

使い捨てるつもりなのになんで面倒なことをしているんだろうと思ってたけど、そういう魂胆だったの。」

「うむ。まとめると、死体を動かしているのはウィルス。

ウィルス共は自分達を生存させる、という本能のままに死体を動かして次々と感染させようとしているのじゃ。

ゆえに、『浄化』の奇跡では意味が無い。簡単に言ってしまえば病気にかかっておる状態じゃからの。」

「『治療』の奇跡ね。高レベルの術者ならガンでもなんでも治せるわ。」

「『浄化』よりも高度な奇跡じゃ。皆殺しにしたほうが手っ取り早いかもしれんの。」

ククッと喉の奥で笑うカンム。

「まぁ、どちらにせよ、私達にとっては時間が稼げれば問題ないけどねー。」 

ミツルに2杯目のワインを注がせながら気だるげに呟く。

「さて、いつアレの正体に気付くかの?」

カンムは意地が悪い笑みを浮かべて戦場を睨んだ。



「……だそうです。」

舞台車から50メートルほど離れた岩陰に身を潜めたエイラは、ヘッドフォンに似た形状のものを取り外した。

小隊の魔術師が、エイラから聞いた攻略法を通話の水晶で後方に伝えた。

エイラが使ったのは、『壁に耳あり障子に目あり』という盗聴、覗きをするためのアイテムである。

いや、それはただのアイテムではなく『勇者の武具』であった。

こういう状況を想定して盗賊王から借りうけたものである。

「……都合が良すぎる気がしないでもないですね。」 

どうにもすっきりしない心境であった。 

「あっさりと解決策が見つかったのですからここは素直に喜べばいいのでは?」

脳天気、いや、楽観的な人の良さそうな騎士は気軽にそう言った。

もう一人の騎士も頷いている。

「何の意図も無いといいのですが……。」

騎士二人は目の前に立ち塞がるものと戦えばいいと考えている。

だから、作戦を考えるのは完全にエイラまかせであった。

(そんなのでいいのかしら……。)

未来のルファを担う騎士達に一抹の不安を覚えるエイラであった。

「これからどうするんですか?

反乱軍への対処の仕方がわかったところですし撤退するのも選択の一つだと思うんですけど……。」 

若い女の神官が遠慮がちに自分の意見を口にした。

(この子は今後に期待出来そうだ。)

