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「ねぇ、光ちゃん♪踊らない?」

にっこりと笑顔を浮かべて、光騎の手を取る美綺。

「僕、踊ったことないよ。」

手を取られながらも、あまり乗り気ではない光騎。

「大丈夫!こういうのは楽しければいいんだから。」

引っ張るようにして光騎を連れだす美綺。

両方の手を取ると、音楽に乗せて踊り出す。

正式な踊り方ではなかったが、見よう見まねと勘で二人は踊った。

「楽しい?」

美綺が尋ねる。

光騎は頷いた。

「うん、楽しいよ。……美綺姉?」

「ん?なに?」

「……その、ドレスだけどさ、とても似合ってるよ。」

光騎は顔を赤らめながら言った。

美綺も光騎の言葉を心にじっくりと染み渡らせると、頬を赤くした。

「ありがと♪」

体が近付いた瞬間、美綺はスッと顔を寄せると、光騎の頬にキスをした。

「み、美綺姉……。」

光騎は戸惑って目をパチパチさせていた。

美綺と踊った後、次は奏歌に誘われた光騎。

奏歌は踊ることが出来るようで、光騎をリードしながら踊った。

「光騎君、えっと、このドレスどうかな?」

頬を染めて奏歌が尋ねる。

「に、似合ってるよ。うん、奏歌ちゃんによく似合ってる。」

光騎は奏歌が露出度高めのドレスであるために、どこに視線を置いたらいいか迷いつつ答えた。

「ありがとう♪……良かった。頑張ったかいがあった……。」

安心したようにホッと息をつく奏歌。

光騎は奏歌の揺れる胸に気が気ではなかったが。

「お兄ちゃん!次は眞彩と踊ろう♪」

眞彩が光騎に飛び付いた。

ドレスがフワッと動いた。

「うん。いいよ、眞彩ちゃん。」

お互いの手を取る。

眞彩とのダンスはただクルクル回っているだけだった。

音楽に合わせることもなく、マイペースにダンスホールを飛び回る。

それはそれで光騎は楽しかった。

周りは微笑ましく見守っていた。

「お兄ちゃん、ドレス似合う?似合う?」

キラキラした瞳で尋ねる眞彩。

「似合うよ。眞彩ちゃん、可愛いね。」

「うわー♪きゃー♪」

眞彩は無邪気に笑って光騎に抱きついた。

そのままクルクルと少しだけ回って、光騎は笑った。

「朔夜さんも踊りませんか?」

光騎はワインをグビグビ飲んでいる朔夜に声をかけた。

トロンとした瞳で光騎を見る朔夜。

「気持ちだけ受け取っておこう。私はこうやって飲んでいるほうが楽しいからな。」

グラスに残ったワインを飲み干す。

「じゃあ一杯だけ付き合いますよ。はい、どうぞ。」

朔夜のグラスにワインを注ぐ。

「うむ。では、私からも。」

朔夜は光騎のグラスになみなみと注いだ。

「うわっ、入れすぎですよ!」

「飲め。」

「…飲みますけど。」

光騎は少し酔ってるんだろうなぁ、と思いながらグラスに口をつける。

しばらく、お互い黙って飲んでいるだけだった。

「そういえば、零式のことなんだが。」

おもむろに朔夜が口を開いた。

「零式がどうかしたんですか?」

「いやなに、トリオンの権力者、さっきの王様っぽい格好のやつとかがそうなんだが、全面的にバックアップするようこぎつけた。」

「え?それはどういうことですか?」

朔夜はワインを口に含んでから味わう。

「修理だ。まぁ、この世界で出来ることは、外部装甲の一部を修復することぐらいだろうがな。愛ちゃんと協力して色々やってみようと思う。」

空になったグラスを持て余す朔夜。

光騎は再び注いでやった。

「なんせ、竜を倒した巨人だからな。金は惜しまんさ。」

美味しそうに喉を鳴らして飲む朔夜。

「僕が出来ることがあればいつでも言って下さいね。」

「あぁ、よろしく頼むよ。」

