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『もう出し尽くした感じだのぅ?』

二人を眺めて退屈げに問掛けるデーモン。

暇を持て余したのか、軽く体についた埃を払っていた。

「……どうするよ?」

「……何とかするしかないでしょ。刺を出す前に打撃を入れまくることしか思いつかないわ。」

「……勝算は低そうだな。」

貴人は癒しの奇跡で回復してもらったが、全回復というわけにはいかなかった。

(……回復出来ないほどのダメージか。奏歌ちゃんなら喰らったら死ぬかも。)

自分がやらねばならないと改めて決意。

「とりあえず突撃するしかないってね!」

さらに速度を上げて斬りかかった。

フェイントを織り混ぜつつ、目や口、奏歌がわずかに焼いた部分を狙う。

しかし、刃の通らない部分には一切の防御を行わないデーモンは、

貴人の狙う場所のみの攻撃を防ぎダメージを与えさせることは無かった。

「しっ!!」

地を這うような姿勢で駆け寄った奏歌は、高い跳躍でもってデーモンの首に蹴りを叩きこんだ。

『残念だな。単純に力が足りない。』

太い首ゆえに、衝撃を完全に殺していた。

「……見た目は人間と似たような構造だけど中身は違う、ってことか。」

地面に着地して次の攻撃のために移動を開始する奏歌。

(……勁動脈とかの位置が同じなら、少しはやりようがあるんだけどね。)

デーモンは二人同時に相手をしながらも両方に暴風のような攻撃を繰り出してくる。

奏歌は呼吸を整えながら、その嵐の中へ飛び込む。

紙一重でかわしながら一歩一歩着実に間合いを詰めていく。

「それだとさっきの二の舞になるぞ!」

貴人はデーモンの拳を捌きながら叫んだ。

奏歌はそんな貴人にニコッと笑いかけた。

それは覚悟を決めた者の微笑み。

(勝利を掴むためには敗北を恐れてちゃダメなんだよ。例えその敗北=死だとしても!)

じりじりと近付く。

そして、瞬きの間に接近出来る距離へ来た瞬間、再び奏歌は跳躍。

『同じことを!』

デーモンの体の表面がうごめき刺が生成される。

不気味に剥がれた刺は奏歌に向けて射出された。

「地の防護円!」

左手に展開された防護円が刺を阻む。

しかし、結界を削りながらわずかに速度を緩めるものの、その歩みを止めることはない。

(完全に防御出来なくても、一瞬の時間が稼げれば!)

『ぬうっ!?』

腕を振るうデーモンの動きを読んでいた奏歌は軽やかにその腕に手を添え、

少しだけ力を込めて棒高飛びでもするように軽やかに避けた。

そして、そのままの勢いでデーモンのこめかみめがけ、聖なる力を注ぎこんだ掌底を叩き込む。

パンッ!といい音が響いた。

同時にジュッ!、とデーモンの左側の顔がただれて焦げた臭いを漂わせる。

さらに同時に防護円を刺が突破した。

一撃を与えることしか考えていなかった、いや、考えることが出来なかった奏歌へと問答無用に迫る刺。

片目を焼きながらも怯むことなく拳を打ち出してくるデーモン。

それに手一杯の貴人は、奏歌を援護することが出来ない。

「くぅっ!」

振りかかるいくつもの刺を体に受ける。

両腕で防御するが、皮膚を貫き肉をえぐる。

頬を斬り裂き、太股を貫いた。

胴を守ることは出来たが、それでもかなりのダメージを負って崩れ落ちる。

「うおぉぉおぉぉ!」

奏歌の膝から落ちる様を見て、冷静さを失った貴人はひたすらに剣を振るった。

『馬鹿が!』

デーモンの拳が刃の横側を叩く。

一気に亀裂が走った。

「っ!?」

連撃。

反対側からも拳を受けた剣の刃は音を立てて砕け散った。

一瞬、呆然としたところへ豪腕が迫る。

かろうじて左腕を上げて防御するが、軽々と吹き飛ばされた。

腕はあらぬ方向へ捻れている。

「ちくしょおー、痛ぇじゃねぇか……。」

痛む腕にムカついて、半ば怒りがこみあげてきた貴人。

立ち上がって、奏歌の剣が落ちていないか探す。

『……もう飽きた。お前達では役不足だったな。』

明らかな落胆の表情を浮かべて、立ち去る気配をにじませる。

既に次の戦いへと気がいっているデーモン。

(……このまま行かせれば生き残れるかもしれない。だけど、その選択は……。)

「おい、待てよ。」

空元気としか言えないような不敵な笑みを浮かべる。

興味を失った目で貴人を見るデーモン。

「まだ俺は戦える!」

まだ折れることの無い心。

(逃げるって選択肢は性に合わねぇ!)

