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どこもかしこも激しい戦いが繰り広げられている。

トリオンの南部。

しかし、ここは人間達の有利に戦況が動いていた。

空に羽ばたくモンスターの大群を、次々と打ち墜としてゆく。

「これって、いけんじゃね?」

気軽な調子でいってのける貴人。

「思ってたよりは戦えてる。でも、いつもと比べて数が多いのは確かよね。」

奏歌は剣を振るって魔物の首を落とした。

返り血に顔をしかめながら次の魔物に取り掛かる。

善戦しているとはいえ奏歌達も前に出て戦わなければならないのが現状。

貴人はソフィアが宝物庫から出してきた魔剣と、

弱いながらもあらゆる属性に耐性を持つ鎧を身に付けている。

魔剣の銘は分からないが、多少は魔力がかかっているらしく斬れ味はなかなかのものであった。

ソフィア曰く、

「アナライザーがあればすぐに把握出来るんだが無いものは仕方ない。普通の魔力剣として扱ってくれ。」

ということだそうだ。

一方、奏歌は普通の剣と普通の皮鎧を身に付けている。

神官戦士らしく、聖なる加護を付与して戦いを有利にしていた。

二人は前線で順調に魔物を蹴散らしていた。

『なかなかの猛者がいるようだのぅ!』

上空で腕組みをしながら満足そうに頷くデーモンが一体。

四体のデーモンの中で一番体格が良く、大雑把な印象。

翼をゆったりと動かしてトリオンへと降り立とうとしている。

矢、魔術をそしらぬ顔で弾きながら地に足をつけた。

翼を収納して辺りを見回す。

取り巻く兵士達には目もくれず、貴人と奏歌の方へとズンズン歩いていった。

「……俺達をご指名みたいだな。」

「そうみたいね。とりあえず、他は下がってもらうわ。」

奏歌の指示で狙撃隊、騎士隊が後退する。

魔物側もデーモンの指示で後退した。

『儂は地の魔術を操るデーモンだ。勇者との戦いを望む!』

堂々と言い放つ。

奏歌と貴人は顔を見合わせて、どう対応するか小声でやりとりを始めた。

「……罠?」

「……なんとなく、かなり本気っぽい気がするんだが。」

「勇者って、やっぱり光騎君のことかな?」

「わからんが、召喚された者の『勇者』なんじゃね?」

分からないので尋ねてみた。

「勇者ってクラスのこと?それとも召喚された人のこと?」

『両方可!』

大口開けて、きっぱりと言った。

「……だってよ。」

「私達で倒すしかないんじゃない?」

「そりゃあ、倒せるならそれがいいんだが、あいつ、かなり強いと思うぜ?」

「なんとかするっきゃないでしょ。他の所も忙しいだろうから。」

「いや、全員でリンチすればいいんじゃね?今なら前に出てんのあいつだけだし。」

「それやったら向こうも攻めてくるでしょうが。

見たところ、あいつは指揮官クラスみたいだから、倒せば周りのは逃げてくんじゃない?」

「うーん、それだったら倒しにいく価値はあると思うけどなぁ。実際のとこ、どうよ?」

分からないので尋ねてみた。

「あんたを倒したら、そっちの軍勢は撤退してくれんのか?」

『いいだろう!』

実に漢らしい返事が返ってきた。

「こっちが負けた場合は?」

『ん?決まっている、自動的に皆殺しだ。ガッハッハッー!』

「……あいつ、勝つ気まんまんだぜ。」

「まぁ、所詮はデーモンなわけで、行き着く所は皆殺しなのよ。」

二人は自分達が相手をしないとどうにもならないことに、ため息をついた。

兵士達に、自分達が負ければ防戦に徹しながら後退するよう命じてデーモンと対峙した。

「ようは勝てばいいんだろ?」

首をコキコキと鳴らして気だるげに言った。

「そういうことね。」

剣をスラッと抜く。

デーモンはパンパンッと顔を叩き、鼻息荒く気合を入れていた。

『さぁさぁさぁ!存分に戦おうぞ!』

ググッと腰を落として格好いい四股を踏む。

ズンッ!ズンッ!、と足の裏が地面に降ろされるたびに地面が揺れた。

「……やべぇ、俺、勝てる気がしねぇよ。」

早くも弱気な貴人。

「……うむぅ。」

奏歌も愚痴りたくなった。

『行くぞ!』

律義に宣言してから突進してくる辺り間が抜けているのかスポーツマンシップなのか、いまいちよく分からない。

「早っ!怖っ!」

殺人的な速度と形相が決して後者ではないことを物語る。

二人は左右に別れて、大きく回避した。

十分な距離を開けたつもりでも、凄まじい風圧で態勢を崩しそうになった。

『フハハハッ!この程度は序の口というものよ!』

いちいち声が大きくて耳を塞ぎたくなった二人であった。

「えぇい、こっちからもいくぜ!」

やられっぱなしも性に合わないので、無策で突撃する貴人。

放っておくわけにもいかないので、フォロー出来る位置に移動する奏歌。

微動だにせずに貴人を待ち受けるデーモン。

貴人の鋭い攻撃をその爪で受け止めた。

キィィィィンッ!

