TOP
戻る
なんだかよくわからないが、勇者が勝ったんだから盛り上がっとけ、ってのが半分。
え?勝ったの?どうやって?わけわかんないんですけど、ってのが半分。
微妙な盛り上がりで初試合、初勝利を収めましたとさ。
観客的にはイマイチすっきりしねぇだろうが、俺的には満足。
今後は遅延剣だけで勝ち抜くのは難しくなりそうだが、対策は考えてある。
なんせ遅延剣の能力上、まともに打ち合えないと話にならん。
手強い敵と相対した時のことも考えておかねばならないということだ。
さて、スタッフのお姉ちゃんの名前を聞いてから帰ろう〜。
今日はもう試合を入れてないので、闘技場を後にする。
闘技場の外もけっこう賑やかで、露店はあるわ、胡散臭い予想屋はいるわ、がらの悪い奴らがたむろしていたりする。
女の子が絡まれていたら助けるぞー、って思いながら辺りを見渡しながらブラブラと。
闘技場のスタッフがフットワーク軽く動き回っているので、治安はそこそこ良いのかも。
さてさて、向かうはディルフォートさんの屋敷。
小難しい話は慎悟にまかせておけばいい、てか、俺は知らん。
だから、飯食ったらさっさと寝ちまおう。
「……さすがにお持ち帰りは出来なかったしなぁ。」
スタッフのお姉ちゃんこと、セシルちゃん。
名前を聞き出すことは簡単だったが、ガードは固かった。
飲みに行くぐらいいいじゃーん。
遊び慣れていないのだろうと勝手に結論。
フッ、ウブなやつめ。
「ということで、一緒に飲みにいかね?」
隣りを歩く真矢に声をかけてみる。
俺は場所を知らないので、真矢に連れられてディルフォートさんの屋敷へ向かう。
「なにがということでなのか分かりませんが、お断りします♪」
きっぱりと言われた。
「相変わらずはっきり言うなぁ。でも、そんなところが好きー。」
ライクではなくラブなのである。
「そんな簡単に好きという言葉を口にされると、凄く薄っぺらく感じるんですけど。」
「好きなものは好き、嫌いなものは嫌いとはっきり言うのが俺の流儀なの。」
「……まぁ、その考えに異論はありませんけど。」
似たもの同士かもな。
そんな感じでウダウダしながら歩を進めていると、何か変な感じがした。
ふと、後ろを振り返ると、とっさに物陰に隠れた何か。
さて、その何かとは一体何でしょう?
「今日の対戦相手じゃないですか?」
俺と同じタイミングで振り返った真矢。
あっさりと正解を言い当てやがった。
つまんねぇのー。
それにしても隠れるの下手だねぇ、おい。
チラチラと物陰からこちらを見ているが、まだ気付かれていないと思ってんのか?
だとしたら超ウケる。
「騎理、あの人どうするんですか?」
声を潜めることも無く問いかけてくる真矢。
「んー、どうしたもんかねぇ〜?」
おそらくは試合に負けたことへの逆恨みだろう。
うぜぇ、オッサンだ。
街中で襲われるのも、周りに迷惑になる。
適当な路地に誘いこんでどうにかするか。
「真矢は先に帰っといてくれ。俺はその辺の人に道を聞きながら帰るから。」
俺が狙いに間違いないだろうから、真矢を一人で帰しても大丈夫だろ。
もし、女の子を人質に取ったり、襲ったりするような野郎なら生かしておかないが。
「私もお付き合い致しますわ。」
真意の読めない笑顔の表情。
危険なところには連れていきたくないんだがねぇ。
「ちょっと召喚してみたいですし。」
それが本音か!
心の底から楽しそな笑みを浮かべられたら、こっちとしても追い払いにくい。
仕方ない、どうせ言うこと聞かねぇだろうから好きにさせよう。
何かあった時は俺が全力でフォローすればいいだけの話だ。
「じゃあ、適当な路地裏に行こうか。はぐれんなよ?」
「わかりました♪」
機嫌の良い真矢さんでした。
表通りから、スルッと小路に入る俺達。
気配でオッサンがついてくるのを感知。
盗賊でもない俺達に感知される程度の尾行。
……いっそのこと、真っ正面から来いよ。
なんて思うが、闘技場の二の舞いになると思ったんだろうな。
かといって、不意打ちも出来そうにないあたり、もうダメっぽくない?
しばらく進むと、なんとか剣を振り回すことが出来そうな場所へ辿り着いた。
ここで迎えうつか。
「おい、オッサン!コソコソしてないで出てこいよ!」
まだ見つかっていないつもりのオッサンへ怒鳴ってみた。
壁からはみだしたオッサンの筋肉質の肩が、ビクッ!て動く。
「……ふははははっ!やっと俺様の存在に気が付いたか!」
「いやいやいや、とっくに気が付いてたし。あんたこそ、
『しめしめ、俺様の存在に気が付いてないようだな。闘技場での借りを返してやるぜ!』
とか、今の今まで思ってたんだろうが?」
俺の言葉にビクリッと反応し、こいつ俺様の心が読めるのか!?って感じの表情をしている。
このオッサン、考えが読み易いなぁ……。
案外憎めない人間かもしれん。
でも、尾行されたのは気分悪いから、とりあえずボコるがな。
「騎理、召喚を使いたいので時間稼ぎして下さいね。」
「りょうかーい。真矢の頼みとあらば、いくらでも。」
おどけて言ってみせたら、クスッと微笑む真矢。
……その微笑みは、俺に向けられたものではなく、
新しい玩具で遊べる嬉しさからこみあげてきたものっぽいのは気のせいだろうか?いや、気のせいではない!
