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光のトンネルを駆け抜けるイメージ。

実際、走っていたところからの召喚だったため、白の部屋へと体が構成された時、軽く駆け足だった。

「と、とっと。」

地面の無いところからいきなり現れた感じ。

美綺姉達も同じような印象を持ったみたいだった。

「よくぞ来られた、勇者達よ。」

セイドリックさんこと、ガイドが僕達を出迎える。

僕達以外のメンバーも何人かは白の部屋に現れていた。

何か白の部屋に用事があるのだろう。

「さて、用事はなんだね?」

ガイドが尋ねる。

そういえば、美綺姉がクラスチェンジしたい、って言ってたっけ。

「何か楽しそうなクラスってある?」

美綺姉はガイドに尋ねた。

ガイドは以前見た一覧表を取り出す。

そして今回はさらにもう1枚取り出した。

「最初は基本クラスしか選択出来ないが、2回目の召喚からは選択出来るクラスが増えるのだよ。」

2枚の一覧表を受け取る美綺姉。

みんなでそれを覗きこんだ。

「えーと、軽戦士、重戦士、ダンサー、吟遊詩人、召喚士、魔物使い、鑑定士……。」

美綺姉は頷きながらじっくり吟味しているようだ。

「眞彩も変えちゃおっかなぁ〜♪」

キラキラした好奇心旺盛な瞳で眞彩ちゃんが言った。

「眞彩ちゃんは神官戦士だったよね。」

「うん。なんだかパッとしないから変えちゃおうと思う〜。」

美綺姉と眞彩ちゃんは仲良く自分達のクラスを選んでいた。

「奏歌ちゃんは変えないの?奏歌ちゃんも神官戦士だったよね。」

「私はこのままで。癒し手がいないとダメでしょ?」

奏歌ちゃんは生真面目な言葉を返した。

奏歌ちゃんは一番真面目に皆のことを考えてるのかもしれない。委員長タイプ?

「麻衣ちゃんは変えるんだっけ?」

この前そんなことを言っていたのを思い出した。

「コキュートスを使うために軽戦士にクラスチェンジしたほうがいいみたいなんです。」

リーアさんに助言されたらしい。

麻衣ちゃんはおとなしい子だけど責任感が強くて、自分に出来ることなら、全力でやり遂げようと頑張る。

頑張り過ぎて責任感に押し潰されてしまわないか心配になった。

「麻衣ちゃん、無理したらダメだよ?」

僕がそう声をかけると、麻衣ちゃんはパッと表情を和らげた。

「大丈夫です。私、こうみえてけっこう頑丈なんですよ?」

両手を握りしめてガッツポーズをする麻衣ちゃん。

健気というか、頑張り屋さんというか、本当に無茶しないで、怪我とかして欲しくないと思った。

「よーし、あたしこれに決めた〜♪」

「眞彩も決めたよ♪」

二人の声のほうを向くと、どれにクラスチェンジするか決まったようだ。

「何にするの?」

美綺姉・魔術師→ダンサー(歌)

眞彩・神官戦士→召喚士

麻衣・アーチャー→軽戦士

そんな感じに決まったようだ。

「ところでガイドさんに質問があります。」

「なんだね?」

「クラスチェンジすると以前のクラスはどうなるんですか?」

クラスチェンジに関するメリットとデメリットが分からない。

ノリで美綺姉達はクラスチェンジしているが、その辺把握しておくべきだったんじゃないだろうか?

「うむ。まずクラスチェンジはやっておいて損は無いのだよ。麻衣君、君を例に説明してみようか。」

麻衣ちゃんがコクコクと頷く。

「君は存在力を見る限り、レベル4だね。ということはアーチャーのレベルが4だったということだ。そして今回、軽戦士にクラスチェンジをした。そうすると、軽戦士がレベル4になる。そこで以前のクラスはレベルが半減する。アーチャーのレベルが2になるということだ。だから今の君は、軽戦士レベル4のアーチャーレベル2になる。」

