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剣と剣がぶつかりあい甲高い音が無数にこだまする。

途切れることなく続く攻防。

輝と魔王は、まるで疲れることを知らないかのように刃を交わせていた。

「さすがは魔剣を統べる王、といったところか。剣の腕はたいしたものだな!」

凶悪な笑みを浮かべながら、受けきることの出来ない剣撃をその身で受けとめる魔王。

血を噴き出す代わりにその身の闇が千切れては無残する。

しかし、際限無く隙間を埋める闇が、魔王の存在力の力強さを物語っていた。

「そういう貴方の腕はたいしたことありませんね。」

余裕の笑みを浮かべる輝だが、実はそれほど余裕があるとは思っていなかった。

(不完全とはいえ、魔王は魔王か。例え、全てを出し尽くしたとしても勝てるかどうかわからないな……。)

心の中だけで苦笑。

表情で内心を悟られるようなことはしない。

「クックックッ、我が剣があれば、遅れはとらないのだがなぁ。」

不気味に笑い、闇を撒き散らしながら容赦無く剣撃を繰り出す。

インフェルノの炎が闇を焼く。

それでも闇によって空気が澱むのを阻止することは出来ない。

「……空気が悪いな。風通しが悪いのもあるんだろうけど。」

そう呟いた輝は、一瞬の攻防に力を込めて魔王を引き離す。

そして、かつぐようにしてインフェルノを構えると剣の力を解放した。

「地獄の業火よ、薙ぎ払え!」

炎が生まれる。

何もかも燃やし尽くしてしまえそうな炎が。

通路の酸素を喰らいながら魔王へと迫る。

「ふっ、小賢しい!」

闇を噴出する。

それは空を侵食するようにして収束し、闇の結界を創り出した。

魔王の眼前に展開した闇の防護円が、インフェルノから吐き出された炎を受け止める。

「さすがに打ち消すことは出来んか……。」

魔王が呟くと、炎に押し潰されそうになっていた闇の防護円が傾き始めた。

「逸らすつもりか。上手くやるもんだ。」

輝の言葉通り、傾いた闇の防護円を滑るように炎が天井へと逸れていった。

材質が分からないものとはいえインフェルノの炎に耐えることは出来ず、

ドロドロに溶かしながら炎は天井を突き破っていった。

「……あー、意外と薄いなぁ。」

空いた穴からは空の青を覗くことが出来た。

インフェルノが力を失い、剣が丘に収納される。

すぐさまテンペストを取り出して、澱んだ闇とインフェルノで生じた熱を吹き飛ばす。

「仕切り直しといったところか。」

「そうだね。」

風を纏い、疾風の如き速さで斬撃を魔王へと見舞う。

黒の剣を風に削られながら、それでも絶えることの無い闇。

(その分、この世界のどこかの誰かが泣いているということだ。

生きるもののことごとくが、笑みを絶やすことが無ければ闇は存在しないというのに!)

何度も何度も魔王の体を斬り刻む。

闇が虚空に散りゆく中で、魔王はただ嘲笑っていた。

そんなことをしても無駄だ、とでも言うように。

「それでもやめるわけにはいかないんだ!」

烈風の如き突きで、いくども刺し貫く。

魔王は体を穴だらけにしながらも平然と戦い続け、輝が絶望するのを待っていた。

繰り返しの戦いの中、ふと魔王は剣を振るうのを止めた。

跳躍して距離を取る魔王。

その行動に警戒心を強める輝。

(様子を見たほうがいいか?それとも追撃するべきか?)

一瞬の思考。

さすがに肉体的にも精神的にも疲労を感じ始めていた輝は、前者を選択することにした。

「我も同じことばかりでは退屈でな。魔剣を統べる王よ!光栄に思うがいい、取り戻した力を見せてやろう!」

魔王の周囲に墨汁を垂らしたようにじわりと闇が広がる。

にじんだ闇と闇が繋がり、魔王の体を包み込んでゆく。

黒い鎧を纏う。

獣の王の顔が現れ、低い唸り声をあげた。

黒い翼を纏う。

禍々しい黒い羽が、はらはらと舞い落ちた。

「魔獣王が管理していた力か……。」

苦々しい表情を浮かべる輝。

対照的に喜悦の表情を浮かべる魔王。

「どこぞの勇者が魔獣を統べる王と相討ってくれたおかげで、我はこの力を取り戻すことが出来た。

感謝せねばなるまいなぁ?」

口元を歪ませ嘲笑う。

「命を賭けて相討つなど、全く意味の無いことだ。

『魔王』を倒すのであれば勝利しなければ意味は無い。

勝利出来ないぐらいなら、まだ素直に負けたほうがよかろう?」

輝に同意を求めるように語りかける魔王。

「……あぁ、確かにそうだよ。ヘタに頑張るからややこしいことになったのは事実だ。」

同意せざるを得ないのが真実。

輝に答えに満足そうに頷く魔王。

「でも、ここで貴方を倒せば問題無いさ。同胞の失敗は、同胞がなんとかすればいい。」

テンペストを構える。

輝に応えるように風がうねるように跳ねた。

「……ふっ、勇者とは随分難儀なもののようだ。」

黒い剣を構える。

弾けるようにして闇が虚空を踊り狂った。

そして、再び二人の剣がぶつかった。

暴風と暗黒が荒れ狂い壁を削る。

鎧の獣が黒い炎を吐き出した。

輝は片手にゴッズレイジを取り出して、たやすくかき消す。

「この程度の小細工では効かぬか!」

「デーモンごときの技で倒せるわけがないだろう?」

テンペストを突き刺して闇をえぐり、巻き起こした風で傷を暴く。

ゴッズレイジが触れると、音も立てずに闇は消滅した。

しかし、闇は尽きること無く輝を襲いくる。

大きく広げた翼がはためくと、黒い羽が放たれた。

数え切れない量と、凄まじい速さで迫る。

「ちっ!武御雷!」

ゴッズレイジを収納して、取り出したのは武御雷。

雷を纏う刀を上段に構え、一気に振り下ろした。

「轟雷閃!」

九条が編み出した技とは違うものを放つ。

特大の雷の斬撃が黒い羽を焼きながら魔王の元へと走り抜ける。

「ふははっ!大技ばかり連発してもよいのかな?」

闇の防護円を創り出して、炎と同じように逸らして回避。

あまり広いとはいえない通路。

人外共の戦いに耐えうる構造にはなっていない。

(これ以上は危ないかな?さすがに崩れさせるわけにはいかない。

向こうは関係無しに攻撃をしてくるんだろうけど。)

武御雷を収納してテンペストとゴッズレイジを構える。

ニヤニヤと笑う魔王を相手に攻めあぐねいていると、この地下空間に震動が起こった。

「なっ!?」

上からの衝撃。

何か重いものが降ってきたかのような感じ。

天井に亀裂が走る。

「ふむ。崩れるな。」

魔王は冷静に分析すると、ニヤリと嘲笑う。

輝がどう防ぐかを考え出す前に、亀裂が一気に広がった。

亀裂の間からかすかに入りこむ光が外の光だと認識した瞬間、天井が崩れ落ちた……。



あとがきっぽいもの。
作者「……盛り上がってる?」
麻衣「物凄く不安そうですね。」
作者「ちょっぴり忙しくて、感覚がわけわからんのだよ。ちゃんと書けてるのかなぁ?」
麻衣「そこは読者さんじゃないとわからないでしょう。自分ではこれでいいと思って書いてるんですから。」
作者「自分でもよくわからんのよ……。全力は尽くすけども。」
麻衣「精進あるのみですよ。」
おわり



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