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「騎士隊、前へ!」

ソフィアの号令の元、狙撃組を突破しトリオンに取り付いた魔物達へと突撃してゆく騎士隊。

怒号の中で、美綺が戦乙女の歌と踊りで戦いを繰り広げる味方を鼓舞する。

そして、戦場を駆け抜け魔物を蹴散らすのはグリフィンの背にまたがる眞彩。

戦場の華が咲き誇る中で、トリオンの兵士達の戦意は決して低くなかった。

「……かといって、有利なわけでもない。」

指揮本部で冷静に戦況を分析するソフィア。

拮抗状態。

どう考えても五分と五分の戦い。

このまま戦い続けるとなると、体力で劣る人間側が不利になるのは明確であった。

(何か、劇的に戦況を変える打開策はないのか?)

刻一刻と戦況が移り変わる中、各部隊に指示を出しつつ思考を張り巡らせる。

「ソフィアちゃ〜ん。ちょっと休憩するね。喉カラカラ〜。」

味方を歌と踊りで援護していた美綺。

一旦援護を中断し、休息を取る。

ソフィアは頷いて、水袋を手渡した。

喉を鳴らしてそれを飲む美綺。

「良くも悪くもない状況ってとこ?」

美綺は本部から見渡せる戦場を眺めて感想を述べた。

「そうですね。なんとかしないと、崩れる時は一気に崩れるでしょう。」

苦々しい表情で未来を予測する。

椅子に腰かけた美綺は足をブラブラとさせながら、

「光ちゃん辺りが駆け付けてくれたら戦況は変わるんだろうけどねー。

頼りすぎもどうかと思うけどさ〜。」

苦笑いを浮かべて美綺は言った。

「東部は早々と決着がついたようですよ。

伝令によると、たった一人で東部の魔物を撃退し城の方へ向かったようです。目的は不明ですが。」

「一体誰なの?確か、輝って人でしょ?やっぱり勇者?」

尋ねる美綺に、ソフィアは気が乗らないといった感じで口を開いた。

「……元、勇者です。以前は比較的真面目に勇者をやっていましたが、

ある時を境に目的のためには手段を選ばない男になりました。

あの胡散臭い笑顔は完全に演技です。」

何かあったのかと言わんばかりに、輝への不快感を言い表すソフィア。

(ん〜、会ったことないから、どうコメントしていいやら……。)

ポリポリと頬をかきながら、聞き役に徹する美綺。

「今回トリオンの防衛に現れたのも、何か目的あってのことでしょう。

トリオンのために現れたとは考えられません。」

「……そ、そうなんだぁー。」

曖昧な返事をしつつ、まだ見ぬ輝に軽く同情する美綺なのであった。

「む、剣に執着しているようでしたから、

もしかすると、excaliburが狙いかもしれませんね。光騎が危ないかも。」

「なぬ?それは聞き捨てなりませんなー。」

鋭いソフィア。

既に検分は終わっているのだが、輝のトリオン来訪の目的を見破っていた。

美綺は光騎に危険が及ぶというのならば、躊躇いも無くブラックリストに輝の名前を書き込むのである。

「とりあえず、この戦いが終われば光騎を24時間体制でガードしようと思います!」

「さんせー!」

人知れず敵を増やした輝。

たぶん今日は厄日である。

「報告します!」

二人が結託しているところに伝令が駆け込んできた。

「何か新しい動きがあったのか?」

「はい!かなり高位と思われるデーモンが現れました!炎の魔術を操り狙撃隊を攻撃しています!」

「……デーモンが現れたのか。」

拮抗状態を崩す可能性のある存在が投入された。

内心の動揺を、表に出さぬように対策を考えるソフィア。

(……一般兵士には荷が重い相手だ。ならばここは……。)

白いマントを翻す。

透き通った金髪をなびかせ、凛々しい表情。

「私が出る!」

隊長格の一人に指揮を任せると、伝令を伴い現場へと走り出した。

「頑張ってね、ソフィアちゃん!」

美綺の声援に手を振って応えるソフィア。

それを見送った美綺は椅子から立ち上がり、軽く伸びをした。

「よっし!私も頑張るぞっと!」

軽く頬を叩いて気合を込めた美綺は、自分の戦場へと向かった。

「サモン・氷の壁!」

炎の玉を防ぐために、召喚陣から5、6メートルの高さはある氷の壁が次々と召喚された。

眞彩はグリフィンの背にまたがり、回避行動を取りつつ味方の援護をしていた。

『ひゃひゃひゃひゃ!いつまで保つかな?』

下品な笑い声を上げながら、炎の魔術を遠慮なしに打ち出すデーモン。

狙撃隊の弓や魔術での攻撃は、デーモンの炎の障壁の前に為す術も無かった。

ただ援護が来るまで粘ることしか出来ない。

「あ〜ん!お兄ちゃんの炎無効化の盾があれば楽勝なのに〜!」

悔しそうに足をバタつかせる眞彩。

グリフィンがキュルルル〜、と鳴いて眞彩をなぐさめた。

「この場にいないものは仕方ない。私達でなんとかしよう。」

白銀の鎧に身を包んだ凛々しい人。

ソフィアが現場に駆け付けた。

「ソフィアさん!待ってましたぁ〜♪」

グリフィンをソフィアの方へ向ける。

『援軍かぁ〜?俺を楽しませてくれるんだろうなぁ〜?』

ニタニタと笑いながら翼をはためかせて滞空するデーモン。

「ふむ。どうにかして引きずり下ろさなければならないか?」

伝令を退かせて空のデーモンを睨みつける。

傍らの眞彩も一緒に考えた。

そして、すぐさまポンッと手を打った。

どうやら名案が浮かんだらしい。

「あっ、じゃあこっちから行きましょう!」

「?」

眞彩からの説明が無いので、なんとも言えないソフィア。

とりあえず、眞彩にまかせてみることに。

精神を集中して召喚陣を展開する眞彩。

扉が開いて光が溢れでる。

「サモン・ペガサス!」

召喚陣から現れたのは、雪のように真っ白な体躯で翼を持つ馬。

「攻撃能力はほとんど無いけど、グリフィンよりも機動力は上だから。ソフィアさん頑張ってね!」

さぁ、どうぞ!とペガサスを差し出す眞彩。

「いや、ペガサスって乗ったことないんだけど……。」

ちょっとハイになってる眞彩とは対照的に戸惑いの表情を浮かべるソフィア。

居るところにはたくさん居るのだが、目にしたのは初めてだったらしい。

いきなり目の前に喚ばれたので、ただ驚く。

「ソフィアさんにはペガサスが似合うかな、って思ったんだー♪」

無邪気に笑う眞彩。

「そ、そうなのか。礼を言う……。」

そう言われて悪い気はしない。

少しだけ頬を赤らめ、ペガサスが差し出した背中にヒラリと軽やかに乗った。

何故か手綱や鞍が付いていたが、今は気にしないことにした。

『ひゃはっ!空中戦でもおっぱじめようってか!いいぜぇ!かかってこいよぉ!』

チリチリと火を吹きながら楽しげに叫ぶ。

ソフィアと眞彩は目を合わせると同時に手綱を操った。

そして、地を駆け加速。

翼を広げ、雄大な空へと舞い上がった……。



あとがきっぽいもの。
作者「召喚士は自分のレベルまでの、この世界にあるものを召喚することが出来ます。」
麻衣「氷の壁もどこかにあるんですか?」
作者「一応、氷結大陸にある設定。そこが出てくる話を書くかどうかは未定だけど。」
麻衣「召喚士って、かなり強くないですか?」
作者「・・・かもしんない。」
               おわり



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