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現在地は殆ど北部に近い場所。

地上をかすかに見下ろせる。

そこが僕達の戦場。

身体が軽い。

思考が冴える。

疲労が吹き飛ぶ。

神牙偽刀でこれだけの効果があるなら、神牙真刀はもっと凄いのだろう。

もっとも、諸刃の剣なんだけど。

そんなことより、今は目の前の魔王との戦いに集中しなくては。

「行くぞ!」

『くるがいい!』

剣と剣がぶつかる。

いまいち扱い方のわからない二刀流。

感覚を掴むまでは、適当に振り回すしかないみたいだ。

ぶっつけ本番というあたりに、どうしても不安を感じるがやるしかないさ。

幸い、魔王のほうは本気を出していない。

練習台になってもらおうじゃないか。

「よっと!」

『どうした?当たらないぞ?』

空振りが多い。

特に魔王の動きが早いというわけではないので、僕の剣技が未熟なのだ。

ソフィアちゃんや、貴人に習ってはいるがなかなか身に付かない。

……不器用なのかな?

ヘコんでいる場合ではない。

この命の賭かった状況でどれだけ自分を追い込み、高いところへ辿り着けるかだ!

「えぇいっ!」

『む?しかし、まだまだぁー!』

勇者の剣のほうがたまに結界を破壊するが、後に続かない。

すぐさま新たな結界を張られてしまう。

懲りることなく、剣を振るい続ける。

剣同士の交差する音がこだまする。

平行に振りかぶり、そのまま振り下ろす。

魔王はいとも簡単に片手で受け止め、軽々と振り払われた。

「くっ!」

尻餅をつきそうになったけど、なんとか体を支えてこらえる。

「シールド!」

ソフィアちゃんが、物理防御の奇跡を紡ぎだした。

体勢の崩れかけたところへの魔王の容赦無い斬撃を防ぐ。

「ありがと!」

お礼を言って、再び魔王へ斬りかかる。

速度を上げる。

こうなったら数打ちゃ当たるだ!

回転速度をもっと、もっと、もっと!

『ふっ、速いな。しかし、軽い!』

こっちが数回繰り出した斬撃を、一度の斬撃で払われる。

力、筋力が足りないのか?

いや、それよりもまだ噛み合っていない感覚だ。

二本の剣の使い方。

何かあるはず!

掴めそうで掴めない歯がゆい感じ。

きっと、剣を振るうことでしかそれは掴めない。

だから、僕はまだ諦めずに振るい続ける。



その心には未だ見ぬ明日が
いつか訪れるはずのそこへと至る路はとても険しいものだけど
辿り着けると信じて剣を振るい続ける
そんな貴方には光がよく似合っているよ
例え世界が闇に閉ざされたとしても
貴方だけは輝きに満ちていて


歌声が聴こえた。

それは耳に心地よく、心が澄み渡ってゆく。

ヒラヒラと薄い絹を振り回し、裸足でリズムを刻む人。

その声は伸びやかに、ゆるやかに、優しく僕を包み込むように歌われた。

「美綺姉!」

顔を向けると、歌い踊りながらウィンクで僕に応える美綺姉。

美綺姉もちゃんと無事で、僕を助けてくれている。

心の底から湧き上がってくる熱いものが、どうしようもなく奮い立たせる。

体が熱い。

きっと負の正反対に位置するもの。

『……希望とやらを抱いているな。くだらない!』

力を込めて振るわれた一撃。

それを交差した二本で受け止めた。

「それは誰にとっても力になるんだ!」

押し返す。

簡単なことさ。

一本でダメなら二本で対応すればいい。

つまるところ、二刀流とは二本を上手く使いこなすのではなく、剣をいかに臨機応変に使うかだ!

剣の形をしているからといって、剣としてしか使ってはいけない理由なんてない。

片方は突き、片方は盾に。

流れるように振るえるまではいかないけど、ほんの少しずつ噛み合ってくる。

「調子良さそうだね、光騎君!」

軽快な足音と共に聞こえてくる声。

僕と肩を並べるその姿は、奏歌ちゃんのものだった。

「奏歌ちゃんも無事だったんだね!」

奏歌ちゃんは余裕だと言わんばかりに親指を立てる。

そして、右手に持つ、剣の握る部分のようなモノを構えていた。

奏歌ちゃんが何かを念じるようにして目を閉じた瞬間、光の刃が現れた。

辺りの空気に清浄なものが混じる。

『クックックッ、いいモノを持ってきたな!とんでもなく聖属性に偏った剣だ。火傷でもしそうだよ!』

溢れでる闇が、奏歌ちゃんの持つ剣の聖気にあてられ溶けてゆく。

僕と奏歌ちゃんは目と目を合わせて頷くと、お互いの死角をかばいあうように共闘を開始した。

「うー、どうやって援護したらいいかわかんなーい!」

眞彩ちゃんが可愛く唸って、やきもきしている。

「……その時が来るまで温存しておくといいよ。」

座禅を組み、瞑想するようにして回復を図る輝さんが助言。

回復と防御に徹するつもりのソフィアちゃんが頷いた。

眞彩ちゃんも渋々といった感じで戦況を見守る。

美綺姉は休むことなく歌い、踊り続けて僕達を援護する。



手と手を取り合って
高くて遠い壁を乗り越えようと頑張る君達へ
その姿は涙を流し、失意に暮れる人達への勇気になるよ
心に溢れるその想いはやがて壮大な空へと混ざりあって
夢を現実に絶望を希望に変えてくれるはずだから……
忘れないで今の想いを
忘れないで過去の想いを
君達の紡ぎ出す未来に私達を連れていって


想いに背中を押され、想いに心を熱くされながら剣を振るう。

結界を斬り裂き、次の攻撃を繰り出しては防がれるが奏歌ちゃんの斬撃が闇を断つ。

僕達は有効打を与えられている!

