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さて、ディルフォートさんのお屋敷に到着。

慎悟は先に着いてんのかな?

それにしても、でかい家だ。

今は正門にいるんだが、端まで行くの軽い散歩になってしまうだろう。

門番には話しが通っているらしく、すんなりと中へ。

庭も手入れされていて、いかにも金持ちの庭みたいな感じだ。

よくわからん像が一定感覚で置いてあったり。

家の玄関を目指している間に何人の庭師と挨拶をかわしたことか。

「てか、ディルフォートさんは何やってる人なんだ?」

隣を機嫌良さそうに歩く真矢へと声をかける。

鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気のまま口を開いた。

「確か、商売をしてるって言ってましたよ。代々やってるそうです。」

「ふーん。あんまり商売人って感じに見えなかったけどな。」

俺の独断と偏見だから、どうとでもとれるが。

まぁ、その辺りの話も含めてこれから聞けばいい、もしくは慎悟に教えてもらえばいいだけさ。

・・・ぶっちゃけ、俺的にはどうでもいいっちゃー、どうでもよかったり。

俺が把握していなくても、慎悟が知っていればいいことだ。

俺は戦っていればいい。

別に戦いが好きとかじゃないが、役割分担ってやつだ。

自分が出来ることをやって、出来ないことは出来るやつがやればいい。

決して努力を怠っているわけではなくて、向き不向きの問題だ。

ん?そういえば、真矢の役割ってなんだろう?

「愛玩?」

「いやぁ、それはエロスな感じがするなぁー。」

真矢の返しは時にわけわからんぜ。

「これから決まるのでしょう。簡単な役割だといいんですが・・・。」

先行きが不安だとばかりにため息をつく真矢。

真矢なら、たいがいのことはこなせると思うんだけどねー。

美綺と同じぐらいのスペックだと俺は思っている。

両方とも性格に難有りというか、なんというか・・・。

真矢は、掴みどころがなくて考えが読めないやつ。

美綺は、年下の幼馴染が絡むと暴走する。

・・・あれ?うちの生徒会って、まともな女子いない?

深くは考えないでおこう。

『お待ちしておりました、騎理様、真矢様。』

玄関前にはズラリと使用人の群れが現れた!

てか、メイドと執事な。

荷物(剣とか)を持ってもらうと、中へ案内された。

屋敷の中も豪華で、高そうな調度品がたくさんある。

よくわからないので、触れないでおこう。

俺達はそのまま応接間へと案内される。

扉が開いたその先には、ディルフォートさんと慎悟が待っていた。

「勇者殿、お待ちしておりました。」

「まずは一勝だな、騎理。」

適当に相槌をうつと、真矢と並んでソファーに腰を下ろす。

運ばれてきた香茶に口をつけて、一息つけた。

「もっと派手な勝ち方のほうが良かったかもな。」

存在力を増やすには、他の存在に認識してもらわなければならない。

記憶に残るような戦いは、やはり派手なくてはダメな気がする。

「いや、要は印象に残ればいいのだ。あの戦い方でも、印象には残る。」

「そんなもんかねぇ?」

慎悟がいいと言うなら、俺はそれでかまわない。

まぁ、さすがに今日と同じ戦い方ばかりでは勝ち続けるのは難しいだろう。

だから、次はもう少し工夫する。

「騎理には、このまま勝ち続けてもらう。」

「あぁ、それはOKだ。でも、目的ぐらいは教えてくんない?」

慎悟の考えを信じていないわけではない。

単純にモチベーションの問題だ。

目標がはっきりしているほうが、頑張りやすいだろう?

「王宮に目をつけてもらうのが目的だ。」

さらりと慎悟は言った。

王宮?

