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白い世界を抜ければ、澄み渡る青い空がすぐ近くにあった。

そこは空中都市トリオン。

私達は再びこの地を踏んでいる。

辺りを見渡すと、ここは広場だった。

「おーい!お前達、俺の存在忘れてただろう!?」

貴人君が私達のほうへ駆けてくる。

あぁ、そういえば誰か足りないなぁ、と思ってはいたんだけどね。

我ながら薄情だなぁ、と思いつつも貴人君と合流。

どうやら、私達が白の部屋に寄っていくことを知らなかったらしく、先にトリオンへ着いていたみたい。

光騎君達が貴人君と話している間、私はトリオンの雰囲気が変わっていることに不審を抱いていた。

「どうやら私達がいない間に色々あったらしいな。」

声をかけられ振り向くと、白衣を纏った朔夜さんがいた。

「何かザワザワしているというか、不安な空気というんでしょうか……。」

私はいまいち言葉にしづらいが感じたことを口にする。

朔夜はわかったというように頷いて口を開いた。

「トリオンは今、地上からの避難民で溢れかえっている。」

「避難民?」

「あぁ。とりあえず落ち着ける場所に行ってから話すとしよう。」

私は頷いて、皆と共に朔夜さんについていった。

前回の火竜を倒した功績で、朔夜さんと同じような扱いでもてなされるようになった私達は、城内の身分の高い人が住む宿舎にお世話になっている。

朔夜さんはあまり自室を利用せず、研究所の自分の部屋に住んでいるようだが。

宿舎に荷物を置き、身軽なものに着替えて(美綺さんはさっきよりも着込んだ)から朔夜さんを先頭にして城内へと向かった。

私達が通されたのは、そこそこの広さの部屋だった。

あまり物は無く、机と椅子がある程度。

朔夜さんに適当な席につくよう言われて、光騎君の隣りに……既に美綺さんと眞彩ちゃんが座っていたので仕方なく手近なところに座る。

「財政難というやつらしい。どこの部屋も簡素なものだったよ。」

席につきながら語る朔夜さん。

何か尋ねようかと思っていると、すぐに部屋を訪れる人がいた。

「皆さん、よく集まってくれました!」

王様っぽい人だ。

大げさな仕草で歓迎の言葉を述べる。

「光の騎士よ!私は再び出会えてうれしいですぞ!」

「は、はぁ……。」

光騎君と握手をし、その手を大きくブンブンと振り回す。

戸惑いの表情の光騎君だった。

「ではでは、僭越ながら私が、現状について説明申し上げます。」

王様っぽい人、えーと、名前はゲハルト。

もっと長い名前を名乗っていたのだが、覚えられなかったのでゲハルトさんで。

「現在、このトリオンには地上からの避難民で溢れかえっております。貴方達が帰還した時から約5倍の人口になりました。」

ゲハルトさんの言葉に皆がどよめく。

私も口には出していないが、内心かなり驚いた。

元々の人口がどれほどなのか知らないが、5倍となると異常事態な気がする。

「何から避難してきたんですか?」

私は続きを促す。

ゲハルトさんは頷いて続きを語り始めた。

「原因はモンスターです。地上は今、以前より遥かに凶暴性の増したモンスターが暴れまわっています。いえ、地上だけでなく、トリオンもその脅威に晒されています。」

以前の火竜のような、飛行能力を持ったモンスターがトリオンを襲いにくるみたいだ。

単体としては火竜より格段に弱くとも数が問題で、トリオンの戦えるものを総動員してもどれだけ持ち堪えられるかわからないようなのだ。

「そこで勇者殿達の力をお貸し願いたい!」

ゲハルトさんは机にこすりつけんばかりに頭を下げた。

光騎君は私達を見渡した。

光騎君自体はイエスの返事を出す気まんまんのようだけど、私達の気持ちも確認しておこうということなんだろう。

もちろんオッケーなので頷いておく。

貴人君が少し迷ったようだけど、満場一致。

「僕達も手伝います。どこまで出来るかわかりませんけど、困っている人達を放っておくことは出来ません。」

光騎君らしい答え。

きっと得をするよりも損することのほうが多い選択。

だけど、損得を超えて選んだその答えは、強固な信念となって、揺るがない心を得るに違いない。

「感謝いたします!勇者殿!」

ゲハルトさん、再びこすりつけんばかりに頭を下げた。禿げるよ?

