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風が荒れ狂う。

地下であるはずだが、息苦しくなるほどの風が巻き起こっている。

朔夜は白衣をはためかせながら、髪を押さえていた。

「……墜ちるのか。」

小さく呟いた声が、光騎の耳に届く。

「あ、輝さん!」

風に逆らって足を踏み出す。

身体を叩く風に痛みが走る。

顔を腕でかばいながら一歩ずつ進む。

あまりにも強い風。

身体が浮いてしまいそうな気がした。

「来るな。死ぬよ?」

チラリとだけ光騎を見た輝は、光騎へと風の一撃を撃ち込んだ。

「うわっ!?」

吹き飛ばされる光騎。

朔夜の傍まで飛ばされて尻餅をついた。

「大丈夫か!?」

「は、はい、大丈夫です。」

助け起こしてもらう光騎。

もはや、事の成り行きを見ているしか出来なかった。

そして、何もかもを蹴散らしてしまえそうなほどの風が完成した。

「行こうか、テンペスト!激動の螺旋!」

密度の高まった風が、ギシギシと今にも破裂しそうな音を立てている。

渦巻く風、純粋な暴力を内包させた風が放たれた。

動力炉へと、魔王へと向かう道にあるものを薙ぎ払いながら闇を吹き飛ばそうと迫る。

到達した嵐。

そのあぎとが闇を飲み込み、内在するいくつもの螺旋を描く風が闇を削ろうとする。

回転は止まらない。

歯車の隙間に落ちてしまったような闇は、押しつけられ、潰され、ひしゃげて、擦り減ってゆく。

原形を失った動力炉は闇と共に朽ちてゆく、かに見えた。

『……なんだ。その程度か。』

落胆、退屈、冷徹、そんな感情が込められた寒気のする声。

一瞬にして張りつめた空気。

呼吸するのを忘れてしまいそうな緊張感。

嵐の中心に凝縮された黒い点があった。

膨大な魔力。

溢れるに任せた魔力が風とぶつかり、嵐を喰い千切ってゆく。

力を失った嵐は、弱々しいそよ風となってかき消えた。

「……間に合わなかったか……っ!!!」

輝の手からテンペストが消える。

宙に浮かぶ黒い点を、険しい表情で睨みつけていた。

『我を止めることは出来なかったな。動力炉を失った今、トリオンは間もなく墜ちる!』

黒い点が増大する。

内側から押さえていた力が溢れるように、球形へと変化してゆく。

漆黒の珠。

それの表面が波打ち、トプッ、と音を立てて中から手が出てきた。

闇を滴り落としながら羊膜を斬り裂くようにして、魔王が現れる。

動力炉を取り込む前と比べて、内在する魔力量が遥かに跳ね上がっていた。

『浮遊装置へのエネルギー供給が止まりました。

動力炉の異常を確認。総員、直ちに避難を開始して下さい。

トリオンは間もなく墜落します。繰り返します……。』

無機質な声が、冷静に重大な事態を伝える。

朔夜の護衛達がざわめき、一人、二人と来た道へと駆け出した。

残ったものも不安そうに指示を待っている。

「……飛空艇に乗せられるだけ乗せて、脱出を始めろ。」

朔夜は冷静に装って指示を下す。

「勇者様は……?」

「僕達は後から行くよ。」

護衛の問掛けに即答する光騎。

(トリオンを守りきることが出来なかったのは僕達の責任。命を賭けてでも魔王を押さえる……。)

悲壮な決意。

真っ直ぐ前だけを見つめる。

退路は無い。

(だったら前に進むしかないじゃないか!)

ヒシヒシと伝わってくる魔王の殺気が肌を粟立たせる。

極寒の地に薄着でいるような感覚。

『ふっ、まだ戦う気でいるのか?』

バサリッと漆黒の翼を広げる魔王。

『もう我は目的を果たした。膨大な魔力を手にいれた。トリオンも墜ちる。……ここに用は無い。』

闇の衣を纏い、翼をはためかせフワリと宙へ浮いた。

「待て!」

光騎は剣を創り出して駆け出す。

それを完全に興味を失った目つきで見下す魔王。

ただ嘲笑いながら空へと舞い上がる。

「逃げるな!」

手を伸ばしたところで届くことはない。

「光騎君。君達は撤退してくれないか?」

「輝さん?」

「魔王のことは任せてくれ。」

微笑みかける輝の表情に、何か不吉なものを感じた光騎。

「あ……。」

何かを言おうと思って何を言えばいいかわからずに、

輝が剣が丘から剣を取り出すのを見ていることしか出来なかった。

「……神牙真刀。これはあまり使いたくなかったんだけど、仕方ないなぁ。」

装飾を排した無骨な大太刀。

差し込む光に刀身がきらめいた。

「……逃がしはしないさ。」

輝は神牙真刀の力を発動させた。

柄紐がほどけてゆく。

腕にまとわりつき、皮膚を喰い破り、神経に絡み付いた。

脳を貫くような痛みが走る。

神経を締め付けながら侵食。

神牙真刀が体中に張り巡らせれてゆく感覚。

治まることの無い痛みに気を失いそうになるが、さらなる痛みによって気絶することは無かった。

「……はっ!……はっ!……はっ!」

ドクドクと勢い良く流れる血液が、輝の体を活性化させてゆく。

脳内物質が輝の感情を高ぶらせていった。

どうしようもない破壊衝動。

(自分を抑えろ!あくまでも冷静さを維持しながら戦うんだ!)

噛みしめた唇から血が流れる。

同化していない左手で口を拭い、魔王を睨みつけた。

いつだって余裕のある表情を浮かべていた輝だったが、鬼のような険しい表情。

『ほう?まだ切り札が残されていたか。』

鼻で笑う魔王。

「……行くぞ。」

ダンッと地面に亀裂が走るほどの跳躍。

空を舞う魔王のもとへと一瞬で追いつき、すれ違いざまに魔王の片腕を落とした。

『ふはははっ!やってくれる!』

離れた腕を掴んで元の場所へと繋げると、黒い剣を創り出した。

魔力の乗った黒い刃がいくつも放たれる。

「……翼の剣。」

剣が丘から新たな剣を取り出す。

刀身が一枚の大きな翼の形をした剣。

テンペストとは違って飛ぶ機能しかもたない翼の剣。

しかし、飛ぶことのみに特化したこの剣は、空中においてあらゆる軌道を取ることが出来た。

空気を斬り裂いて次々と襲いくる黒い刃を、それ以上の速度と機動力で避ける。

速すぎる機動で輝の皮膚が裂けてゆく。

しかし、神牙真刀の侵食が進み、代謝能力の強化で瞬時に傷が塞がった。

本来なら瞳を開けることも出来ないのだが、強化された瞳のおかげでしっかりと魔王を見据えていた。

『クックックッ。奴もお前も、戦い方は一緒だな!』

輝と魔王の戦いが再び始まった……。



あとがきっぽいもの。
作者「続きはすぐにでも〜。」
麻衣「気になるところですねー。」
           おわり



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