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魔王を倒してから一週間が経った。

今もまだ復興に忙しいけど、少しは落ち着き始めている。

神牙偽刀の反動で一日だけ寝込んでしまったが、翌日からは僕も復興作業に参加した。

その時に一番活躍したのは愛ちゃんだ。

こういう時、力持ちだとすごく便利だということだ。

トリオンの人々も元気に作業している。

犠牲は出たけれど、魔王を倒すことが出来たというのはなによりも嬉しいことのようだ。

それで、今日は『勇者』メンバーで今後の方針なんかを話し合うことになった。

トリオンの城のある一室。

空気はかなり緩んでいたりする。

「お菓子作りましたんで食べて下さいね。」

「麻衣ちゃんと二人で作ったんだよー。」

奏歌ちゃんと麻衣ちゃんがテーブルの上にクッキーとケーキを並べた。

「あっ、美味しそうだね。」

「眞彩もいっただきま〜す♪」

僕と眞彩ちゃんが真っ先に手を伸ばした。

美綺姉はなにやら打ちひしがれてる様子。

「美綺姉どうしたの?美味しいよ?」

クッキーをかじりながら声をかける。

「……うん、もちろん頂くけど、私にはお菓子を作る技能が無いことにヘコんでた。」

「美綺なら出来そうだがな。」

朔夜さんはそう言うと香茶に口をつけた。

「私、きっちり計ってやるのとか苦手なんだよねー。カンでちゃっちゃっとやるのは得意なんだけど。」

「あー、確かに美綺姉は料理作るの早いね。味見しないし。美味しいからいいけど。」

ほとんど麻衣ちゃんと美綺姉の料理で育った、

といっても過言ではない僕の言葉はたった一つの真実なのである。

「私は逆にきっちり材料用意して、手順通りやらないと上手く出来ませんよ。」

きっちり人数分にケーキを切り分ける麻衣ちゃん。

見事なナイフ捌きだ。

ケーキが乗ったお皿が各自に配られ、がっつき始めるのは僕とか眞彩ちゃんとかダイルさんとか。

『がつがつがつっ!』

その横で、顔色の悪い人が二人。

九条さんと貴人だ。

「……昨日の晩も飲み過ぎた。」

「……いわゆる二日酔いっすな。」

九条さんとダイルさんと輝さんと貴人の四人は毎日のように夜の街へとくりだしている。

ダイルさんと輝さんは翌日でもケロッとしているが、二人は二日酔いになりながらも遊びまくるのだった。

「解毒したげよか?」

奏歌ちゃんが呆れ顔で二人に声をかける。

二人は救いの女神を見つけたと言わんばかりに、勢いよく顔をあげて頭痛に苦しみながらも、

『ぜひ、お願いします!』

『解毒』の奇跡に頼るダメ人間達。

「有料だけどね。」

ちゃっかりしてる奏歌ちゃんがなんだか眩しい。

二人は渋々ながらもお金を払っているあたりとことんダメである。

「そろそろ本題に入りませんかぁー?」

暇そうな愛ちゃんが、今日集まった目的へとみんなを誘導。

ちなみに、普段の愛ちゃんはリミッターをかけて力をセーブしている。

人間が発揮出来る程度の力だそうだけど、たぶん人間の限界地点に設定してるっぽい。

一番腕力のあるダイルさんが腕相撲で負けてたし。

「今日集まってもらったのは、魔王を倒したのになぜ元の世界に戻れないか?ということと、

今後の方針を決めようという議題だ。」

朔夜さんがホワイトボードに魔王、議題と書いている。

「では事情通の輝君、説明したまえ。」

司会は朔夜さんみたいだが、説明は輝さんに丸投げのようだ。

「えーと、皆は白の部屋で説明されたんだよね?魔王を倒せば元の世界に帰れるって。」

輝さんの言葉にみんなが頷く。

「じゃあ、前回元の世界に戻れた理由は?」

そんなの簡単過ぎる質問だ。

「魔王を倒したから。詳しく言うと、刀夜君が魔王を倒したからだよね?」

美綺姉が確認するように答えた。

輝さんは美綺姉の解答に満足そうに頷いてから口を開いた。

「さて、そうすると矛盾が生じるね。前は魔王を倒して戻ったのに今回は戻らない。」

もったいぶった言い方で、僕達に思考を促している。

「……前回と今回で魔王の意味合いが違うんだろ?てか、厳密に言えば前回のは魔王じゃない。」

九条さんがスパッと言い放つ。

輝さんは即答されてつまらなそうだ。

「優秀な解答ありがとう。その通り、今回倒したのは完全完璧に魔王という存在。