「とりあえず、我々はトリオンに来るモンスターを迎撃しまくるしかない。モンスターの凶暴化の原因がわからないので対策しようが無いのでな。」

朔夜さんが具体的な話を始める。

数人でグループを作り、時間ごとに見回り、休憩を取って対応していくというもの。

まぁ、シンプルだけど妥当ってところね。

メンバーは私達の他にも、トリオンの戦える人達をかきあつめるみたい。

勇者である光騎君が加わることによって、有志の希望もあるかも。

あっ、あと忘れちゃいけないのが……

『おかえりなさい、光騎さ〜ん!』

零式のAI、愛ちゃん。

「待ちくたびれたぞ、我が主。」

エクスカリバーの聖ちゃん。

二人?は私達が、というか光騎君が帰還するまでの間、自分達の出来る範囲でトリオンの人々を助けていたらしい。

愛ちゃんは零式のセンサーを使って索敵を、聖ちゃんは剣を展開してバッサバッサと斬り伏せていたらしい。

私達がいない間に、愛ちゃんと聖ちゃんは随分と仲が良くなっていた。

そりゃ、3ヶ月も経ってればねぇー。

「ただいま、愛ちゃん、聖ちゃん。」

場所は格納庫。

零式の頭部が動いて光騎君を見ている。

愛ちゃんが動かしているようだ。

実体が無い愛ちゃんにとって、零式は自身の体のようなものなのだろう。

聖ちゃんは零式の足下で、腕を組み、不敵な笑みを浮かべて出迎えた。

でも、嬉しそうなオーラがだだ漏れだった。

さらに言えば、かまって、かまって、っていう雰囲気。

必死にそれを隠そうとしているのは、ちょっと可愛いと思う。

皆で再会に喜んでいる時、ふと私はどこか冷静な自分と向き合う。

話に華を咲かせ、笑って、驚いて……、そうやってはいても、心が急に冷えて、全く別のことを思考し始める。

本当に戦えるの?

きっと大丈夫よ。

流されてるんじゃないの?

自分で考えて決めたことだよ。

そう思い込んでるだけじゃないの?

……違うよ。そんなことない……。

何が楽しいの?

周りは恋敵ばかりだよ?

敵だよ?

敵なんかじゃない。

私達は、正々堂々と恋愛しているんだ。

本当に?

あなただけがそう思っているんじゃない?

そうだとしても、私は私のやり方で……

ねぇ、あなたは、本当に、光騎君のことが、好きなの?

好きだよ。好き。好きに決まってる!

なぜ?

どこが?

どうして?

「……。」

次から次へと溢れる疑問を自身へと問いかける。

明確な解答が出せなくて、イラつく。

疑問が疑問を呼び、一向に疑問が減らない。

素直にこの時を楽しみたい。

心の底からそう思った。

「どうしたの?奏歌ちゃん。」

呼びかけられて、思考を中断。

気付けば目の前に光騎君の顔が。

「な、なんでもないよー。」

ヘタクソな返答。

何かあるに決まってるじゃないか。

突発的なことへの対応がどうにも苦手。

光騎君は私の顔をじっと見つめて、少し考えるように上を向いてから、私の目を見た。

それから私に微笑みかけると口を開いた。

「奏歌ちゃんはきっと真面目過ぎるんだよ。だから色々悩んじゃうんだ。もし、自分で答えが出せないなら誰かに聞けばいいし、どうしても自分で答えを出さなきゃならないんなら、保留にしていつか答えを見つければいいんじゃないかな?」

「……じゃあ、すぐに答えを出さなきゃいけない時は?」

「自分の得になるよう答えればいいんだよ。自分の心があったかくなるような答え。一般的な解答と違っていてもね。」

「難しいよ……。」

私がうつむくと、光騎君は悩みながらもなんとか言葉をつむごうとしていた。

「うーん、じゃあさ、笑えばいいよ。悩みも嫌なことも、全部吹っ飛ばすぐらい。その後に残ったものが、きっと自分にとって一番大事なものなんだ。それが判ればどんなことにだって向かっていけるよ。」

そう語ると、ね?、っと言って光騎君は笑いかけた。

私は光騎君の言葉を心の中で反芻した。

今はまだ簡単に納得出来ない気がする。

でも、心の内に留めておこうと思う。

「……いつか一緒に笑ってくれる?」

私の言葉に光騎君は柔らかい笑みで答えた。



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