光騎は自分のグラスの中身を飲み干すと朔夜に礼を言って立ち去った。

「……好ましいな。」

去っていく光騎の背中を見つめながら朔夜はそんなことを呟いた。

光騎は酔いを冷まそうと思ってテラスに足を運んだ。

「……ふぅ。」

心地よい風が頬を撫でていく。

夜空には無数の星が輝いていた。

月は見当たらなかったが、綺麗な夜空だった。

光騎は今日は色々あったなぁ、と思った。

朝一番に飛空艇に乗って、竜を発見して、零式を召喚。

エクスカリバーを引き抜いて、皆の力で竜を倒した。

トリオンの人々が宴を開いて、勲章をもらい、皆と踊った。

「さすがに少し疲れたかも……。」

テラスの柵にもたれて呟く。

その時、後ろから足音が聞こえた。

光騎は誰かが自分と同じように涼みに来たんだろうと思い、気にはしなかった。

足音が止まる。

それは光騎の真後ろで止まったようだ。

光騎が振り向こうか、振り向かないが悩んでいると、

「この程度で音を上げるとは情けないぞ、我が主。」

凛とした声がかかる。

反射的に振り向くと、そこにいたのは和風の服、巫女服に近いような、そんな服を纏った眞彩より少し背が低い女の子が立っていた。

青みがかった髪が風に揺れる。

「えっと……どなたでしょうか?」

女の子の威厳に満ちた態度に、無意識に敬語を使う光騎。

女の子は腰に手を当てて胸をそらす。

「そんなにかしこまらずともよい。汝は我の主だ。」

「……は、はぁ……えっ?」

光騎は混乱している。

とりあえず女の子の言葉は全く理解出来ていない。

「ふむ。主は我が誰かわからぬようだな。我はエクスカリバー。」

自信たっぷりに言い放つ女の子。

「……へ?」

光騎はなんだか間抜けな声を出す。

その反応に女の子はつまらなそうな表情をする。

「覚えておらぬか?我を引き抜いた時、汝は我の声が聞こえたであろう?」

その言葉で光騎はその時聞いた声を思い出した。

あの時聞いた声も女の子と同じ凛とした声だったのだ。

「君がエクスカリバーなの?」

光騎は首を傾けて尋ねる。

女の子は頷いた。

「うむ。我はエクスカリバーだ。我が主、光騎よ。」

「僕の名前、知ってるの?」

「もちろん。我を抜いた時に汝と我は繋がった。心の内で会話することも出来る。」

「へ〜、そうなんだ。凄いなぁ。携帯いらないね。」

「ケイタイ?」

「いや、元の世界のものなんだけどね。」

「ふむふむ、大体は分かった。」

「えっ!?なんで分かったの?」

「言ったであろう?我らは繋がっていると。心を澄ませば主の思っていることは伝わってくるのだ。」

ふふん、となにやら自慢気に胸をそらす。

胸は無いが。

「そっかぁ。ねぇ、ところで君のことはなんて呼べばいいかな?」

光騎が少しかがんで顔を近付けて尋ねた。

女の子は間近に迫った光騎の顔にたじろぎながらも、

「な、汝の好きに呼ぶがよかろう!」

ぷいっ、と横を向く。

光騎はうーん、と考えてから思いついた名前を告げた。

「聖ちゃんね。」

「ヒジリ?」

「そ。エクスカリバーといえば、聖剣。だから聖ちゃん!」

にこにこしながら光騎が言った。

「ま、まぁ、主が決めたのなら問題はない!聖。うむ。聖……。」

聖が噛みしめるように光騎がつけた名前を呟く。

光騎は気に入ってくれた様子に嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「ライバル増えた?」

「かもしれません。」

「お兄ちゃ〜ん…。」

美綺、奏歌、眞彩の3人がテラスを覗きこんでいた。

朔夜は我関せずといった感じでひたすら飲んでいた。



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