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「よぉ、ダイル。生きてるか?」

モンスターの大群が通り過ぎた。

荒れ果てた大地には、数十体に及ぶモンスターの死体が散乱している。

しかし、大群の数からすると微々たるものであった。

「……あぁ、二回ほど死んだがな。」

九条の問いかけに苦々しくダイルが答えた。

魔力を失った二つの復活の指輪。

砕けて風に消える。

「ははっ、俺は一回しか死んでないぜ。」

九条がダイルに勝ったと言わんばかりに言い放つ。

「マジかよ。やっぱり武器がなぁ……」

土埃を払いながらダイルが立ち上がる。

折れた大剣を拾いあげる。

しかし、ダイルはもう使えないと判断して放り捨てた。

そして九条の姿を探して、

「プッ!」

と吹き出した。

そこには片腕、両足が潰れてグチャグチャになった九条が横たわっていた。

利腕にはしっかりと刀を握っていたが、満身痩依である。

「……なんだよ。」

血を滴らせながらダイルを睨む九条。

「ギャハハハッ!ほとんど死んでるじゃねぇか!何が一回しか死んでないだっつーの!」

指差して笑うダイル。

「けっ、死にかけだろうと、生きてることには変わり無ぇだろ。」

血を吐きながら反論する九条。

あまり説得力は無い。

「いや、おまえ、それでどうすんの?神官がいるわけじゃないんだぜ?俺、運ぶの嫌だからな。汚れるし。」

ニヤニヤ笑うダイル。

九条は、肺に穴が開いてるがゆえ、痛みに顔をしかめながらため息をついて言った。

「殺してくれ。」

「はいよ。」

グシャッ。

ダイルは手近にあった棍棒で九条の頭を叩き潰した。

割れた頭蓋骨から脳漿が飛び散る。

眼球がこぼれ落ちる。

九条は間違い無く死んだ。

「……。」

ダイルはつまらなそうに血まみれの棍棒を捨てる。

そして、しばらくすると九条の体がうごめきだした。

九条の指の復活の指輪が輝き、九条を復元していく。

巻き戻しの映像のように、肉体が復元されていった。

さすがに着ているものまでは復元されない。

しかし、今、九条の姿は戦いに赴く前の怪我一つ無い姿であった。

「ふぅ……。」

首をコキコキと鳴らして、軽く柔軟をする九条。

復元後は、どうも体が固い感じがした。

「九条、お前これであと一回しか復活出来ないんじゃね?アオイ、ってやつに殺されて、今日二回死んで。あと一個しか指輪持ってないだろ?」

ダイルは自分はあと二つだと、指にはまった二つの指輪を見せた。

「ふっ、それはどうかな?」

九条はポケットに手を突っ込む。

出した手の平に乗っていたのは、三つの復活の指輪。

「うわっ、お前いつの間に手に入れたんだよ!?」

「この前潜った時。」

二つを指にはめる。

一つはもう一度ポケットの中へ。

「『勇者』ってかなり優遇されてるよな。」

羨ましそうに呟くダイル。

「そのぶん、色々背負わされるがな。さて、再挑戦といくか。」

刀を鞘にしまう九条。

柔軟も終えて、走り出す気まんまんである。

「武器買ってからな。俺、丸腰だし。」

死を恐れず、戦うことが自分達の道であるという二人。

再びモンスターの大群と対峙することを選んだ。

「……てか、追いつけんのか?」

「……。」

ダイルの言葉を無視して九条は走り始めた。

ダイルはやれやれといった感じで、九条に続いて走るのだった。

走り続けること、数時間。

二人は息を整えながら、破滅した村を見回る。

モンスターの大群は、ただ村へとなだれ込んだだけで、この村を滅ぼした。

抵抗らしい抵抗も出来ないまま、村人は全滅し、ボロクズのように転がる死体。

倒壊した全ての建物。

災害のように通り過ぎていった暴力は、どこを目指しているのだろうか。

「胸クソ悪ぃぜ……」

ダイルが吐き捨てるように言った。

「ダイル、使える武器を拾っていけ。潰れた武器屋にあるだろう」

淡々と言い放つ九条。

ダイルは九条の静かな怒りを感じとった。

倒壊した建物の柱やらなんやらを蹴飛ばし、武器を吟味するダイルと九条。

九条はもう一本、刀を手に取り、ダイルは大剣を手に入れた。

「なぁ、ダイル。皆殺しには皆殺しで答えてやろうぜ。」

「そりゃいいな。」

二人は獰猛な笑みを浮かべて、モンスターの大群を追った。

走る二人。

休みなく駆ける二人は、モンスターの大群の先回りをするべく、全力で向かった。

立ち塞がる木々を切り倒し、真っ直ぐに突き進む。

その甲斐あって、二人は先回りすることに成功した。

そこは、小さな村があった。

大群の通るだろう道。

「『勇者』としては死守?」

ダイルが笑いながら言った。

「ふっ、三回は死んでも大丈夫だ。」

九条も笑った。

そして、遠くから聞こえてくる足音。

地響きが絶望の音楽を奏で始める。

その時、二人の後ろから足音が聞こえた。

二人が同時に振り返ると、そこにいたのは青みがかった髪の青年。

手ぶらで軽装の姿は、この場にそぐわない。

「なんだてめぇ?」

ダイルが睨みつけながら青年へと詰め寄る。

「輝(アキラ)って名前です。とりあえず、邪魔なんで退いて下さいね。」

