TOP
戻る
次の日、光騎達は朔夜に良いものを見せてやると言われたので、朔夜を訪ねた。
トリオンの様々な研究施設がある一画に朔夜の住む部屋があった。
ドアの前までやってきた光騎達は軽くノックする。
それからしばらく待つが反応が無い。
もう一度ノックする。
「朔夜さーん、起きてますかー?」
ついでに光騎は声もかけてみた。
そうすると部屋から人の気配がして、すぐにドアが開いた。
「すまない、待たせたな。」
寝ぼけ眼の朔夜が現れた。
昨日と同じく白衣をひっかけた格好で、時折そこから覗く太ももがセクシーだった。
「ちょっと待って下さい!白衣の下、何も着てないのでは!?」
光騎は反射的にドアから飛び退き、朔夜と距離を取った。
「ん?あぁ、忘れてた。」
朔夜は白衣をチラッとめくって確認すると、あっけらかん言った。
「めくっちゃダメですよ!ほら、貴人も見るなよ!」
「男の性だろ?」
妙に男らしく言い放つ貴人だった。
そして朔夜は朔夜で、
「減るものでもないしなぁ。」
再び白衣をチラッとめくる朔夜。
けっこうなものをお持ちであることを理解した光騎達。
「と、とりあえず、美綺姉達、よろしく!」
「はいはーい♪」
女性陣に朔夜をまかせて撤退する光騎。
貴人もしぶしぶながらついていった。
少し離れたところの壁にもたれて座る光騎と貴人。
しばしの沈黙の後、貴人が口を開く。
「据え膳食わぬは男の恥だぜ、光騎。」
「あそこで食べたら犯罪だって。」
「いや、さっきのこともあるが、美綺さん、奏歌ちゃん、眞彩ちゃんに麻衣ちゃん。魅力的な女の子がおまえにアタックしてるんだ。そろそろ決めなきゃならんぜ?」
珍しく真剣な物言いの貴人。
「そんな、決めるって言われても……。」
確かに光騎にはわかっていた。
美綺達が自分を好いてくれていること。
自分も嫌いなわけなくて、四人のことが好きであること。
しかし、その『好き』はLIKEなのかLOVEなのかはまだわからなかった。
わからないからといって、今のような関係を続けることは出来ないともわかっている。
光騎はどうすればいいかわからずにただうつむいた。
そんな光騎を見て貴人はポンッと光騎の肩を叩いた。
「まぁ、美綺さん達ならおまえが決めたことなら納得するだろ。ついでに言えば、ハーレムも夢じゃないかもよ?」
励ましと冗談が混じった貴人らしい言葉に光騎は笑った。
それから、朔夜の出かける準備が出来たらしく、光騎と貴人が呼ばれた。
二人が戻ると、白衣は着ていたがキャリアウーマンな雰囲気の朔夜がいた。
寝癖のついていた髪もまとめられていてさっきの姿が嘘のようだった。
「さぁ、行こうか。」
朔夜は周りの反応はどこ吹く風で目的地へと歩き始める。
五人もそれについていく。
「ねぇ、光ちゃん?」
「なに?美綺姉。」
ススッと光騎に寄ってきた美綺。
「裸白衣、ってそそる?」
「な、なに言ってんのさ!?」
「やっぱり裸エプロンか……。」
「何を、なぜ納得してるの!?」
光騎の叫びはいまいち美綺に届かなかった。
「ここだ。」
朔夜に連れてこられたのは港のような場所。
そこには船に似たようなものが並んでいた。
「もしかして、飛空艇とかいうやつでは?」
エ○○フとかでよく見るようなやつである。
「そう、この空中都市では欠かせない乗り物なんだ。主として地上との行き来に使われている。あとはモンスターの警戒だな。」
「ワイバーンみたいなモンスター?」
きにゃあぁ、とワイバーンの鳴き声を真似てみる眞彩。
似てない。むしろ、可愛い。
「あぁ、空を飛ぶモンスターが警戒対象だ。ドラゴンが来たら、対抗出来ないのが現在の問題だ。」
