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緊張の空気をはらんだ街を駆ける真矢と、それを護衛する二人の騎士。
慎悟達と合流するために急いでいた。
大通りは逃げまどう人々でごった返している中を、縫うようにしてディルフォード邸へと向かった。
燃える家屋の火を消そうと必死な人の横を抜け、倒れた老婆を抱える青年を見送り、スカートをひるがえしながら真矢は走る。
ディルフォード邸まであと少し、という所で破壊活動を行う勇者と遭遇した。
虚ろな表情で剣を振るい、それに応戦する騎士達を攻撃していた。
騎士達が勇者に傷をつけても、勇者が騎士達に攻撃を与えるたびにそれが治癒している。
「……地味に厄介な能力ですね。」
真矢がどう戦うか思案を巡らそうとした、その時、その戦闘に割って入るものが現れた。
「ちまちま回復するなら、一気にダメージを与えるまでっ!」
圧倒的な量の筋肉で体を覆った男、騎理が闘技場の一戦目で戦った男が現れたのである。
「ふんっ!!!」
真矢の身長ほどある斧を振りかぶり、勇者に向かって一気に振り下ろす。
騎士達との戦いに気を取られていた勇者は反応が遅れ、まともに剣で斧を受け止めてしまった。
力に耐え切れずヒビが入ったと思った瞬間、刀身が砕ける。
左肩から右腰まで一気に斬り裂かれ、大量の血を撒き散らしながら仰向けに倒れた。
「もしかして、慎悟に雇われたんですか?」
勝利のポーズを決めて自分に酔っている男へと冷静に声をかける真矢。
ちなみに端から見ていて、みじんもかっこいいとは思えなかったりする。
「うむ。生きていくには金が必要だからな。あと、ルファにも愛着がある。例え雇われなくとも戦っていただろう。」
晴れやかなスマイルと白い歯を光らせて、漢前な台詞を決める男。
「じゃあ、お金は要りませんね。」
「いやいやいやいや、貰えるものは貰っておきますよ?」
微妙に真矢に対して下手に出ているこの男。
(……そういえば、召喚した『肉壁』で溶かしかけたような記憶があるような……。)
「召喚!」
「おおうっ!?」
真矢は適当な振り付けで言ってみただけなのだが、男は物凄くビビって後退りしていた。
「……。」(ニコリ。)
「……。」(ビクッ!)
ここに歪みきった上下関係が成立したのであった。
「ひとまず、慎悟と合流します。よろしいですか?」
「はい!仰せのままに!」
「そういえば名前を聞いてませんでしたね。もうマッチョでいいですよね?」
「マーカスという名前があるんで、名前で呼んで下さい。お願いします。」
やたらと腰の低くなったマーカスを従えて目的地を目指そうとしたその時、倒れた勇者の体がピクリと動いた。
「……治癒の鎧。」
かすれた声でそう呟いた瞬間、体から光の粒子が溢れて白銀の鎧を創り出す。
それと同時に傷口が跡形も無く消え失せて、何事も無かったかのように勇者は立ち上がった。
「治癒に特化した『勇者の武具』ですか。いえ、今のは治癒というよりも復元のような気がしますが……。」
騎理や勇者王の怪我を思い出しながら呟く。
一見『治癒』の奇跡で傷を塞ぐのと同じように思えたが、あの勇者は顔色が悪くなっているわけでもなくふらつく様子もない。
だから真矢には、失ったはずの血も、体力も回復させてしまったように思えたのだ。
「……どうやって倒せばいいのかしら?」
疑問を口に出しながらも、なんとなく答えが見えていた真矢。
(……割り切ることは出来そうだけど、騎理と同じ場所にはいられなくなりそう……。)
それが何よりも嫌だった。
しかし、目の前の障害を取り除かなければ前には進めない。
真矢は敵を倒すための召喚を実行することにした。
「レディがそのような表情をする必要はないですよ!」
バサリとマントを翻して颯爽と現れる男の姿があった。
流れる動作で腰のレイピアを抜き放ち、勇者に向かって疾風の如き突きを放った。
勇者はその速さに反応することが出来ず、左胸にその突きを喰らった。
「ハアッ!」
ねじこむようにしてさらに力を込める。
その穂先は鎧を貫き、勇者の心臓を貫いた。
「ごはっ!?」
目を見開いた驚愕の表情で、口から血を吐き再び仰向けに倒れる。
勇者の体からレイピアを抜いて、真矢の方へと向き直る男。
やはりこの男も、騎理が闘技場で戦ったものであった。