不屈。

無理はしない主義の貴人であるが、ここは自分を犠牲にしてでも立ち上がるべきだと思った。

そして、そんな燃え盛る炎のような心に応えようとするものがあった。

キィィィンッ、と澄んだ音がしたと思った瞬間、体から力が抜けていく。

「な、なんだぁ!?」

思わず膝がガクッと折れたがなんとか持ち直した。

しかし、激しい脱力感でめまいがする。

そんな貴人の状態に反して、神々しいまでに輝きを放つ存在があった。

『むぅ?なんだその剣は?』

強大な敵と遭遇したかのような表情。

「あぁん?」

デーモンの視線を追って、刀身を失ったはずの剣を見た。

そこには輝く光を刃とした剣があった。

「……魔力剣じゃなかったのかよ。」

嬉しい誤算にニヤリッと笑う。

その輝きはどう考えても聖なる力で、とんでもなく純度の高いものであることが感じられた。

(もし神様が存在するとして、もし隣りに立っていたらこんな感じかもしれない。)

貴人がそう感じるほどに、神聖な輝きであった。

『……触れてすらいないが息苦しい。それは危険だのぉ。』

ゆったりとした口調であるが、目は警戒心を剥き出しにしている。

「行くぜ!」

駆け出す貴人。

デーモンは触れることを危険と考え、刺を射出した。

「効かねぇよ!」

折れた左腕が少し邪魔だったが、片腕だけでも剣速は衰えない。

次々と襲いくる刺を斬り捨てながら前へと進む。

あっという間に距離を詰めた貴人はデーモンへと斬りかかる。

『ぬぅ!?』

硬いはずの腕は豆腐でも斬るようにしてあっさりと断ち斬られた。

「よっし!」

思わず喜びの声をあげた貴人。

しかし、気を抜くと足元がふらついた。

(一秒ごとに力を吸われてる感じだ。こんな神聖な気配を発してんのに、呪われてんじゃねぇか?)

気を引き締めてデーモンを睨みつける貴人。

デーモンは片腕を失いながらも、楽しげに笑っていた。

『ふはっ!ふははははっ!やはり戦いとはこうでないとな!』

「……付き合いきれるか。」

さらなる攻撃を仕掛ける。

刺を射出しながら後退するデーモンには、打つ手無しのように見えた。

しかし、デーモンは魔力を発すると地面へと意識を向けた。

『来い、石の鎧!』

石畳が剥がれてデーモンの体へと集まっていく。

鎧を纏うようにして石を纏ったデーモンは、その体格を倍に膨らませた。

『純粋に地属性のみの鎧だ。闇を払う聖属性の攻撃は、儂の体よりは防いでくれる。』

顔の部分だけを露出させた姿。

「顔狙えばいんじゃねぇの?」

『ガッハッハッ!やってみるがいいさ!』

弱点をさらけだしたところで気にしないのがこのデーモンの性格。

「てか、この剣なら石ごとあんたを斬れるけどな。」

輝く刃が研ぎ澄まされた。

垂れ流しだった光が、意図をもって放出されているイメージ。

貴人は今まで一番速い踏み込みでデーモンに近付くと、目にも止まらぬ速度で滅多斬りにした。

もう一方の片腕が落ちる間に石の鎧が剥がされ、体の至るところから血が噴き出した。

『ガハァッ!!?』

ドス黒い血を吐き出して、膝をつく。

「とどめ……だ!?」

意識が遠のいてゆく。

剣から光は消えた。

体の力が抜けて目の前に地面が迫る。

『ふはっ!残念だったな!』

膝をつきながらも刺を生成し始めた。

「……へっ、後は頼んだぜ、奏歌ちゃん。」

貴人が倒れ込む寸前、密かに自分の傷を治癒してデーモンに隙が出来るのを待っていた奏歌が駆け寄る。

リレーのバトンの受け渡しを行うようにし、刃を失った剣を手にした。

奏歌の力を吸い上げて輝く刃を作り出す。

「死んだふり、ってのもカッコイイもんじゃないけどね!」

刺が放たれる直前、奏歌の振り抜いた剣がデーモンの首を跳ね飛ばした。

弧を描いて宙を舞う。

『ガッハッハッ!我が人生に悔い無しっ!』

最期にそう叫んで息絶えるデーモン。

「……ふぅ。」

デーモンの死を見届けて、やっと一息ついた奏歌。

軽いめまいに襲われたが倒れるほどではなかった。

気を失って倒れている貴人のもとへ行くと、受け身も取れずに倒れたためか頭から石畳に突っ込んでいた。

「うわぁ、痛そ……。」

頭と折れた腕を軽く癒して、後方に待機していた兵士に任せた。

魔物達はデーモンが倒されたのを見て撤退してゆく。

「……とりあえずは、何とかなったかな。……いいとこ取りしちゃった気がするけど。」

他の場所へ援護に行こうと思ったが、少し休憩したかった。

その時、西部で耳をつんざく爆発音が聞こえた。

反射的に振り向いて、爆心地を見る。

「……一体、何が?」

考えるより体が動く。

疲れた体に鞭を打って駆け出した奏歌であった……。



あとがきっぽいもの。
作者「思ったより長くなりました。」
麻衣「やっと東西南北が終りましたね。」
作者「うむ。次は城に向かった人達だー。」
麻衣「輝さんと光騎さんかなー?」
               おわり



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