ドラゴンなんて滅多にいないがね、と朔夜は付け足す。
「で、見せたいものって港のこと?」
美綺がキョロキョロと辺りを見回す。
「いや、こっちだ。」
飛空艇のドッグの一つに入っていく。
ついていくと、朔夜はシートをかぶった何かの前で立ち止まった。
「これだ。」
短く言うと、シートを一気にはがした。
『おぉ!?』
そこにはメタリックシルバーを基調にしたデザインのバイクにも似たものがあった。
バイクと違うのはもちろんタイヤが無いことである。
「飛空艇の小型版だ。飛行石を使って作った試作品で全部で3台ある。」
「かっこいいー!これ欲しいー!」
美綺がまっしぐらで飛び付いた。
ぺたぺたと触っている。
「そんなに触っちゃダメだよ、美綺姉。うわ、こんなに指紋つけてる……。」
美綺はおかまいなしで触りまくる。
朔夜は苦笑しながら、
「乗ってみるか?」
「乗るー!」
ということで試乗することになった。
「それがアクセルで、そっちがブレーキ。逆噴射はこっちで、重力制御はオートになってる。慣れればイジってみるといい。」
「ふんふん。じゃあ、ちょっくら行ってくるぜぃ♪」
「いってらっしゃーい。」
美綺は一通りの説明を受けると飛びたった。
楽しそうにしながらその辺を行ったり来たりしている。
光騎、奏歌眞彩はもうちょっと朔夜の講習を受けることにする。
ちなみに高所恐怖症の貴人は、はなから乗る気は無く一人ヒマそうにドッグの隅で体育座りをしていたり。
光騎達がようやく実際に乗って動かしてみようとした時、空中でドリフト?のようなことをしている美綺が、
「光ちゃん、一緒に乗らなーい?」
と言って二人乗りのお誘いをした。
「朔夜さん二人乗りって出来るんですか?」
「問題無し。」
「でも、遠慮しておくよ。美綺姉の運転は怖い。」
正直者の光騎だった。
美綺は残念そうな表情を浮かべるが、気をとりなおすとスピードを上げて空を駆けた。
「あははははは――」
美綺の笑い声が遠ざかっていった。
「もう見えないとこまで行っちゃった……。」
「美綺はスピード狂だな。」
美綺がちゃんと帰ってこれるのか不安な二人だった。
「にゃ!?にゃにゃにゃにゃにゃ〜っ!?」
変な鳴き声を聞いた光騎が振り向くと、コーヒーカップのように回転しながら空高く昇っていく眞彩の姿があった。
「眞彩ちゃん!アクセル離して!」
光騎はとっさに叫ぶが混乱状態の眞彩には聞こえていなかった。
というか、
「にゃはははは―♪」
「楽しそうだ……。」
光騎の心配は杞憂だったようだ。
今度はクルクル回りながら急降下している。
「あれ、絶対目を回すよ……。」
眞彩の三半器官の強さにおののきつつ呟く。
なんだかなー、と光騎がぼんやりしていると
「光騎君、一緒に乗ろう?」
いつのまにか奏歌が飛空艇に乗り、光騎のそばにきていた。
「あー、そっか、三台しかないんだっけ。」
美綺はスピード狂のごとく空を駆けぬけて、眞彩はアクロバティックな動きをしている。
まとも(安全運転)なのは奏歌だけだった。
「それとも交代で乗ってもいいよ?」
光騎は少し悩んで、
「えっと、乗せてもらってもいいかな?」
光騎は運転に自信が無かった。
乗せてもらって慣れてからにしようという考えである。
(やったね♪)
奏歌は内心小踊りしながら光騎を後ろに乗せた。
「ほら、ちゃんと腕を回してね?捕まってないと危ないよ。」
「う、うん。」
自分から乗ると言いだしておきながらとまどう光騎。
奏歌の流れる髪からいい匂いがするやら、触れてる体が温かくて生々しいやらで赤面する。
「どうかした?」
「い、いや、なんでもないよ。それよりさ、風が気持ちいいね。」
風になびく髪。
港を飛び出し大空を駆ける。