(確か二戦目の相手、名前はギルムントさんでしたね。)
騎理がギリギリまで追い詰められ、生存本能めいた勇者の力が偶然発現したおかげで、辛うじて勝つことが出来た相手。
自然と真矢の視線が冷たくなる。
(いや、別に、騎理がどうのこうのという訳ではなく……。)
一度深呼吸をして、頭をリセットさせた。
色々な出来事が起こり過ぎて思考が混乱していることを自覚した。
「……こほん。助かりました。」
「いえ、そちらと同様に相応のものを貰っていますゆえ。」
マーカスをほうをちらりと見て、背筋を伸ばしたギルムント。
そして、レイピアに付いた血を振り払い、襟を正した。
「ところで、勇者と単独で戦うには少し荷が重い、私も貴方とご一緒させてもらってよろしいかな?」
芝居がかった身振りと手振りで、真矢へと尋ねるギルムント。
戦力があるにこしたことはない、と即判断した真矢は頷いた。
「ディルフォード邸へと向かいます。道中に遭遇した勇者は倒す方向でお願いします。」
マーカスとギルムント、それと騎士二人が頷くのを確認すると、真矢は男達を従えて再び走り始めた。
人を避けつつ、道を塞ぐ物を蹴飛ばし、スピードを落とすことなく走り続けた。
そして、一同は噴水のある広場に出る。
真矢達はその広場に足を踏み入れた瞬間、背筋がゾクリとした。
その正体は分からないが、この広場を突っ切るのは危険な気がしたのだ。
しかし、ここを通るのがディルフォード邸への近道だった。
「……ここは遠回りになっても迂回するべきかしら。」
「そうするべきでしょうな。この混乱している中で、ここの人気の無さは不自然過ぎると思います。」
ギルムントが指摘した通り、この広場は静かであった。
他の場所から聞こえる喧騒がまるで嘘のように。
しかし、今は一分一秒でも時間が惜しい状態であった。
刻々と移り変わる戦況ゆえに、真矢は慎悟達と合流して戦力を整える必要があると感じていた。
「……やっぱり突破しましょう。」
「ならば俺が先頭になってやるよ。」
マーカスがずいっと前に出る。
「機敏な肉壁って感じですね。」
「……酷い言われ様だな。まぁ、何事も無ければいいんだが、保険ってやつだ。」
先頭をマーカス。その後ろに真矢。真矢を囲むように騎士二人。最後尾にギルムントの隊列。
「警戒を怠らないように!」
キナ臭い気配のする広場へ突入した一同。
一気に突っ切ようと全力で駆け足をする。
しかし、マーカスが広場の真ん中に差し掛かった時に殺気が急激に膨らんだ。
タッーン!!!
「ぐあっ!?」
マーカスの首筋に親指ほどの穴が空いて、血が吹き出た。
「マーカスさん!?」
思わず駆け寄ろうとした真矢。
「待て!影に隠れるんだ!」
叫びながら建物の影から飛び出し、真矢をかばうようにして別の建物の影へと連れだそうとするものがいた。
それを追うようにして再び、タッーン!という音が。
「ぐっ!?」
苦悶の声をあげたものの顔を真矢は見た。
「慎悟!大丈夫ですか!?」
「あぁ、かすり傷のようだ。」
影へと避難する二人。
同じように近くの建物の影へと身を潜めるギルムントと騎士達。
広場の真ん中では、マーカスが仰向けに倒れて大量の血を流していた。
「声をかけるのが間に合わなかったな……。どうやら狙撃されているらしい。」
「狙撃って、銃?マーカスさんを助けないと……。」
「神官はいるか?」
「いません……。」
「諦めるしかないな。それに下手に助けにいっても二の舞になるだけだろう。」
状況を見て冷静に判断を下す慎悟。
悔しそうな表情を浮かべる真矢。
対象的な二人の目の前で、助けが来ないと判断した狙撃者はマーカスの額を撃ち貫きトドメをさしたのだった……。
あとがきっぽいもの。
作者「久しぶりすぎるぜ(笑)」
美綺「忙しかったのもあるけど、怠慢といえば怠慢よね~。」
作者「何気にもうすぐ2周年な気がする。」
美綺「進んでなさすぎじゃない?」
作者「働き始めたら余計に進まないだろうね……。」
美綺「まぁ、のんびりでもいいからちゃんと終わらせようね?」
作者「うむ!もちろんさ!」
おわり
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
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