「硬ぇなぁ!おい!」

傷一つつけることが出来なかった。

『地の属性持ちは、軒並防御力が高いのは知っておろう?儂はその中でもとびきりだがなぁ。』

快活に笑う姿は気の良いおっちゃんにしか見えないが、

デーモンであることには違いなくて強敵であることを再認識させられた。

「柔らかいところ、もしくは関節狙うしかないみたい。いける?」

「OK、OK。出来るかどうかは別として。」

軽口を言いながら、連係攻撃を取るべく構える。

伊達に一ヶ月以上も組んでいない。

『ほう?』

雰囲気が変わったのを察知したデーモンは、どっしりと構える。

「行きますよっと!」

剣士のクラス一筋でレベルを上げていた貴人の剣技は、光騎はおろかソフィアでも敵わない。

緩急をつけた斬撃が繰り出される。

爪で弾かれながらも、徐々に表面を削り、関節部にもダメージを加える。

デーモンは腕力に任せて拳を打つが、貴人は軽やかにそれを受け流した。

「やぁっ!」

奏歌の聖なる加護を付与した剣が、デーモンを捉える。

大してダメージが無いだろうと己の防御力に頼るが、奏歌の攻撃は肌を焼いた。

『むぅ!?さすがに対応せねばならんか!』

単純に硬いだけでは防御しきれない、属性をついた攻撃ゆえにデーモンは本気を出した。

力を込めた一撃で、貴人を吹っ飛ばすと奏歌へと体を向ける。

『ガァイアクラッシャァァァーッ!』

両手をザクッと石畳みのわずかな隙間に突き刺した。

そして、力任せにひっぺがす。

魔術的要素ゼロの、単なる石つぶてである。

ちょっとばかり、一つ一つ大きいのがミソ。

「避けきれない!?」

後ろに飛びつつ防御をするが、いくつかの石が体に命中し痛みが走る。

思わず倒れてしまったが、受け身を取りつつデーモンから距離を取った。

「うおりゃあぁぁ!」

吹き飛ばしから復帰した貴人が斬りかかる。

『ふんっ!』

重い拳が放たれる。

もはや爪での攻撃をやめて、拳や掌打と剣の戦いになっていた。

(よく見ろ!筋肉の動きを!呼吸を!)

息つく暇の無い戦いの中、デーモンの動きを見極めるべく一瞬も目を反らすことはない。

奏歌は癒しの奇跡を自らに施し、凛と立つ。

『おおぉおぉぉっ!』

ズンッ!と地面がめり込むほどの踏み込みから放たれた掌打が、剣を盾にした貴人ごと吹き飛ばした。

「ぐっ!?」

体が軋む音がした。

受け身も取れずに倒れ込む。

(うあ〜、効いたぜ。肋骨がヤバめ……。)

剣を杖がわりにして立ち上がる。

「ん?」

ふと剣を見てみれば、かすかに亀裂が走っていた。

(……こりゃあ、早めに決着をつけないとなぁ。)

あちこちの痛みを根性で無視した。

奏歌は剣を捨てた。

『んん?もう諦めたのか?』

残念そうな表情。

しかし、奏歌は不敵な笑みを浮かべている。

「まさか。」

デーモンへ向かって走る。

(あー、もう吹っきれた!元々、剣を使う人じゃないしね。とことんやってやろうじゃない!)

奇跡を紡ぐ奏歌。

「聖光!」

『ちっ!?』

聖なる光がデーモンの目をくらませた。

レベルの低い魔物ならば目を焼くことぐらいであれば容易なのだが、

デーモンには目をくらます程度しか効果が及ばない。

(それで十分!)

懐に入り込んだ奏歌はデーモンの腹へ両手を添えた。

一見何の意味も無い行動に思えるが、

『ガハッ!?』

腹に衝撃が起きた。

デーモンの思わず振り回した腕を回避し、距離を置く。

『……何をした?』

腹を押さえてうめくデーモン。

奏歌は拳を構えながら不敵に口を開いた。

「私って神官戦士だけど、本当はモンクの方だったりするの。剣より拳を使うのが得意なわけ。」

聖なる力を身に纏った奏歌の全身がぼんやりと光って見えた。

『ガッハッハッ!そういうことか!聖属性の打撃の衝撃を通したわけか!』

ドス黒い血を吐きながら笑う姿は、かなり不気味であった。

「たたみかける!」

間合いを詰めるべく駆ける奏歌。

デーモンは奏歌へと拳を連打した。

紙一重で避けながら徐々に間合いを詰める。

(一撃喰らっただけで致命傷になりそうだけど、当たらなければいいだけよ!)

滑り込むようにして再びデーモンの懐に入る奏歌。

その腹に手を添える。

『甘い!同じ手は喰わん!』

腹筋に渾身の力を込めるデーモン。

「なっ!?」

ボコボコッと腹がうねり、刺が生えてきた。

反射的に手を離してその場から飛び退くが、刺が射出された。

「させるかっ!」

間に割り込んだ貴人がいくつもの刺を疾風の如き剣技で斬り落とした。

刺が土に還る。

『フハハハッ!間一髪といったところか!もう少しで串刺しになっていたのぉ!』

豪快に笑うデーモンを恨めしげに睨む奏歌。

「危なかったな。」

「……えぇ。まさかあんな隠し玉があるなんてね。」

油断無く構える二人だったが、打つ手が無かった。

(こっちが新しい攻撃を仕掛ければ、すぐにそれに対応してくる。レベルの高い戦いとはこういうものなの?)

額から流れ落ちる汗を舐めて、次の出方を考える奏歌であった……。



あとがきっぽいもの。

作者「次の更新の分はちょっと短くなるかもしんない。」
麻衣「えーと、今回の分で決着をつけるつもりだったんですか?」
作者「うん。一応、明日更新予定ですよ。」
麻衣「ズバズバ書いちゃってください。」
作者「うぃっす。」
    おわり



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