「うん。それにこの空の青さが、どこまでも飛んで行けそうな気にならない?」
奏歌の笑顔が眩しかった。
ゆるやかにトリオンから遠ざかり、白い雲が目の前を通りすぎる。
眼下を見下ろすと大きな町があった。
その近くには町とは比較にならないほどの広さを持つ森がある。
「……でも、下見ると怖いかも。」
「うん。だからあんまり見ちゃダメ。」
とりあえず奏歌にギュッとしっかり捕まる光騎だった。
しばらく二人は空のドライブを楽しんでいたが、前方から猛スピードでやってくるものによって終りを告げる。
焦りの表情を浮かべる美綺だった。
「あっ、美綺姉だ。どうしたんだろ?」
滅多なことでは動じない美綺の珍しい表情に光騎は首をかしげた。
「クッ、至福の時間が終わった……。」
奏歌は口惜しいという感じで肩を落とした。
美綺が光騎達の横に飛空艇をつけると一度、深呼吸をしてからこう言った。
「ドラゴンだー!あ、あっちにドラゴンがいたぁ!」
来たほうを指差す。
しかし、そっちには雲しか見えない。
「またまた〜。」
「何かいたとしても、またワイバーンじゃないんですかぁ?」
信じていない二人。
「ホントなんだって〜。昨日のやつより数倍はおっきいんだから!」
身振り手振りで真実を訴える美綺。
その真剣さに、光騎は思う。
(美綺姉は嘘はつかない。滅茶苦茶やる人だけど、嘘はつかないんだ。)
「わかった。信じる。美綺姉、ドラゴンはあとどれぐらいでくる?そのまま進むと、トリオンにやって来そうだった?」
「え?う、うん。30分経つか経たない内にトリオンに来ちゃうと思う。」
「奏歌ちゃん、トリオンに戻ろう。朔夜さんに伝えて対策を練らなきゃ。」
(時間が無いけど、何もやらないよりはいいはず……。)
「うん、わかった。」
飛空艇を反転させ、美綺と共にトリオンへと向かった。
押し寄せる危機を伝えるために。
「・・・ついに来たか・・・。」
光騎達の報告を聞いて苦い表情を浮かべる朔夜。
対策の時間も無ければ、対抗する術も無い。
朔夜のその頭脳を持ってしても突破口は思いつかなかった。
「住民の避難ぐらいしか出来ませんね。」
悲しい表情の光騎。
「そうだな。しかし、それも難しい。飛空艇の数が足りない。全員は無理だ。」
「時間も無いしな。むしろ混乱して助かるものも助からないかもしれない。」
貴人の冷静な言葉。袋小路に入ってしまう。
こうしている間にもドラゴンは近付いてきている。
必死に思考していた朔夜が口を開く。
「確か、光騎君は『勇者』だったな?」
「そうですけど……。」
何が言いたいのかわからずに怪訝な表情を浮かべる光騎。
「レベルは?」
「3です。」
「勇者の武具の能力はなんだ?」
「まだ使ったことないです。」
光騎の答えを聞いてふむふむと頷く朔夜。
何か無茶なことを言われそうな気がして不安になる光騎。
「よし、光騎君に全ての命運をかけよう。」
ガッシ、と肩を掴まれた光騎はポカンと口を開けている。
「え?な、なんで、そんな結論に?」
あたふたする光騎。
いきなりトリオンの命運をかけられれば誰だってとまどう。
「それは勇者の武具の特性にある。勇者の武具には好きな能力を付加出来るのは知っているだろう?」
「はぁ、まぁ……。」
「レベル3ならば、剣、鎧、盾のそれぞれに能力付加が出来る。それで、ドラゴンを倒せるものを創作しろ。」
「そんな、創作しろたって……。」
今、光騎の肩に重大な使命がふりかかった。
光騎はドラゴンに勝てるものをイメージしようと目を閉じた……。
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
TOP
戻る