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日が差し込みにくい森の中。

風によって葉がこすられる音、木々の間から聞こえる鳥の鳴き声。

それら全てが、己の中へ入ってくるのを、高められた集中力で打ち消す。

「――フゥゥ――。」

息を吐き出し、大きく吸い込む。

九条は目の前の木へと踏み込んだ。

凄まじい速さで鞘を走る刀身。

目で捉えることの出来ない速さで放たれた刃が木を斬り倒した。

「……ダメだ。普通の居合い斬りだ。」

納得がいかない九条は再び構える。

「やっぱり、タイミングが難しいな。」

研ぎ澄ませた集中力。

それから放たれたものはさっきと変わらない普通の居合い斬りだった。

(これだと、必殺技にはならねぇな。当たればそこそこ強いがなんせ射程がなぁ……。もっと強い剣ならマシになるんだろうが。

九条の装備は、2本の魔刀。

魔刀といっても、魔力刀なので大した能力は無い。

1本はただひたすら頑丈で、もう1本は衝撃波を放つことが出来るものである。

九条がやろうとしていることは、衝撃波を放つほうを使って、居合い斬りの攻撃力を衝撃波に『乗せる』こと。

この修行が成功すれば衝撃波の届く所なら、居合い斬りを当てることが出来る。

しかし、なかなか上手くいってなかった。

「……休憩するか。」

皮袋に口をつけて水を飲む。

皮の臭いが気になる。

「ペットボトルって偉大だなぁ……。」

そんな独り言を呟きながら、丸太と化した木に座って休憩。

(それにしても、麻衣たんが来てから丸くなった気がするな。以前はもっと攻撃的というか、衝動的というか。今の自分が嫌いってわけじゃないんだが、なんか物足りん。)

出会うやつにひたすらケンカを売っていた九条にとって、今の日々はいまいち刺激が足りなかった。

(……返り討ちにされることもあったが。)

葵と輝に返り討ちにされたことを思い出す。

九条は完膚無きまでにブチ殺されたことを思い出して、げしげしと、その辺の木を蹴りつけて八つ当たりした。

「もっと、こう、なんてゆーか、荒々しさとか、野性というか、そんな感じのが足りん。かといって、それだけで勝てるわけでもないし。メリハリか?」

何か掴めそうで、掴めない感覚にイライラする九条。

「……体動かすか。」

とりあえず、発散させつつ考えることに。

休憩を終えて再び修行を開始した。

それからしばらく経って、



「はかどってるか?」

九条が修行をしているところへ、ブラリと呑気な調子でダイルが現れた。

「……いまいち。」

声をかけられて集中が乱れた九条は、休憩を取ることにした。

「なんだよ〜、麻衣たんなんか、手数が倍にはなったって言ってたぜ?」

「マジかよ!?」

「この前手に入れたやつが、かなり使える感じだってよ。上げるんじゃなかったなー。」

そう言って、豪快に笑うダイル。

内心は麻衣に上げてよかったと思っている。

自分では上手く活用出来ずに、結局売り払っていただろうから。

「ははっ、泣き言言ってる暇は無いな。早く技を身に付けないと、麻衣たんに置いていかれるぜ。」

「頑張れよ!」

九条の肩をバシバシと叩くダイル。

「いや、お前も修行しろよ。」

冷静に突っ込む九条。

ダイルは笑みを浮かべたまま、

「俺はいいや〜。」

諦めの混じった口調でそう言った。

「はぁ?何言ってんだよ?」

サボりかよ、と思った九条だったが、ダイルの表情と雰囲気で違うことに気付く。

「ん〜、なんていうか限界?レベルを上げればまだマシなんだろうけど、基本能力が劣ってるからさー。なかなか新しいことは身に付かないんだな〜。」

だから新技とか無理、と言うダイル。

「……そうか。」

『勇者』と、この世界の住人の差。

まるで、戦うために存在するかのように、砂漠へ染み込む水のように、戦い方を吸収していく『勇者』達。

ダイルはそれが羨ましくもあり、怖くもあった。

「まぁ、頑張ってはみるけどな。覚えが悪くとも、絶対身に付かないとかじゃ無いし。」

不安を吹っ飛ばそうと笑うダイルの姿。

「…まぁ、頑張れ。」

九条はそんな友の姿を見たくなくて、明後日の方を向いて言葉をかけたのだった……。





あとがきっぽいもの。
作者「短め。」
麻衣「ですね。」
作者「まぁ、余談だから。」
麻衣「そうですねー。」
作者「それはそうと、ゆかりを蘇生するための縁への代償のことですが。」
麻衣「なんですか?」
作者「代償が生ぬるいと言われました。」
麻衣「えーと、少なくとも縁さんは帰れませんよね?元の世界に。」
作者「うむ。他にもあるんだけど、第3章で書くか、次のノベル更新をその内容にするか迷ってる。」
麻衣「『魔王の目』ですもんねー。」
作者「闇の塊っすよ。生ぬるい代償のわけがないぜー。」
               おわり



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