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光騎の駆る零式が空を縦横無尽に舞う。

excaliburを振り回し、空を覆うモンスターを狩り続ける。

モニターに映るいくつもの標的を冷静に見定め、斬る。

時には蹴り墜とし、殴り散らす。

機体の軋みを感じながら、自分の身体を動かすようにして操る。

『光騎さん、3体抜けていきました!』

「わかった。」

各部の風の魔石と、脚部のスラスターを噴かすと空中を蹴るようにして軽やかに反転。

そして3体を素早くロックオンすると、頭部バルカンを斉射。

砕け散ったのを確認すると、再び空の魔物共を斬り裂く。

空を駆ける巨人は、未だトリオンに魔物共を取り付かせてはいなかった。

『なかなか減りませんね。』

AIは撃破した数をカウントしながら、辟易したように言った。

それにしても良く出来た人工知能だなぁ、と思いながらモニターから目を反らさず光騎は頷いた。

『マナ・エンジンは好調ですから、エネルギー切れを起こすことは無いです。

でも、このまま戦い続けるとなると、機体のほうが持ちませんよ。』

マナ・エンジンはあらゆる場所からマナ(魔力)を取り出しエネルギーへと変えるエンジン。

世界に魔力がある限り動き続ける永久機関。

しかし、機体のほうは違う。

元の世界で激戦をくぐり抜け、損傷したままでこの世界に召喚された。

零式を修理するような技術が無いこの世界では、だましだまし使っていくしかない。

『本格的なオーバーホールをしないと、近いうちに動かなくなります。』

その言葉は、零式の未来は朽ち果てるということと同じ意味。

なぜならオーバーホールなんて出来るわけないから。

「……それでも、今を何とかしなきゃいけないんだ。」

excaliburを振るう。

まとめて何体かの魔物が両断された。

頭部バルカンが火を噴き、散らす。

一騎当千の力。

光騎はかすかに聞こえてくる、零式の悲鳴を無視して戦い続けた。



敵からのダメージは無かった。

しかし、excaliburを振るたびに痛む機体。

AIが表示した機体の損傷度を見て、奥歯を噛みしめる光騎。

「……せめて、北部の魔物を全滅させるまでは!」

機体のあちこちに付着した魔物の血液が、まるで零式から溢れでたようになっていた。

『光騎さん!高速に接近する魔物が!』

メインカメラが辛うじて捉えた魔物の姿。

AIの処理で、解析拡大された姿がモニターに表示された。

「……見たことない。いや、前にソフィアちゃん達と倒したデーモンに似ている。」

デーモンは高速で零式の背後に周り込み、翼から風の魔術を放つ。

風の刃が零式の装甲を削る。

「愛ちゃん!損傷具合は!?」

『大したことありません!』

光騎の問いにすぐさま答えるAI。

反転すると、デーモンは空中に止まって様子を伺っていた。

『ふむ、硬いな。』

そう呟くと、作戦が決まったのか、身を翻して速度を上げて飛ぶ。

『数発食らったところで、支障はありませんが、何度もやられると危険です。』

AIの忠告に頷くも、デーモンの動きについていけなかった。

「くっ!速い!」

必死で機体を操る。

しかし、圧倒的な敏捷さとサイズの小ささがデーモンを強敵にしていた。

風の刃が装甲を削ぎ落とす。

デーモンに翻弄されながら、光騎は打開策を考えた。

『零式だと死角が多すぎますねぇ……。』

AIの呟き。

「……死角。」

光騎はAIの言葉に作戦を閃いた。

「まずは奴の動きを止めないといけない。」

『そうですね。』

話している間にも攻撃は続く。

肩を撫でるように風の刃がかすめていった。

「肉を斬らせて骨を断つだ。零式のどこかを奴に破壊させる。」

頭部バルカン斉射。

デーモンに当たらず、遠巻きに戦いを観ていた魔物が砕けた。

頭部バルカン、残弾ゼロ。

この世界で補充することは出来ない。

零式の武装はexcaliburのみである。

光騎はニヤリッと笑った。

『まさか頭部を?』

信じられないというAIの問いかけ。

「うん。デーモンって頭良いからさ、頭部ぐらい破壊されないと動きを止めないと思うんだ。」

『でもでも、センサー類を無くすことになるんですけど……。』

「仕方ないよ。あいつを通すことになるよりはマシさ。」

かなり高位のデーモンであると判断した光騎は、多少の犠牲を出しても、今ここで倒すことに決めた。

「聖ちゃん。あのデーモンの速度って魔術だよね?」

『うむ。風を纏っておる。風の結界に風を詰めて吹き出し、加速している。

さしづめ、風の悪魔といったところか。

ついでに、対物理、対魔術結界も張っているぞ。』

「なるほど、うってつけだ。ありがとう、聖ちゃん。」

excaliburに礼を言うと、光騎は自分の考えた案を二人に伝えた。

『わかりました!』

『了解じゃ。』

二人の返事に満足すると、光騎は空を疾走するデーモンを睨みつけた。

「さぁ、反撃の時間だ!」



あとがきっぽいもの。

作者「続きは明日かもねー。」

麻衣「頑張って光騎さん!」

おわり



お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)


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