しゃあない、適当に会話して時間を稼ぐか。
「貴様、女と何をくっちゃべっている!?」
お怒りのご様子。
「そうカリカリすんなって。俺が女の子と会話すんのは自由だろうが?」
「……闘技場でも、貴様はちょっかいかけておっただろう!」
審判のお姉さんのことね。
よく見てんな、このオッサン。
「女の子がいたら声をかけておくのが礼儀だろう。」
「美人がいれば節操無く声をかけるとは、男子として情けない!」
落胆というか、軽蔑みたいな言われ方。
オッサンにどう思われようがどうでもいいが、訂正したい箇所は口を出させてもらおう。
「俺は『女の子』に声をかけるって言ったんだぜ?オッサンの言う美人ってのは、外見上のことを言ってるんだろう?
俺は外見に区別無く、『女の子』というくくりで声をかけるんだ。大切なのは中身だからな。」
「なんだと!?受付の姉ちゃんといい!控え室の姉ちゃんといい!審判の姉ちゃんといい!隣りの姉ちゃんといい!
美人や可愛い娘ばかりではないか!」
「それは偶然だ。」
いやマジで。
てか、見てたのかよ。
たぶん闘技場で雇うのに外見の基準があるんだろうな。
アナウンサーみたいな感じかね?
「神聖な闘技場でハレンチだ!」
「阿保う。オッサンが勝手にルール作ってるだけじゃねぇか。図体はでけぇのに、器は小せぇなぁ、おい。」
怒りでプルプル震え出すオッサン。
「俺様だって女の子に声かけたいよ!モテたいよ!」
……それが本音かよ。
もういっぱいいっぱいだなぁー。
「100人ぐらいに声をかければ1人ぐらいは立ち止まってくれるんじゃね?」
精一杯のアドバイス。
「もうやった。筋肉がキモいって言われた。生理的に受け付けないって言われた……。」
どないせぇと?
とりあえず哀れみの視線を送ることしか出来ない。
「俺様を哀れんだ目で見るなぁー!!!」
あっ、ブチ切れちゃったよ。
頭悪そうな力任せの突進。
まとめに受けると吹き飛ばされちまいそうだが……。
「真矢、よろしく。」
とっくに呪文は完成していたようだが、俺達の口論をニコニコしながら眺めていた真矢。
いい性格してるぜ。
「ではでは、行きましょうか。サモン・『肉壁』!」
発生した召喚陣から、なんかグロテスクなものが出てきた。
肉壁って何さ?
俺とオッサンの間に現れた肉壁。
オッサンはいきなり現れた肉壁にスピードを落とせず、そのまま突っ込んだ。
「うおおう!?なんだこれは!?」
凄ぇ嫌そうな声。
うねうねと気味悪く動く肉壁は、まるでオッサンを取り込もうとしているようである。
「続いて、サモン・『肉壁』!」
さらに召喚。
「ぎゃあ!?後ろにも肉が!?」
どうやら前後に挟まれたらしい。
うーむ、それにしてもグロいなぁ。
分かりやすく説明すると、ハラワタっぽいかな?
胃カメラとかで体の中を覗いたやつみたい。
なんつーか、粘膜?
粘膜っていうと、俺的にはエロい響きに感じるんだが、どうよ?
「騎理の感性がエロいだけですよ。サモン・『肉壁』!」
容赦無ぇな、真矢。
「あ、足元にも肉がぁー!?ぎゃあー!肉まみれぇぇーっ!!?」
……うわぁ、トラウマになりそう。
「上にも召喚したいところですが、ここらでやめときましょう。」
満足したっぽい。
オッサンは肉まみれの中、全力であがいているが抜け出せそうになかった。
「あれって何?」
「どこかの地方に出没するモンスターです。複数で獲物を囲って、時間をかけて消化していくんです。」
「……へぇー。」
エグいね。
キモいね。
真矢はホラーやグロテスクな映画とか好きだから、やってみたかったに違いない。
「てか、オッサン殺すなよ?なんか面白いオッサンだったし。」
「はーい♪」
ご機嫌な真矢と屋敷へと向かう。
後日、ちょっぴり溶けたオッサンが保護されたそうだ。
あとがきっぽいもの。
作者「なんだかんだで結局、騎理の話を書いている今日この頃。」
リーア「書き易いんですかね〜?」
作者「うん。なんか書き易い。一気に書いちゃおうかなー。」
リーア「それも書き方の一つですねぇ〜。」
作者「筆の進みが悪くなったら、別の話を書くけどね。」
リーア「ペースが良ければ問題無いですよ♪」
おわり
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
TOP
戻る