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なにげなく空を見上げる。

眩しくて、目の前に手をかざした。

ここは太陽が近い。

空中都市トリオン。

僕達はもう1ヶ月も、ここで戦っている。

「光騎?どうかしたのか?」

聖騎士の鎧を纏ったソフィアちゃんが、騎士隊の隊長達との打ち合わせを終えて、隣りにやってきた。

「なんでもないよ。ちょっと、ぼーっとしてただけ。」

本当はちょっと考え事をしていた。

1週間程前、聖都と呼ばれるリプルが、魔王率いるモンスターの大群に襲われた。

人口の半分が喪われたという甚大な被害を出したらしい。

そして、つい先日そのリプルから使者がやってきた。

『勇者』を集めていると。

『勇者』を集めて、魔王を討つのだと。

確かに、それを決意させるだけの被害を出したのだろう。

僕達、『勇者』が力を合わせて魔王を討つのは道理に適っている。

だけど、トリオンの人々を放っておけない。

ほぼ毎日のようにモンスターの襲撃があるから、離れるわけにはいかないのだ。

それに、もし、次に魔王に襲われるのがここだったら?

僕達だけでは無理かもしれない。

だからといって逃げ出すわけにはいかない。

例え、その考えが『勇者』として植え付けられたものだとしても。

この世界に召喚され、この世界に適応出来るよう修正力が働く。

それならいっそ、何も疑問抱かずに戦えるようにすればいいのに。

よくわからない慈悲めいたものなのか、欠陥命令なのか。

なにはともあれ、僕は僕の守りたい人達のために全力を尽くすのである。

腰に差したありふれた剣に触れる。

勇者の剣は、使う時にだけ具現するようにした。

ソフィアちゃん曰く、切り札は隠しておくものだそうだ。

「光騎?もしかして、疲れてるんじゃないのか?」

不意にソフィアちゃんが僕の顔を覗きこみ、視界一杯に心配そうな顔が。

「そんなことないと思うんだけど……。」

でも、今の少し感傷的な気分は、疲れているから起こっているのかもしれない。

「無理はしなくていいぞ?その辺りで休んでいるといい。今日はモンスターが現れていないようだし……。」

と、言葉の途中で騎士隊の隊長さんの一人がソフィアちゃんに耳打ちした。

綺麗な形の眉をひそめるソフィアちゃん。

何かあったのかな?

「光騎、モンスター共に何か動きがあるようだ。ここで待っていてくれ。」

尋ねようと思ったら、慌ただしくソフィアちゃん達が動き始めた。

「僕もいくよ!」

「いや、光騎は待機していてくれ。何かあった時にすぐ対応出来るようにな。」

一部の騎士隊を率いてソフィアちゃんが駆けてゆく。

偵察隊と合流するみたいだ。

雰囲気からするとただ事ではない気配。

背中に見えない不安が覆い被さる感じ。

やけに静かで不気味過ぎる。

……あぁ、きっとこれが嵐の前の静けさってやつなんだ。

これから起こるのは、とてつもなく嫌な事ばかりに違いない。

それは嫌だ。

少しでも嫌な事を和らげるために、僕はどうすればいいのだろう?

「……行動するしかないさ。」

グッ、と拳を握ってこの胸に決意を。

『勇者』らしく、勇ましくありたい。

「と言っても、待機しておかないと……。」

ままならないものだ。

騎士隊長さんの現状報告を聞き、引き続き警戒するように指示。

んー、やっぱり上の立場に立つのは苦手だ。

委員長とかもやったこと無いし。

まぁ、そういうのとはちょっと違うんだろうけど。

思考に耽っていると、不意にピリピリとした空気が首筋を焦がす。

なんだろう?この不快感。

気持ち悪い。

耐えられないほどでは無いけど、新鮮な空気が恋しくなる。

今、一体、トリオンに、何が?

なにげなく空を見上げる。

真上には手をかざしたくなる眩しい輝きが。

そして、遠くの空には絶望を連想させる色。

黒、黒、黒。

トリオンの四方を囲むように、空を覆い尽くす闇が迫っていた。

「……あぁ……。」

戦いが始まるんだ。

それを自覚した瞬間、僕は走り出す。

騎士隊長さんには、臨機応変に対応するよう叫ぶ。

きっと時間との勝負。

恐らく、あの訳のわからない闇の軍団に、トリオンの勢力では耐えきれない。

何か劇的な打開策が必要なはず。

その鍵を握るのは、『勇者』である僕。

現在、レベル4。

『勇者の武具』のスロットが一つだけ空いている。

もしかしたら、温存のために戦うことを禁じられるかもしれない。

一人だけ安全なところにいる訳にはいかないが、切り札には違いないのだ。

自分の意志に反していたとしても、多くの人を助けるためには仕方ないと思う。

とにかく、皆と合流しなければ!

トリオンの石畳みの路を駆ける。

心臓の悲鳴は無視。

人々の悲鳴を聞くぐらいなら何倍もマシだ!



あとがきっぽいもの。
作者「光騎シナリオ、最高潮に向けて出発進行しましたよ〜。」
麻衣「光騎さん頑張って下さい!」
作者「で、この辺で時系列について、ちょっくら整理をしてみようかと。」
麻衣「えーと、アップの順番がなにげに時系列通りじゃないんですよね?」
作者「うむ。縁達のシナリオ→麻衣達のシナリオ→光騎達のシナリオの順なのだよ。」
麻衣「私達が倒した『闇の巨人』は、リプルが魔王達に攻撃されたのが原因で発生したんですね。」
作者「そ。ちなみに隊長が倒した『闇の巨人』は、それの小さい版な。充分でかいが。」
麻衣「私達、けっこう苦労したのに楽々倒してましたよね・・・。」
作者「レベルの差があるからね。あと、魔王よりは格段に弱い。」(にやり)
麻衣「これからの戦いが非常に不安です・・・。」
おわり



お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)


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