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『お前達、手を出すなよ?俺の獲物だ!』

炎のデーモンは凶悪な笑みを浮かべ、周りの魔物達へと命令した。

ギャーギャーと不満の声を上げる魔物を燃やし尽くして、ペガサスを駆るソフィアとグリフィンを駆る眞彩に対峙する。

「余裕だな。なめられたものだ。」

腰の剣を抜き放って構えるソフィア。

聖なる加護をうけたその剣は、闇に属する魔物に対して有効な武装である。

「眞彩は後ろから援護するから、ソフィアちゃん頑張ってね〜♪」

グリフィンの上から激を飛ばす眞彩。

『くらいやがれ!』

デーモンは両手に炎を生み出すと、二人に向けて放った。

炎の玉は正確に二人へと迫る。

「炎の防護円!」

ソフィアは、炎から身を守る奇跡を紡ぎ出した。

デーモンの放った炎は防護円へとぶつかり打ち消される。

同時にペガサスを操って空を駆け出す。

剣をデーモンへと向け斬りかかった。

「はぁっ!」

気迫のこもった声とともに振られた剣は、デーモンには届かなかった。

思ったよりも身軽なデーモンに舌打ちをしたソフィアは、間合いを計りながらデーモンを睨んだ。

『ひゃはっ!その程度かよ!?』

馬鹿にした態度で言い放つデーモンは、ソフィアを挑発していた。

しかし、冷静なソフィアには通用しない。

「あったまきたー!」

だが、なぜか隣りにいた眞彩がお怒りのご様子。

瞬時に召喚陣を展開。

「サモン・岩!」

かなりアバウトなものを召喚する眞彩。

召喚陣から岩が勢い良く飛び出した。

『ぬっ!?』

さすがに予想外なものが現れたらしく、デーモンは驚きの声をあげた。

だが、造作もなく固めた拳で粉砕する。

『魔力も込められていないただの岩が、この俺に通用するはずがないだろう?』

デーモンは余裕の笑みを浮かべる。

「むぅ……。」

悔しそうな眞彩はへこたれることなく、次の召喚陣を展開させた。

「サモン・魔力のこもった岩!」

眞彩以外はそんなものあるのか?っと怪訝な表情で召喚陣を見ていたら……出てきた。

『ぬおっ!?』

さすがに両手で受け止めたデーモン。

両手の塞がったところへソフィアが斬りかかった。

『甘い!』

そう叫ぶと、抱えた岩をソフィアの方へと向けて盾がわりにした。

はじかれる刃。

「クッ!」

腕の痺れを無視して、距離を取るべく移動。

『おりゃあぁぁ!』

投げつけられた岩を回避して、隙を探るソフィア。

『なかなか面白いことをしてくれるぜ!こっちもいいものを見せてやる!』

こみあげる笑みをそのままに、自らの闇を取り出す。

それは生み出した炎と交ざりあい融けあう。

『黒炎!』

燃え盛る黒炎。

勢い良く振った手から放たれた黒炎が、広範囲に降り注ぐ。

「炎の防護円!」

防護円が展開される。

わずかに黒炎の勢いが弱まったが、黒の暴力が防護円を突破した。

『ひゃはっ!塗り潰されるがいいさ!』

それはそれは愉快だと顔を歪ませて嘲笑う。

「聖なる防護円!」

新たな防護円を紡ぎ出すソフィアは苦痛の表情を浮かべていた。

同時に複数の防護円を展開するのは、容易なことではない。

ましてや、闇を打ち消すとなるとかなりの精神力を使ってしまう。

(……このままでは、防御をしているだけで力尽きてしまう!)