輝の物言いに呆気に取られるダイルの横を通り過ぎた輝。

しかし、九条が道を塞ぐ。

「おまえは何をやろうとしている?」

目を細めて問いかける九条。

輝は少し言葉を考えてから口を開いた。

「仲間の尻拭い、ってところでしょうか。ちょっと違うかもしれませんが、大体そんな感じです。ついでに、あなたの腰のものも貰いに来ました。」

あっけらかんと言い放つ輝。

「腰のもの……、『武御雷』のことか?」

「はい、その魔剣、いえ、魔刀ですかね。僕は魔剣集めをしてまして、ぜひ譲って頂きたいんですが……。」

「嫌だね。」

一瞬の迷い無く、言いきった九条。

「欲しけりゃ、力ずくで来いよ。」

ニヤリと笑う九条。

戦闘狂ゆえに、常に戦いを求める。

「わかりました。じゃあ、遠慮なく。」

ザワリと輝の気配が変わる。

発するのは明らかな殺気。

九条は瞬時に臨戦体勢へ移行する。

腰の武御雷へ手をやって、居合い抜きの姿勢へ。

輝はクスッと笑ってから、目を閉じ、その力を開放した。

「いつか見た風景、いつか見る風景、その名は『剣ヶ丘』!」

無数の剣が立つ丘が現れる。

朝焼けのような光が心に沁みるほど、その風景は心に焼き付く。

輝の手に現れるシンプルなデザインの剣。

しかし、内に秘めた魔力は未知数であった。

「ふっ!」

九条は武御雷を抜き放った。

常人では捉えきれないはずの速度で振るわれたそれは、あっさりと輝に受け止められる。

「剣の扱いで僕に勝とうなんて、まだまだ早いよ!」

数回、剣を合わせただけで力量の違いが明確になった。

九条はいつの間にか武御雷を打ち落とされ、剣を突きつけられていた。

ダイルは手を出すことも出来ず、奥歯を噛みしめていた。

「まだだ!」

九条は武御雷へと手を伸ばす。

輝は迷いなく九条の腕を切り落とすも、片腕で九条は武御雷を回収した。

「なかなか根性ありますね。」

「へっ、余裕だな。見せてやるぜ、こいつの力を!」

武御雷へ九条の精神力が注がれる。

放電を始める武御雷。

「あぁ、そういう能力ですか。なかなか強そうですね。でも、使わせませんよ。」

輝は剣を構えた。

「さぁ『テンペスト』、嵐でも呼んでみようか。」

一瞬で、テンペストと呼ばれた剣の魔力が高まる。

風が吹き荒れ始める。

九条は武御雷への力の注入を早めようとするが、間に合わない。

テンペストに風がまとわりつき、それはやがて嵐のような荒々しさを持ち始めた。

「一気にいこうか!」

それは竜巻。

輝が振り下ろした剣から放たれた暴風は九条を巻き込み、村へと迫っていたモンスターの大群をも吹き飛ばす。

「グッ、ガァァァァ!?」

四肢が千切れる。

九条は意識が途切れる中、輝の正体を考えていた。

(……魔剣使い、いや、そんなクラスは存在しない、……そうか、あれが……魔法剣……を……司る……お…………。)

そこまで思考したところで九条は息絶えた。

「ちっ!俺はそう簡単には!」

ダイルが大剣を輝へ向けた。

「大技使うと、丸一日使えなくなるのが弱点だよなぁ。」

輝の手からテンペストが消える。

ダイルの大剣が輝へと振り降ろされる、が、

「次は、『インフェルノ』でいこうか。」

現れた剣を大剣と合わせる。

インフェルノの灼熱の刃が大剣をバターのように溶かした。

「クッ!?」

ジュッと手が焦げた。

一度の交錯でそれほどの熱量が伝わった。

ダイルはこの脅威に対し、思わず距離を置くため後退。

その一瞬の隙が命取りだった。

「『インフェルノ』、燃やしちゃおう。」

ゴルフのスイングのようにインフェルノを振り上げた。

溢れる灼熱の業火。

サラマンダーすら逃げ出すような熱量がダイルを襲う。

ダイルは悲鳴を上げることも出来ずに、炎に包まれ灰になった。

「さてと、武御雷ゲットだね。」

輝は武御雷を拾いあげて、『剣ヶ丘』に登録した。

そして、テンペストの攻撃で多少は減ったものの、怯むこと無く迫るモンスターの大群を見た。

「とりあえず、試してみようか。」

早速、登録したばかりの武御雷を取り出す。

二、三度振って感触を確かめる。

輝は新しいおもちゃを手に入れたような表情をしてから、大群を見据えて構えた。

居合いの構え。

「響け『武御雷』、斬り裂け雷鳴!」

神速で振り抜いた。

刀身から放たれた斬撃は雷を帯び、モンスター共を感電させながら斬り殺した。

当初の半分以下へと減ったモンスター達は、ついに立ち止まる。

そして、散々になっていき進行をやめてしまった。

「ま、一時の時間は稼げたかな?」

輝の手から武御雷が消える。

剣ヶ丘も消え去り、静けさだけが残った。

輝は次の魔剣を探しに立ち去った。

「……よぉダイル、生きてるか?」

九条は復活の指輪で生き返っていた。

「……あぁ、灰になってたがな。」

ダイルも同じく生き返っていた。

二人は、しばらく倒れたまま空を見上げていた。

「……上には上がいるもんだな。」

ダイルが呟く。

「けっ、あの野郎近い内に見下してやるぜ。必ずな!」

決意を空に違う九条だった。



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