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時は少し遡る。

ギニアス率いる騎士団が反乱軍と対峙していた頃、ルファでは密かに動き始めた者達がいた。

ディルフォード邸でリナンシアスを狙った者達と同じ姿、アサシン達が夜の闇に紛れて次々と暗殺を行なっていた。

見張りの兵士や門番、王の命により城下町の巡回を強化していた兵士も殺されていった。

次第に手薄となってゆくルファの警備。

殺し過ぎては感付かれる可能性が高くなると判断したアサシンのリーダーは、

目の前の僅かに息のあった兵士にトドメを刺すと、合図を送った。

『任務達成。次ノ作戦ヘ移行スルベシ。』

『伝達』の符を使って合図を送ると、次の作戦に備えた……。



「よっしゃーっ!来たぜ!来たぜぇ!合図がよぉ!」

そこは上空1000mほどの場所。

眼下には夜明けの光を浴びたルファがある。

合図を受け取ってとてつもなくテンションの上がる男は、赤い鱗の全長15mほどのドラゴンの背にあぐらをかいていた。

その金髪の男は豪快に笑いながらドラゴンの背をバシバシと叩き、興奮を抑えられない様子であった。

「……キリング様。出陣の用意が完了致しました。」

無表情の青年が金髪の男、キリングにそう告げた。

青年の手には鳥の翼の形を模した剣があり、その剣の力でキリングと並んで空中にいた。

「おう!早速出陣するぜぇ!野郎共!俺様に続けぇーっ!!!」

ドラゴンの背に無造作に転がったドラゴンの鱗を模したデザインのランス。

それを引ったくるように掴み、一気に立ち上がってそれを天に掲げた。

そして、獣のような咆吼を上げてドラゴンを降下させる。

キリングに続く、翼の剣を持つもの。

その数、一人、二人、三人……。

総勢20名の翼の剣を持つもの達が続いた。

ルファに勇者が降り注ぐ……。



空の異変。

最初に気が付いたのは、何気なく空を見上げた早起きのお婆さん。

「ひぃっ!?あ、あれはなんなんじゃ!?」

その名は有名でも実際に見たものは少ないドラゴンの姿。

例えドラゴンと認識出来なくとも、その威圧感でただの人間が手出し出来るようなものでないことは容易に知れる。

出来たことは恐怖に支配されることだけであった。 次第に人々が異変に気付いて動き出す。 驚き逃げまどう。 戸惑い駆け出す。 助けを求めたところで、誰にも他人のことを構う余裕なんてなかった。

ルファの上空を舞うドラゴンが大きく息を吸い込んだ。

胸が膨らみ体内にて力が練られる。

一瞬のタメの時間が恐怖を煽る。

そして、大きく開いた鋭い牙の並んだ口の奥から、押し出されるようにして炎が吐き出された。

それはドラゴンのブレス攻撃。

広範囲に業火が巻き散らされる。

その強力な炎はルファに建つの家屋や商店などの屋根を燃やしてゆく。

範囲内の逃げ遅れた人々が焼かれていった。

キリングの先制攻撃は街に大きな被害をもたらすこととなった。

そして、火に巻かれていない位置へと勇者達が降り立った。

この光景を目に入れても無表情のままな勇者達。

まさに今、惨劇が始まろうとしていた……。

「街が襲撃されてますね……。それにアレは……ドラゴン!?」

真矢が王城のテラスから空を見上げると、ドラゴンと次々に地上へと降りてゆく人の姿を見ることが出来た。

「もう!騎理達がいない時に!」

文句を口にしながらも駆け出していた。

まずは勇者王へ報告するべきだと判断し、王が休んでいる部屋を目指す。

部屋に辿り着くとすぐに中へ通された。

室内では勇者王が戦支度を整えている最中であった。

王妃は不安を押し殺しながらそれを手伝う。

「……来たか。城下の現状は把握している。私がドラゴンを討つゆえ、おまえ達は他の相手を頼む。」

鎧の各パーツを着込みながら力強く言う勇者王だが、血を失っているため顔色は良くなかった。

「ドラゴンは俺にまかせてもらおう。」

突然、男の声が聞こえた。

どこかで聞いたことのある声だと思った時、その姿が目の前に現れた。

盗賊王である。

「厳重朗か。」

「お前は城を守れ。いずれ城にも攻めてくるだろうからな。勇者達の守りをまかせる。真矢、慎悟、仁達は城下を頼む。」

盗賊王はそれだけ言うと、再び姿を消してドラゴンのもとへと向かった。

不服そうな顔をしている勇者王。

「ご自愛なさりますよう。今はまだ倒れられては困りますから。」

王妃は穏やかな微笑みを浮かべながら勇者王をたしなめる。

密かに握った拳が勇者王のどてっ腹を狙っていたりするが。

「……わかった。私は城の守りにまわるとしよう。」

苦笑いを浮かべる勇者王。少しだけ表情を和らげた。

「騎理をよろしくお願いします。」

眠る騎理を任せて、真矢も城下へと走った。走りながら通話の水晶を取り出し、慎悟を呼び出す。

『真矢か。』

「えぇ。今そっちに向かってます。仁とも合流して、迎撃に向かいましょう。」

『わかった。あと、こちらで打てる手は打っておいた。』

「なんですか?」

『私兵だ。闘技場の猛者を雇って作りあげた傭兵団。まだ完成ではないが、現状が現状だけに動かす。』

騎理が闘技場で戦ったり修行をしている間、慎悟はディルフォードと共に傭兵団を結成するために動いていたのである。

金銭面では、ディルフォードと市場を動かすことで得た莫大な利益を注ぎ込んだ。

人を集める際に慎悟の話術を駆使することにより闘技場で勝ち続けているものから、思うように勝てないもの、

負けがこんでいるものなど様々な人間を集めた。

そして、それらの人間を組織のものとして動かそうという。

国の保有する戦力としてではなく、もっと自由に動かせられるものを目指して設立したのだ。

もちろん、根本の目的は『勇者』の援護である。

『敵の正体が不明な現状だ。用心のため小隊を組ませ各個撃破するように通達した。私達も合流して各個撃破に当たろう。』

「わかりました。ではあとで。」

『了解した。仁には私から連絡しておく。』

通話の水晶をしまい、全力で駆け出す真矢。

ルファは今、激しい戦火に包まれようとしている……。



あとがきっぽいもの。
作者「長くなりそうなんで短いけど、ここらで。」
美綺「まぁ、導入ってとこかな?」
作者「そゆこと。」
                    おわり



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