「クラスチェンジ後はクラスチェンジ前のクラスのレベルが半減するということ?」

奏歌ちゃんが要約して尋ねた。

「そうだ。ついでに言えば端数切り捨てのルールになっている。」

ガイドが付け加える。

じゃあ、レベル3でクラスチェンジするのってもったいないかもしれないなぁ。

クラスチェンジ前のクラスのレベルが1になるんだから。

「クラスチェンジ前のクラスの技能もレベルが半減するが扱えるということだ。レベルによる修正がかからないものは、そのまま受け継がれる。アーチャーからのクラスチェンジならば、軽戦士になっても『鷹の目』の特殊技能が受け継がれているはずだ。」

「うわ、なんかすごいお得な気がする。」

美綺姉が羨ましそうな声を上げる。

「クラスチェンジは一度目の召喚から生きて帰ることが出来た恩恵だと思ってくれればいい。」

ガイドのその言葉は、生きて帰ることの難しさを語っているようだった。

今回、僕達が早くに帰還出来たのは刀夜君のおかげに違いない。

刀夜君がたった五日で魔王を倒したからこそ、刀夜君のみの犠牲で僕達は帰還することが出来たのだ。

刀夜君のために何か出来ることはないだろうか?

そんなことを考えてるいるうちに、美綺姉や麻衣ちゃんに眞彩ちゃんが、新しい装備を購入していた。

試着室で購入したものに着替える3人。

僕と奏歌ちゃんは並んで着替え終わるのを待っていた。

「お待たせー、終わったよー。」

美綺姉の声と同時にカーテンが開いた。

そこから3人の着替えた姿が現れる。

「ね、光ちゃん。どうかな?」

ヒラヒラとした薄い布で構成された、露出度高めなダンサーの服。

美綺姉が動くたびに薄布がユラユラと動き、まぁ、その、なんていうか、ふっくら柔らかそうな、白いモチモチしたものも揺れていたりするわけで。

「い、いいんじゃないかな……。」

目のやり場に困りつつなんとかそう答えた。

美綺姉はなんだか満足そうに頷いている。

「……えっと、どうですか?光騎さん。」

麻衣ちゃんはヒラヒラした要素は無く、軽鎧と動きやすそうなハーフパンツにしっかりしたブーツをはきこなしていた。

白い外套をはためかせ、腰に下げるのはコキュートス。

「うん、格好いいと思うよ。てか、僕より似合うかも。」

女の子に対して、格好いいというのは褒め言葉になるかどうかわからないけど、僕は思ったことを正直に口にした。

「あ、ありがとうございます……。」

顔を赤らめて、はにかむようにして麻衣ちゃんは言った。

どうやら喜んでくれたらしい。

「お兄ちゃん♪どうどう?似合うかなー?」

フードの付いた魔術士っぽい服。

クルクルッと回って光騎にお披露目する眞彩。

ポニーテールが揺れた。

「うん、眞彩ちゃんによく似合ってるよ。」

光騎の感想を聞くと、わーい、と言って光騎の胸に飛びこむ眞彩だった。

新しい装備、というか衣装の品評会が終わると、ガイドが咳払いをして仕切り直す。

「では、そろそろ各地へ送ろうか。別れは済んだかね?」

その言葉に、僕は麻衣ちゃんのほうを見た。

麻衣ちゃんも僕を見ていた。

「……麻衣ちゃん、その、何て言えばいいのかな……。」

別れと言えば別れに違いないが、別れの言葉を発するのは何か違う気がした。

僕がかける言葉を探していると、少しうつむいていた麻衣ちゃんが顔を上げて微笑んだ。

「また会いましょう、光騎さん。私は必ず会いにいきますから。」

麻衣ちゃんの表情に、心に暖かいものが流れこんできたような気がした。

……あぁ、僕はもっとしっかりしないといけないな……。

「うん、またね麻衣ちゃん。僕も麻衣ちゃんを探すよ。あの世界がどれだけ広くても。」

麻衣ちゃんの両手を取って、お互いの熱を交換するかのようにしっかりと握った。

その時チカチカと目の奥のほうが白くなる。

移動が始まるようだ。

体が白い粒子になってハラハラとほどけていく。

僕は麻衣ちゃんに微笑みかけた。

麻衣ちゃんは僕に微笑み返した。

そして、世界が白く塗り潰された……。



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