そんな感想を抱きながら、これからの作戦を伝えることにした。

「敵は既に次の手を考えている可能性があります。それに、ここまでのことをする目的を知りたい。

ですから、あそこにいる三人を捕えます。最低でも一人は捕まえたいですね。

最悪、捕えることが出来そうになければ殺しても構いません。今後の芽を潰すという意味で。」 

頷く小隊員達。それを見渡してから続ける。

「あと、こちらが追い詰められた場合は一人でも逃げのびること。

少しでも多くの情報を持ち帰ることを考えて下さい。生き残っているものはそれを全力で助けること。」

暗に命がかかった作戦だということ。

ここにいる者達には、勇者が敵である可能性を伝えてあるのだ。

勇者が味方であれば何よりも頼もしい存在であるが、

敵に回れば並大抵の力では太刀打ち出来ない存在だと、誰もが理解していた。

「では、作戦を開始します。」

エイラを先頭に騎士二人が後ろに続く。

さらにその後ろから魔術師と神官が追随。

前の三人は魔術師に身体強化の魔術をかけてもらい戦いに挑む。

戦闘が始まってからの魔術師の仕事は臨機応変に援護すること。

神官も同様。

そして、五人は地を駆けた……。

「……後ろをとられるとはのぉ。」

カンムはゆっくりと落ち着いて背後を振り向いた。

「あら?伏兵?やるじゃない。」

セレーネは動じることなく、ソファーに座ったままである。

駆けつけたエイラ達は、エイラを先頭に騎士が少し後ろの左右、神官と魔術師は騎士の後ろに陣形を組んだ。

「貴方達がこの戦いの首謀者ですね?」

エイラは鋭い視線で正体不明の三人を睨みつけた。

肩をすくめるセレーネと、無表情のミツル。

カンムは余裕の笑みで立ち上がった。

「いかにも、と言いたいところだが、首謀者とは違うのぉ。似たり寄ったりかもしれんがなぁ。」

カンムの言葉を警戒心剥き出しのまま、無言で聞き取るエイラ達。

「こんにちは皆さん。……あら?勇者は来てないのねぇ?残念。」

心底残念がっている様子のセレーネ。

期待が外れてあからさまにがっかりしている。

「……それが解るということは、貴方は勇者ですね。」

一挙一動に注意しながら口を開くエイラ。

「ん〜、バレちゃったわねー。」

口ではそう言っておきながら、表情に後悔の色が全くない。

(……この女、言葉が正しいとすれば勇者。

ダンサーのテンプテーションダンスはレベル6で使えるようになることから考えると、

最低でもレベル6以上の勇者ということになりますね。

周りの者も同等の強さだとすると、不利であると言わざるをえません……。)

しかし、戦う以外の選択肢があるとは思えなかった。

厳しい戦いになる、そんな時だからこそ心に余裕を。

エイラは自らにそう言い聞かせてゆったりと構えた。

「ふむ。この世界の人間の割に骨がありそうじゃな。しかし、儂らも暇でない。」

カンムは懐から一枚の紙切れのようなものを取り出した。

「そうねぇ。勇者が来てくれたなら相手をしてあげてもよかったんだけど。」

セレーネもカンムと同じように紙切れを取り出す。

「儂らはこのあたりでお暇させてもらおうかの。充分、目的は果たした。」

ニヤリと意味ありげに顔のシワを寄せて笑うカンム。 

「ミツル。相手をしてあげなさい。殺しちゃっても構わないけど、適当なところで切り上げてきなさいね。

戻ったらお風呂上がりにマッサージしてもらうから♪」

「……はい、わかりました。」

セレーネの言葉に従順に従うミツルは、二人をかばうようにしてエイラ達と対峙した。

そして、カンムとセレーネは紙切れを破り捨てた。

「そうか!それは!」

エイラが気付いた時には遅かった。

破られた紙切れからは魔力が溢れ、二人に魔術が発動する。

「さらばじゃ。」

「また会えたら会いましょ?」

二人が瞬時に目の前から消え去る。

後に残ったのはエイラ達と、舞台車の上からエイラ達を見下ろすミツルだけだった。

「……『転移』の符を持っているとは。」

符とは、特殊な方法で精製された紙に魔術師が魔術を封じこめて、誰でも簡単に魔術を使えるものである。

一度しか使えないとはいえ、高価だが便利なもの。

特に『転移』などの高レベルな魔術が封じられたものは、数が少ない上に高価だった。

予想外の出来事ではあった。

しかし、エイラは頭を切り替えて目の前にいるミツルに集中することにした。

(言動、表情から推測すると、この者も傀儡の可能性が高い。ですが、威圧感が半端ではない。)

「……。」

無言で舞台車から飛び降りたミツルは、表情を変えないままその手に存在を集中させる。

体から溢れた光の粒子が収束してゆき、一本の槍を創り出した。

「……ゲイボルグ。」

銛に近い形状の槍。

それを鮮やかに構え、洗練された静かな闘気が放たれた……。



あとがきっぽいもの。
作者「なかなか執筆ペースが上がらない今日この頃。やらないといけないことがたまってます。」
美綺「寝なければいいのよ。」
作者「確かに集中してると寝むくなくなるけどね。逆に集中してない時はほぼ寝てる。」
美綺「規則正しい生活をしなさいよ。」
作者「うむ。そろそろ頑張ってみようと思うぜー。」
                 おわり



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