そういえば、ルファには城があったな。

「王様に見初められろってことか?」

「そうだ。国を挙げての支援があれば、戦いやすかろう。」

なんか知らんが、大きな話になってきた。

いや、まだまだ先の話なんだろうけど。

「この世界での『勇者』という存在は、国の王よりも重き存在です。

王の耳に力ある勇者の存在が入ってくれば、後はしめたものです。」

その物言いは、まさしく商売人のようだ。

温厚な顔に似合わず、案外に計算高い人なのかもしれん。

・・・笑顔に騙されないようにしないと。

「ついでに、闘技場で手に入る賞金にも使い道がある。

メイディア嬢からの資金提供と、ディルフォート氏の援助があるとはいえ金は天下の回りもの。

あればあるほど、選択肢の幅が広がるというものだ。」

具体的には、傭兵を雇ったり、盗賊を雇ったりの人手関係。

それと、武器、防具、マジックアイテムなどの装備関係。

確かに大事だな。

「でも、俺にもおこづかいをくれ。」

色々使い道があるんだよ、色々。

「もちろんだ。騎理が戦って得た金だからな。必要な時には必要なだけ言ってくれ。」

深く頷く俺。

無駄遣いはしませんよ、たぶん・・・。

後ろで控えてるメイドさんを眺めながら、香茶をすする。

目が合うと、にっこり微笑まれた。

手をヒラヒラと振って応える。

「ところで、もう1人のお方はよろしいので?」

ディルフォートさんがこともなげに言った一言。

もう1人って、仁のことか?

「よくご存知でしたね。」

慎悟は普通に応対。

まぁ、隠してたわけでもないしな。

オープンソースにしてたわけでもないが。

「我々の情報網はなかなかに優秀でしてね。」

やはりあなどれないな、ディルフォートさん。

「奴は別行動をとらせています。手札は多いほうがいい。」

「確かに。単独行動の出来る方もいたほうが、便利でしょう。」

フッ、とほくそ笑みのような笑みを浮かべあう二人。

この二人は策士っぽいなぁー。

しかも、気が合うようだ。

似たもの同士ってやつだな。

その後、フルコースのディナーを頂いた。

食べなれていないから、肩が凝るのなんの。

試合の疲れもあったので、慎悟達はまだ話をしていたが早々に休ませてもらうことに。

「部屋へはメイドに案内させます。御用がありましたら、ご自由にメイドを使って下さい。」

「俺の自由にしていいの?」

「えぇ、なんでもご自由に。」

そういう意味なんだろう。

俺は足取りも軽く、メイドさんの案内で部屋へと向かった。

「あー、ということで寝るかぁ。」

チラリとメイドさんに視線を送る。

勇者に粗相の無いようにって、メイド長さんをつけられた。 ちょっときつめな感じのクールビューティー。

そういえば、闘技場の審判のお姉さんもクールビューティーだったな。

メイド長さんのほうがもうちょい雰囲気柔らかめかな?

「さーて、一緒に寝ようぜ〜♪」

雇い主の承諾を得たからには、自由にさせてもらうぜ!

「夜伽ですね。」

エプロンドレスに手をかけるメイド長。

ためらいのないその動作は、事務的にしか見えない。

「違うよ。そのまんまの意味。一緒に寝るだけ。添い寝してくれってこと。」

ちょいと早口に言葉をかける。

じゃないと、あっという間に脱いでしまいそうな勢いだったのさ。

仕事に熱心というか、なんというか・・・。

「それだけでいいんですか?」

俺の台詞に拍子抜けしたような表情のメイド長。

そりゃまぁ、思わせぶりなこと言ってたからねぇ。

「俺さ、1人だと寝られないんだ。ガキみたいだけど。」

照れくさくて、頬をかきながらぶっちゃけた。

「誰かいないと眠れなくてさ。元いた世界でも誰もそばにいない時は、テレビつけっぱなしだったし。」

テレビとか言ってもわからないだろうけど。

子供の頃、親は夜に働きに出てた。

だから、いつも寝る時は1人だった。

「夜の闇が怖くて、目をつぶる闇が怖くて、あの暗い世界にいると世界に自分しかいないように思えて怖かった。

今はだいぶマシになってきたけど、まだ夜は怖い、1人は怖い・・・。」

いっそのこと、自分がいなくなればどんなに楽だろうと思った。

ははっ、こんな俺が勇者なんて務まるのかねぇ?

「・・・そうでしたか、私の早合点でしたね。」

柔らかい微笑み。

手を繋いでもらって添い寝してもらうことに。

む、なんだかちょっと恥ずかしいぞ!

「まぁ、なんだ、もっと仲良くなったらわからんけど。」

恥ずかしさを隠すようにして、そんなことを言ってみたり。

メイド長さんはクスッと笑って、

「心得ました。」

余裕の口調でそう返されましたとさ。



あとがきっぽいもの。
作者「次の騎理達の物語は2戦目の試合の予定。」
葵「対人戦ならあたしが一番だよ♪」
作者「次点で雅輝かな。」
葵「早くあたし達の話も書いてー。」
作者「そのうちなー。」
                    おわり



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