『決定的なものにはならぬが、厄介だ。』

しかし、そんな言葉とは裏腹に未だ余裕の表情。

背中合わせの奏歌ちゃんが語りかけてくる。

「……この剣、精神力を吸い取るから長時間の使用は出来ないの。

もし私が気を失ったら時間切れってことだから。後はよろしく……。」

強力な力にはリスクが付きものらしい。

頷くことしか出来ずに戦いは続く。

このままじゃジリ貧になる。

輝さんの回復を待つしか打開策はないのか?

『考え事をする余裕は無いぞ!』

力強い斬撃が襲いかかる。

二本を盾にして防ぐが威力を殺し切れずに後退。

カバーに入る奏歌ちゃんの顔色が悪かった。

「くっ!」

振るう剣の光が弱い。

辛うじて闇を散らして魔王を押しとどめた。

「奏歌ちゃん下がるんだ!僕にまかせて!」

体勢を立て直して駆け出す。

魔王は標的を僕に変えると黒い刃を放った。

ソフィアちゃんが聖なる防護円を紡ぎ、それに黒い刃をまかせて突っ込む。

「……ごめん、後はお願い……。」

光の刃が消えて、よろめきながら後退する奏歌ちゃん。

再び鍔競り合う。

『仲間が次々と戦闘不能になってゆくな?魔剣王に奏歌と貴人と聖、あとあの巨人も。』

嘲笑う魔王の斬撃を避けて打ち込む。

『次は誰が犠牲になるかな?なぁ、誰を殺して欲しい?』

喉の奥で笑いながら、目線を仲間の元へと走らせる魔王。

吟味するように眺める姿に虫酢が走る!

「うおぉぉおぉぉ!」

速度を限界へ。

恐らく現状で僕が魔王に勝てる要素は、速度のみ。

足を使え、止まるな!

目にも止まらぬ斬撃を!

目にも止まらぬステップで打ちこめ!

結界破りの剣を投擲。

魔王はそれを弾くために剣を振るう。

触れるか触れないかの瞬間、踏み込むと同時に剣を消去。

次の瞬間、手の中へと具現化して二本で斬撃を放つ。

瞬間的な三刀流めいたもの。

魔王はとっさに対応出来ず、脇腹を斬りつけることが出来た。

血の代わりに溢れでる闇が風に消える。

『……実戦で急成長しているな。』

小さく呟く魔王のセリフ。

僕を見る目が、さっきまでの嘲りを含んだものではなかった。

戦えば戦うほど歯車が噛み合ってゆく。

何かが自分の中で組み上がってゆく感じ。

これが『勇者』というクラスの特性なのか、自分の持っていた力なのかはわからない。

だけど、確実に僕は強くなっている!

『……勇者を調子付かせるのは危険だな。』

殺気。

一気に鳥肌が立つ。

魔王の本気の証。

どっと湧き出る冷や汗が気持ち悪い。

「……。」

無言で剣を構える。

魔王は纏う闇を広げると、

『……絶望を見せてやろう。』

暗い、とても暗い声音でそう言った。

重い一撃が振りかかってくる。

「っ!?」

二本で受け止めるが、腕が折れてしまいそうだ。

今までの魔王は一体なんだったんだ!?

『殺気があるのと無いのとでこれだけ違うんだよ。もちろん本気を出してはいるがね。』

ハンマーでも振り下ろすように、容赦無く降り注ぐ。

『せめて殺気を込めろよ新米勇者。……まさかとは思うが、俺すらも希望に巻き込む気ではあるまいな?』

軋む体。

濃い闇の中は息苦い上に、美綺姉の歌も聴こえづらい。

『全くの闇を救えるはずは無い。勝つ気があるなら一切の闇を抱かずに斬りかかってこい。それが出来ぬのなら死ね。』

剣を受け止めるので精一杯のところへ、魔王の蹴りをまともに喰らった。

何の抵抗も無く吹き飛ぶ体。

歯をくいしばって痛みに耐える。

起き上がるのに体に残る力を総動員させなきゃならないなんて!

『はっ!いい姿だ!』

ゆっくり近付く魔王。

剣を向けるが、魔王は脅威を感じることがなく目もくれない。

『くくっ、良い事を思い付いた。』

手を伸ばす魔王。

それを斬りつけようとするが闇がまとわりつき阻む。

「光騎!」

ソフィアちゃん達が駆け出そうと足を動かした時、

『動くな。』

魔王に首を掴まれ、為す術も無く持ち上げられる。

ギリギリと締めつけられて息が苦しい。

何とか振り払おうとするが、闇に腕を封じられて動かせない。

『お前達はそこで絶望していろ!』

まるでピッチャーでもやっているかのようにふりかぶる魔王。

抵抗することも出来ずに、僕は地上へと放り捨てられた……。



あとがきっぽいもの。
作者「美綺のダンサー(歌)の説明でもしてみようかな。」
麻衣「あえて内容には触れないということですねぇ……。」
作者「うむ。前者のほうは、光騎のみを対象にした歌術。歌詞の内容が光騎向け。」
麻衣「後者は魔王以外ですか?」
作者「魔王以外に効果を与えるのはけっこう簡単。前向きな内容の歌詞にすればオッケー。」
麻衣「でも、歌い続けないといけないのはしんどいですねー。」
作者「だねー。」
                    おわり



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