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闘技場。
円形の段差構造をした建築物。
早い話、ドームを想像してもらえればわかりやすいだろう。
野球をやるような広さは無いものの、舞台は二つあり、試合が二つ同時に運営されているのだ。
人対人と人対モンスターの試合が。
注目の試合であれば、試合時間をずらすこともある。
賭けなんかが成立しやすいように。
どうもその辺りも収入源らしい。
うーん、八百長がありそうな匂いがプンプンするなぁ。
とはいっても、それをどうこうする力は無いので真っ正直に勝ち続けるのみである。
まずは受け付けに行って登録。
「対戦相手のレベルはどういたしましょう?」
自分のレベル以上ならば好きに選べるみたいだ。
俺はレベル3なので、3以上を選べる。
さて、どうしたものかね?
自分より上の相手と闘ったほうが貰えるものは多い。
問題はどの程度、上の相手と闘うかだな。
レベル的には3で同等だが、基本能力で勝っている分レベル4の相手でも大丈夫だろう。
さらに、勇者の武具の分の修正でレベル5が相手でもなんとかなる気がする。
よし、最初はレベル5でいってみようか。
「対戦相手はレベル5でよろしいですね?」
受け付けのお姉ちゃんが念を押すように尋ねる。
「あぁ、よろしく。」
俺は気楽にそうやって答えて受け付けを終えた。
一度登録してしまえば有効期限が切れない限りお手軽に試合を組めるようになっているので、
次からはテンポ良くことが進むであろう。
「騎理、登録は済ませたか?」
対戦相手の発表まで時間を潰そうとロビーの辺りでぶらぶらしていたら、知らないオッサンを引き連れた慎悟が現れた。
「済ませた。てか、登録はお前にまかせたつもりだったんだが。」
めんどうきわまりなかった。
「本人が登録をしないと無効だったんだ。いずれこの埋め合わせはする。」
「了解。綺麗どころをズラリと頼むぜ?」
「心得た。」
俺がニンマリと冗談めかして言うと、大真面目に返答された。
まぁ、期待しとこう。
「で、その人は?」
オッサンへと視線を送ると、慎悟が紹介を始めた。
「こちらは私達のスポンサーになってくれる方で、ディルフォートさんだ。」
スポンサー?
それはまた初耳だな。
オッサン、いやディルフォートさんは、40過ぎぐらいの小ジャレた格好をした人で、
メガネをかけているからそう見えるだけなのか、理性的な印象である。
「いやいや、初めまして勇者殿。ディルフォートと申します。握手お願い出来ますか?いやぁ、光栄だなぁ!」
お断りしたいところだが、スポンサーとあれば無下にも出来まい。
適当に愛想笑いを浮かべながら対応。
「ぜひとも勇者殿には闘技場での活躍を期待しております。」
終始笑顔を絶やさない人の良さそうな人だった。
どうやら貴族の金持ちらしい。
そして、救世主信仰の信者。
俺達、『勇者』のスポンサーとしてはうってつけというわけだ。
「ひとまずは今日の試合を観させて頂きますよ。それから詳しい話は私の屋敷でしましょう。」
九割方商談成立といったところだな。
サクッと勝って早く休みたいぜ。
『選手の方は控え室のほうへお願いしまーす!』
係員の案内。
いよいよだな。
「ちょっくら行ってくる。」
「あぁ。勝利の宴を準備しておこう。」
腕組みをして余裕の慎悟。
俺も余裕しゃくしゃくの笑みを浮かべて控え室へと向かった。
さて、控え室に到着。
控え室でいざこざが起こらないように、各自個室があてがわれている。
スタッフがやってきて装備のチェック中。
基本的にはなんでもありなんだが、魔術は無しのルールを選びましたよ。
もう少し戦闘に慣れたら制限解除するかもしれんが、今は剣を振り回すだけで精一杯だろうから。
「なぁ、対戦相手ってどんな奴?」
適当に立てかけておいた剣をチェックしているスタッフのお姉ちゃんに尋ねてみた。
「五連勝中の体格の良い方です。というか、対戦相手を調べていないんですか?」
剣から視線をそらさずに、呆れた口調のお姉ちゃん。
「めんどいし。まぁ、勝てると思うしな。」
勇者の武具もちゃんと用意しておいた。
何を隠そう、今お姉ちゃんがチェックしている剣こそ、勇者の剣である。
魔剣とかもオッケーらしいので問題は無い。
「余裕ですね。さすがは勇者様です。」
ぽわ〜、とした瞳で見つめられた。
「……なぜそれを?」
内緒にしてたつもりもないが、おおっぴらにしたつもりもない。
「お連れのお二人が大々的に宣伝されてましたよ?」
……あの野郎。
めんどくせぇことこの上ないぜ。
通りで力がみなぎるはずだ。
おそらくは存在力が増しているんだろう。
やる気がいまいちな割に、肉体のほうはハツラツとしているってのはどうも違和感ありまくりだ。
「あ、あのサインくれませんか?」
チェックが終わったらしく、私情に走るお姉ちゃん。
紙とペンを差し出された。
しゃあないから、パパッと名前を書いて頬にチュウしてやった。
「装備付けるの手伝ってくんない?」
「は、はい!よろこんで!」
顔を真っ赤にさせてぽーっ、としているお姉ちゃん。
スタッフのくせに選手に肩入れってどうよ?
まぁ、いいや。
強制はしてないし。
めんどいことはどんどん頼んじまおう。
「あの、きつくありませんか?」
「ん?ちょうどいい感じ。」
レザーアーマーを付けてもらう。
はははは、結局俺は突っ立ってるだけだったり。
とりあえず、体を動かしてみる。
む、動きにくいな。
レザーアーマーだから軽いとはいえ、使い慣れないもの。
やっぱいらねぇや。
「外すから手伝ってくんない?」
「……いや、いいんですけど、自由な人ですね。」
自由って響き、かなり好き。
「誉め言葉として受け取っておこう。」
苦笑いされたけど気にしない。
とりあえず、制服で行くか。
ダメージ喰らうつもりもないしな。
鎧を外して剣だけを持参。
呼びに来た別のスタッフ(遅いから別の人が来た)に連れられて舞台へ向かった。
あ、しまった、お姉ちゃんの名前聞くの忘れてた。
よし、さっさと勝って聞きだすとしますか!
あとがきっぽいもの。
作者「一戦交えるところまで書くつもりだったんだけど、長くなりそうだったんでこの辺で。」
リーア「続きは早めにですね〜♪」
作者「うむ。徐々にペースを上げていきたいと思ってまーす。」
おわり
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
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