焦燥。

額から一筋の汗が伝い落ちる。

「聖気斬!」

聖なる刃を複数展開。

四方からデーモンへと狙いを定める。

薄ら笑いを浮かべるデーモンは、迫りくる聖なる刃をわざと受け入れた。

炎の障壁が聖なる刃を飲み込み無残させる。

「……力の差が歴然だとでも言うのか。」

「くぅ〜!あいつむかつくーっ!」

悔しそうな表情のソフィアと、ポカポカとグリフィンの背中に八つ当たりをする眞彩。

『なんだ、もう終わりか?所詮、人間はこの程度かぁ〜。』

二人を飽きたオモチャのように見据えた。

(……切り札はある。しかし、それを外せば敗北は必至。何とか隙を作らなければ。)

だが、その方法が思いつかない。

「……眞彩ちゃん、何か奴に隙を作る方法はない?」

「隙?驚くようなことかにゃ?」

「あぁ。ついでにダメージを与えるか、あの障壁を和らげることが出来れば言うことないんだが……。」

ソフィアの言葉を吟味するようにうーん、唸る眞彩。

「あ、そっか。」

なんだ簡単だー、という表情で何かを閃いた様子。

「いけるか?」

「うん。召喚するからちょびっとだけ時間稼ぎしてくれないかなぁ〜?」

「了解した!」

ペガサスの腹をポンッとたたく。

嘶いたペガサスが空を駆けた。

『何を思いついたか知らないが、楽しませてくれるんだろうなぁ?つまらねぇなら殺しちまうぜぇ?』

「戯れ言を!」

素早い突きを放つ。

障壁をわずかに削りとる攻撃。

『ふはっ!やるねぇ!殺すにはもったいないぐらいだ!』

デーモンは炎を纏った爪を振るった。

炎をほと走らせ、ソフィアへと迫る。

「ちっ!」

なんとか回避したものの、かすかに炎が腕を焼いた。

大きく姿勢を傾けながらデーモンの側面を駆けつつ、短剣を投げつける。

デーモンは視線だけを向けて、それを障壁で燃やし尽した。

『はっ!無意味なことを!』

口の端を歪めて嘲笑った。

「いや、そうでもないさ。」

ソフィアがニヤリッと笑う。

デーモンは気配を感じて上空へ顔を向けた。

そこには、召喚陣を完成させた眞彩がいた。

悪戯っ子のような笑顔を浮かべた眞彩は、扉を開いた。

「サモン・お兄ちゃん!」

輝く召喚陣の中を通って現れたのは光騎。

「えぇっ!?」

いきなり空中に投げ出された光騎は、驚きの表情を浮かべている。

「こ、光騎を喚んだのか!?」

まさか光騎を召喚するとは思っていなかったソフィアは、口をポカンと開けている。

「お兄ちゃん!やっつけちゃえ!」

眞彩はシンプルで明確にお願いを伝えた。

「わ、わかった!」

目の前のデーモンを見て瞬時に状況を理解した光騎は、勇者の剣を具現化する。

そして、重力に任せてデーモンへと突っこんだ。

『ただの剣など!』

障壁に力を込める。

しかし、光騎の剣は結界破りの剣。

何の抵抗も無く障壁を斬り裂くと、デーモンの右腕をも斬り落とした。

『なんだとぉ!?』

怒りに任せて炎を紡ぎ出す。

口から炎を吐き出そうとしたところで、光騎が剣を持っていないほうの手をつきだした。

炎がかき消される。

光騎は勇者の盾である炎無効化の盾を展開させたのだ。

炎のデーモンにとって光騎との対決は相性が悪過ぎた。

大きな隙が出来たところへ、ソフィアが踊りでる。

切り札と言える奇跡を紡ぐ。

「聖光剣!」

圧倒的な聖なる光がソフィアの手に集まる。

剣を振るうのと同じ要領で腕を横に振り抜くと、一筋の光が放たれた。

『おぉぉおおおぉぉぉっ!!?』

光騎をすり抜けて、デーモンへと迫る。

横一文字の光が凄まじい勢いで胴体へめり込み、一瞬で上半身と下半身を分断した。

一筋の光が空を走り抜けた。

眞彩は落下する光騎を拾いあげる。

「わーい、お兄ちゃんだぁー♪」

ここぞとばかりに擦り寄る眞彩。

「びっくりしたよ。零式でこっちに向かってたらいきなり目の前が光って、

眩しくなくなったと思ったらデーモンがいるんだから。」

