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「……妙だなぁー。」

淡々と魔物を斬り捨てながら、輝は何か違和感を感じていた。

圧倒的な量の魔物の数である。

トリオンの戦力ではギリギリの戦い。

「いや、それがおかしいのか。……なぜ戦えてるんだ?」

血しぶきが降りかかるのを、テンペストから発せられる風で吹き飛ばす。

軽く断末魔を聞き流して、思考を続けた。

(出し惜しみをしている感じじゃない。だけど、わざと拮抗状態にしている気がする。)

キメラのブレス攻撃を風で打ち消し、首を両断。

打ち出す風で体勢を崩させ胸を突き、殺す。

思うがままに蹂躙していると、そこらにいる魔物のどれよりも濃い殺気を放つものが輝に接近していた。

「……デーモン?」

翼のある悪鬼。

高い魔力、高い知性、全てのステータスが平均以上の魔物。

『死んでいただく。』

無表情で腕を振るう。

一瞬で魔法陣が形成されると、いくつもの鋭い氷が打ち出された。

風を切り裂いて、輝に迫る氷撃。

「氷といえば、まだコキュートスを回収してないなぁー。」

呑気にそう呟く輝。

纏う風を増やし、氷撃の向きを反らして回避した。

『……風を操る魔剣ですか。厄介ですね。』

目を細めて値踏みするような視線を送る氷のデーモン。

輝はとりあえず、相手の出方を伺うことにした。

(話せる奴っぽいし、ちょっとは狙いが分かるかもだからねー。)

テンペストをクルクルと回して余裕の笑みを浮かべた。

『次はそう簡単にはいきませんよ?』

デーモンは自らの闇を取り出し、それを氷の魔法陣に垂らした。

透き通った水色の魔法陣が、黒く澱む。

『黒氷撃』

さっきよりも巨大な氷の塊が打ち出された。

さっきとは大きさだけではなく、色も違う。

禍々しい黒い色の氷。

「おっと、それは手を抜けない。」

氷を風で相殺することは出来るが、闇を打ち消すことは出来ない。

空を蹴って、距離を取りつつ風の斬撃を繰り出す。

ほぼ闇属性に変換された氷の、残った氷属性の部分を削り切った。

「剣が丘発動。」

輝は魔剣の保管庫の中から、闇に対抗しうる魔剣を抜き放った。

「さぁ、いこうか、ゴッズレイジ。」

右手にテンペスト、左手にゴッズレイジを構えた輝。

金と白の美しい装飾。

神々しいオーラを放っていた。

そしてゴッズレイジを振り抜く。

光の斬撃。

黒氷撃と光の斬撃はぶつかり相殺された。

『……光属性の魔剣。そんな隠し玉があるとは。』

無表情。

しかし、そこにはかすかに動揺が見られた。

「あははっ、これぐらいで驚いてちゃダメだよ。」

ゴッズレイジを収納。

次に現れたのは炎の魔剣インフェルノ。

燃え盛るような赤色。

再びを風を蹴り加速。

地を走るよりも速く距離を詰める輝に、デーモンはあたふたと後退する。

「くらえ、炎の渦!」

テンペストとインフェルノが同時に力を発揮した。

竜巻の中で炎が螺旋を描く。

『おおぉぉおお!?』

デーモンは氷の障壁を出現させるが、到底防御しきれず、炎の渦に飲み込まれていった。

風の刃で肌を斬り、炎が肌を焼き、ただれさせた。

肺を焦がし、ズタズタになった翼は飛べるかどうかあやしい。

「さて、まだ生きてるかな?」

炎の渦が収まると、力無く落下し始めるデーモン。

輝はテンペストから風を起こすと、デーモンの手首、足首に巻きつけた。

空中に磔となる。

『……くっ。』

うめき声をあげるデーモンを、感慨も無く眺めてインフェルノを収納する。

代わりに取り出したのは、黒く歪んだ魔剣。

「あんまり使いたくないんだけどね、この拷問剣。」

魔剣・拷問剣。

対象に傷一つ与えず、死なない程度、気がふれない程度の痛みを与える魔剣。

迷い無くデーモンの胸に突き刺した。

『があぁっ!?』

全身に響く痛み。

砕け散ってしまいそうな痛みだが、気を失うことも出来ない。

グサッ。

血管を引き千切られたかのようなおぞましい痛み。

グサッ。

ありとあらゆる場所の皮を剥がされて、炎で焙られたような痛み。

グサッ。

心臓を握られながら、水底に引きずりこまれる感覚。

『うあぁあぁぁ!?』

悲鳴を上げるデーモンを見下ろす輝。

「なまじ高等な魔物だけに、拷問は有効みたいだね。うーん、もしかして魔王の使徒?」

デーモンの胸から拷問剣を抜いて尋ねた。

『……。』

無言。

グサッ。

『……っ!』

「質問に答えなよ。」

グサッ。

グサッ。

『……かはっ!』

「ねぇ、早く。」

グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ 

グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ 

グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ 

グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ グサッ 

デーモンとはいえ、この拷問に耐えられるはずもなく、激しい痛みの前に屈伏した。

『……我らは魔王の使徒だ。』

「何しにきたの?」

『……トリオンを墜としにきた。』

「君達が魔王に与えられた命令は?」

『……勇者の抹殺、及び、足止めだ。』

「……ふーん。浮遊装置を狙ってると見せかけて、エネルギー供給装置を狙っているわけか。」

『……そうだ。』

「別動隊がいる?いや、もしかして……。」

『……おそらく、おまえが思った通りだ。』

輝は瞬時にデーモンをバラバラに斬り刻んで殺すと、疾風の如く空を駆けた。

嫌な予感。

いや、それは確信となった。

「まずいな。間に合うか?」

輝はこの状況を理解した。

いまだ戦いが上手くいっている理由。

それはまさしく魔王の思惑通りで、視線を外に向けるためのもの。

(外の迎撃に戦力を集めさせ、内の守りを手薄にさせるのが目的。

そして、内に攻め込んでくるのは単体で最強のモノ。それは……。)

密かに入りこんだであろう強大な闇の存在。

「魔王直々とは、やってくれる!」

輝はエネルギー供給装置のある城の地下へと向かった……。



あとがきっぽいもの。
作者「今日は大学初日ということで、どの授業は早く終わるのですよ。」
麻衣「何をしてたんですか?」
作者「まぁ、執筆ですな。今週はけっこう進みそうだ。」
麻衣「そういえば、BRAVE HEARTって執筆始めてから一年経ったのでは?」
作者「……おぉう!?そういやそうだ。」
麻衣「ちゃんと続いてますね〜。」
作者「うむ。この調子でエンディングまで書き続けるぜ!……いつまでかかるかわからんが。」
麻衣「ぜひ頑張りましょう!」
                おわり



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