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「ん〜、まぁ、いっか♪」

「えっ、いいの!?」

前回の深刻そうなフリはなんだったんだ?

「フルスペックなら瞬殺出来ちゃうんですけど、現在の基本装備だと時間かかっちゃいますけどねー。」

「えっと、具体的にはどれぐらいかな?」

「二日間ぐらい?」

「長っ!」

いや、基準がわからないので一概にはなんとも言えないのだけれども。

「とりあえず、人類の剣であり盾でもある私にとってキルリストのトップであるアレ、きっちりきっかり滅殺しちゃいまーす♪」

かなり物騒な言いようだけど、それが妙に頼もしかったりする。

「愛ちゃん、頑張って!」

握り拳を作って声援を送る。

愛ちゃんはリラックスした様子で魔王の前へと立ちはだかり、

「パァンチッ!」

『ぐほぉっ!?』

殴った。何の小細工も無く殴った。

しかも、ちゃんと魔王に効いている辺りが凄い。

「キィックゥッ!」

『ぐあぁっ!?』

人間が食らったらヘシ折れるんだろうなぁー、という蹴りが魔王の足にめり込んだ。

「手がロケットでパンチだったりしないのかなぁ……。」

期待を込めて愛ちゃんへと視線を送ると、手を交差してバッテンを作り首を振っている。

むぅ、残念。

『いつまでも簡単にボコられている我ではないわ!』

魔王の剣がゴボゴボと闇を噴き出しながら振られる。

しかし、愛ちゃんは平然とそれを眺めながら

「攻性結界・光刃!」

右腕から光が溢れ出し収束してゆく。

その光の刃で魔王の剣を受け止め、鍔競り合う。

『ぬうぅぅぅ!』

「再びパァンチっ!」

空いた手で容赦無く殴る。

魔王も空いた腕で何とかガードするが、外見からは想像出来ない重いパンチみたいで、腕がひしゃげている。

自動修復能力をフルで活用しながら戦っているようだ。

「パァンチ!、と見せかけてキィックッ!」

『のわぁっ!?』

柔道の技みたいに足を狩られる魔王。

文字通り、足を持っていかれているのはかなりビビる。

瞬時に再生するが、愛ちゃんの攻撃は止まらない。

それにしても、魔王の攻撃がちっとも愛ちゃんに当たらない。

やっぱり楽勝というのは本当なようだ。

「再生するから時間かかるだけで、再生しなかったら瞬殺なんだろうね。」

暇そうな輝さんがやってきた。

いや、僕も暇ですけどね。

「結界破りの剣でも貸してやったらどうなんだ?」

九条さんは少し投げやり気味である。

「いらないんじゃないかな?普通に障壁をぶち抜きながら戦ってるし。」

輝さんはやる気なさげに指を差す。

確かに、障壁なんて無いみたいに戦っている気がする。

障壁を潰してなおかつあの威力って……。

「超かっちょいいー!」

「燃える!」

僕達、男の子達はワクワクしながら手に汗握っているのだったー。

「光ちゃんの好みは心得たー!私も、肉・弾・戦!」

美綺姉が軽やかにバク転しながら現れた。

「私だってやってやりますよー!」

麻衣ちゃんも負けじとバク転に捻りを加えて着地。

争うところがズレてるのは愛嬌。

「とうとう私が活躍出来る場面ね……。」

奏歌ちゃんは拳をプラプラとほぐしながら余裕の笑み。

「聖騎士とは剣だけでないことを教えてやろう。」

ソフィアちゃんは剣をしまいつつ、何か物騒なものを拳にはめていた。

「拳が唸るぜー♪」

眞彩ちゃんは微妙にヘタレたシャドーボクシングをしている。

「いや、燃えるのはそこじゃないよ?」

ここはきっぱりと注意をしておかなくてはなるまい。

「愛ちゃんの凄いところは、身体が分離して陸海空それぞれで活躍出来るように変形するとこなんだよ!」

「マジで!?」

九条さんが憧れを含んだ驚愕の表情。

「……光騎さん、残念ながらそのような機能は付いていません。」

己にもっと力があれば……っ!というような表情を浮かべる愛ちゃん。

……むぅ、なんてこった。

「少しだけなら空は飛べますけど、専用オプションを使わないことには長時間の飛行は出来ないんです。」

顔はこっちに向けながらも、魔王をボコる手は止まらない。

「じゃあ、目からビームも出ないと?」

「胸からミサイルも出ないと?」

僕と九条さんが首を傾げて疑問をぶつける。

愛ちゃんは口惜しそうに首を振った。

うなだれる僕達。

少年達の夢は砕かれたのである。

『ふはははっー!お前達の絶望、美味であるぞ!』

「あぁああー!?しまったぁー!」

しょぼく魔王に糧を与えてしまったようだ。