眞彩の頭をポンポンとしながら、笑いかける光騎。

「すまなかったな、光騎。苦戦していてな。いや、まさか光騎を喚ぶとは思っていなかったんだが……。」

ペガサスを操りグリフィンの横に並ぶソフィア。

奇跡の連続使用で少し疲労した様子だった。

「炎を操るデーモンだったから、お兄ちゃん喚べば楽勝だと思ったんだ〜。てへっ♪」

褒めて、褒めて〜、って感じの眞彩。

「うん。仕方ないよ。僕も苦戦したし。あ、北部の敵は撤退していったから。」

「そうか。ご苦労だったな。」

ソフィアが労いの言葉とともに笑顔を浮かべた。

「う、うん。」

その綺麗な笑顔に少し胸が高鳴った光騎。

「う〜。」

眞彩が低く唸っていることには気付かない。

バチッ!

その時、突如として辺りの空気が変わった。

膨れ上がるおぞましい殺気。

三人がそれの方へと振り向くと、上半身のみのデーモンが嘲笑っていた。

『ひゃはっ!ぶひゃはははっ!!』

真っ黒な炎が渦巻く。

それを吸い込みながら身体を震わせる。

「私としたことが!まだ息があったとは!?」

『殺すつもりなら、ちゃんと首をぶった斬らなきゃダメだぜぃ?』

ボコッ、ボコッとデーモンの身体が風船のように膨らむ。

「僕の盾で!」

「ダメだ。アレは炎の属性というよりは、闇の属性だ。聖属性でないと打ち消すことは不可能だ。」

「でも、なんとかしないと!アレはかなり危険な感じがする!」

背中の冷や汗が気持ち悪い。

近づこうにも、完全なる黒色の炎が阻んでいた。

『けへっ!ひゃはっ!道連れにしてやるよ!皆殺しだ!』

並々と注がれたコップが表面張力で溢れ出すのを保っているような状態。

あと少しあの黒い炎を取り込めば、デーモンの身体は破裂するに違いなかった。

「……奴は自爆する気だ。眞彩ちゃん、光騎を送還するんだ。」

「うん、もちろん。」

光騎を中心に送還陣が展開された。

「ちょっと待ってよ!皆を置いてなんかいけない!」

送還陣が輝き始める。

「光騎、よく聞いてくれ。恐らく西部は落ちる。あの様子だと浮遊装置ごと巻き込まれるだろう。

北部と東部が無事なら、城の方へ向かってくれ。

例え南部が落ちたとしても、二つの浮遊装置があればトリオンが墜ちることはない。」

トリオンを頼んだと、ソフィアは言った。

「お兄ちゃん。後はよろしく♪」

ニカッと笑った眞彩は、送還寸前の光騎をギュッと抱き締めた。

「ソフィアちゃんっ!眞彩ちゃんっ!」

送還陣の光に飲み込まれながら二人へと手を伸ばす。

しかし、触れることさえ出来ずに光騎は元いた場所へと還った。

『別れは済んだかよ?ぎゃはっ!イッちまいなっ!!!』

最後の一息。

純粋無垢な暴力が、トリオンの西の空で弾けた。

ドンッ!という腹が破れそうな凄まじい音。

西部へ攻め入ろうとしていた魔物達を巻きこみ、西部の大地をえぐりとる。

前線に立つ兵士達が焼き尽され、為す術も無く散っていった。

後方にいた美綺達のところへ音と熱風が届いた。

「何が起きたの!?」

西の空のドス黒い煙。

とてつもなく嫌な予感がした。

「ソフィアちゃん、眞彩ちゃん……。」

二人の無事を祈ることしか出来ない美綺は、前線の様子を探りにいった偵察隊の帰りを待つのだった……。



あとがきっぽいもの。
作者「いやぁ、盛り上がってきたねー。」
麻衣「わっ、わっ、大変ですよ!」
作者「とりあえず、web拍手の数次第でソフィアと眞彩の命運を左右してみようかな。」
麻衣「要領は縁さんの時と同じですね。」
作者「まぁ、押すだけだから、楽チンさ〜。」
麻衣「ぜひポチポチと!」
作者「ついでにコメントなどございましたらお願いします。」
麻衣「期間は次のノベル更新までですよー。」
作者「推定、日曜かにゃー?」
                おわり



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