しかし、魔王が雄叫びを上げて隙だらけなところに、愛ちゃんの連打が決まって帳消しな気配。

「……でも、キリがない感じはするね。もしかして、僕達邪魔?」

率直に尋ねてみる。

「えーと、今日はもうお休みになってくれても構いませんよ?」

やっぱりいないほうが手っ取りばやそうだ。

「じゃあ、今日のところは帰ろうか?」

皆の顔を見ると異論は無さそうだ。

「貴人と朔夜さんと聖ちゃんにも事情を伝えて……。」

「あー!そうだー!」

僕のセリフにかぶりながら、愛ちゃんが重大なことを思い出したみたい。

「ど、どうしたのさ?」

「聖ちゃんがいたじゃないですかー!」

「そりゃあいるけど、それが?」

「うっかりしてましたよー。というか思い込み?」

「な、何がかな?」

「聖ちゃん。零式の武器だとばっかり思ってましたよ。」

「まぁ、零式でしか扱えなかったしね。」

人間には重たくて持てないから。

「聖ちゃんというか、excalibur、私の武器なんです。」

「……へ?」

たぶん、今の僕の顔は間抜けに違いない。

「正確には私達の、なんですけどね。」

「うん、確かに魔法剣じゃないことは分かってたよ。人が使うために造られた感じじゃなかったしね。」

愛ちゃんの言葉に輝さんはこれで合点がいったという顔をした。

「ど、どうゆうことですか?」

「僕は魔剣王だからね。触れば魔剣のプロフィールと能力を完璧に理解出来る。

ほら、君と最初に会った時、excaliburに触らせてもらっただろ?」

「あー、あれにはそういう意味があったんですかー。」

「あと、岩に刺さっていたというのも気になって調べてみたら、差し込み口みたいになってた。造られたみたいにね。」

「あ、それ、たぶん充電装置です。」

僕達の会話に入りながらも愛ちゃんの魔王を痛めつける手は止まらない。

「充電!?」

「そろそろバッテリー切れじゃないですかねぇー?」

……もしかして、今、ここに聖ちゃんがいないのは?

「電池切れ、もしくは省電力モード?」

「聖ちゃんのことですから電池切れなんてヘマはしないでしょう。後者ですかねー?」

「……衝撃の事実。」

「ということで、エクスカリバーモードへと移行しまーす♪」

魔王を思いきり蹴飛ばして距離を空ける愛ちゃん。

excaliburが放りだしてある方向を感知した愛ちゃんはそちらへと手をかざす。

光の刃を消した指をクイッと動かすと、

「excalibur.system起動!」

愛ちゃんの身体のあちこちが動き、展開してゆく。

そこから光が噴き出して、まるで黄金の輝きに包まれているように見えた。

そして、ゴウッと風を斬り裂いて飛来するものが。

excalibur。

零式が振り回すサイズだったものが、愛ちゃんの持つサイズ、人が振り回すようなサイズへと変化。

それでも重さは変わらないはずなのに、難なくそれを受け止める愛ちゃん。

「接続、問題無し!マナ・エンジン、フルドライブ!」

手の平にexcaliburが接続され、エネルギーが送られているみたいだ。

てか、愛ちゃんもマナ・エンジンで動いてるんだー。

「聖ちゃーん、起きてくださーい♪」

『む?愛ちゃんか?……うむ、事情は理解した!』

話し合い、たぶんデータの交換で一瞬にして相互理解したみたい。

「エクスカリバーモード、いっきまーす♪」

『心得た!』

excaliburの刀身が真っ二つに割れて横に倒れた。

その形は、刃の無い柄だけの剣。

しかし、滑るようにして倒れた刃が輝きを放ち始めた。

「聖剣、展開!」

愛ちゃんの声と共に、光が溢れ出す。

天に向かって伸びゆく黄金の刃。

その輝きは闇をかき消す、希望の光。

『くっ!?』

魔王が焦った表情で剣を構える。

愛ちゃんは身体中から放つ光で加速。

残像すら残しかねない速さで魔王へと迫る。

魔王が放つ黒い斬撃を光を纏わせた片手で握り潰す。

「やぁぁぁーっ!」

excaliburを両手に構えなおし突撃。

避けることが出来ないと判断した魔王は、剣を盾にする。

しかし、光の刃は魔王の剣ごと魔王の胸を貫いた……。



あとがきっぽいもの。
作者「聖ちゃんも復帰だぜ!」
リーア「もう楽勝な雰囲気ですねぇ〜♪」
作者「書いてて気持ちいいけど、収拾つくかなぁー?」
リーア「そこはちゃんとしてくださーい♪」
作者「はいはーい♪」
                おわり



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