そもそも、『勇者』は魔王のカウンターとして召喚された存在だからね。

魔王が滅べばこの世界にはいらない。」

「だが、俺達は残っている。まぁ、俺は『復活の指輪』の効果で戻れなくなったんだが。

てか、なんでお前の『復活の指輪』は砕けてないんだ?」

輝さんの指にはまっている指輪を差して九条さんは言った。

確かに若干色あせてはいるものの、ちゃんとそこにあった。

「ほんとだ。生き返ったのに砕けてねぇ!」

ケーキ食べるのに夢中なダイルさんは口からスポンジを飛ばしながら叫ぶ。

汚いなぁ、もう。

「ん?生き返ってないし。レプリカと一緒にしないでほしいな。」

「レプリカ?」

「こっちはオリジナルで、君達が持ってるのはレプリカ。能力がちょっと違う。」

「マジで!?」

「そりゃあ、人、一人分の命がかかってるからね。そっちはかかってない。それでも破格には違いないけど。」

香茶を一口ふくんで、喉を潤す。

「……もしかして『復活の指輪』も勇者の武具なのか?」

九条さんは何かに気が付いたようだ。

真剣な表情で輝さんに問いかける。

「察しがいいね。これは勇者が自らの命を代償に創り出した勇者の武具。

ある一人のために創られた勇者の武具だ。」

指にはまっている『復活の指輪』を眼を細めて眺める。

まるで遠い記憶を思い出しているかのようだった。

「生き返らせるには、同等の代償が必要だということか……。」

「そう。レプリカは創造方法が違うけど、オリジナルは一人の勇者の願いそのものだ。

大切に使わなければならない。」

ダイルさんがクッキーをかじる音だけが響いた。

空気読め。

「オリジナルはレプリカと違って、一人の命の分の癒す力がある。僕は致命傷を受けて死にそうだった。

でも、死ぬ訳にはいかなかったから死ぬ前に効果を発動させた。

残りの回復力は少ないけど、まだ砕けていないのはそういう理由だよ。」

「そうか。レプリカは死なないと発動しない分、劣るな。そっちのほうが便利だ。」

納得した表情の九条さん。

「さて、話を戻そう。魔王を倒したのに、なぜ元の世界に戻らないか?仮説1、魔王を倒せていないから。」

人指し指を立てる輝さん。

今さらどうでもいいけど、朔夜さんはホワイトボードにまとめきれずに座って聞き役に徹していた。

てか、朔夜さん要点だけまとめるのヘタかも。

頭いいのになー。

「そんなことはありません。確かに魔王を倒しました。逃げられた気配もありません。」

愛ちゃんはきっぱりと解答。

「仮説2、魔王を倒せていないから。」

疑問符を浮かべる愛ちゃん。

他にも何言ってんの?という表情をしている人が多数。

「この場合は魔王ではなく、魔獣王とか魔剣王という意味だな。」

「略して魔王だよな。」

九条さんの補足説明にうんうんと頷くダイルさん。

「うん。ついでに言えばこっちが本命だよ。刀夜君が倒したのは魔獣王。

ただ倒すだけなら、刀夜君が魔獣王を受け継ぐ手筈だったんだけど、相討ちになったから魔王に力が戻ってしまった。」

「残念ながら、はっちゃけすぎたってことだな。」

身も蓋もない言い方だなー。

「しつもーん!魔獣王とか魔剣王って何をする人ですか?」

眞彩ちゃんが元気良く手を上げて疑問をぶつける。

「いい質問だね。魔獣王達は分断した魔王の力を封印、管理している存在なんだ。

僕は魔剣王。魔王の剣は取られちゃったけど。」

「けっ、役に立たねぇのー。」

九条さんのセリフに苦笑いの輝さん。

「じゃあ、魔獣王とかって倒したらダメだよね?」

「そうだよ。交代する場合はいいけどさ。」

「……今回の召喚は魔獣王を倒すのが目的ということだな。」

九条さんはそう結論を下すと、香茶をズズッと音を立ててすする。

魔獣王達を倒すということは、魔王に本来の力を取り戻させるということ。

僕達は魔王を倒して世界を平和にするためではなく、魔獣王達を倒して魔王を復活させるために喚ばれたのか?

「何のためにさ?全然意味無いよ!」

思わず声を大きくしてしまう。

僕達は何のためにここにいるんだよ!

「誰か仕組んだ奴がいる。そうだろう?」

九条さんは鋭い視線で輝さんを見た。

「いるね。君達を喚んだ奴らが。魔王の復活を望むもの達が。」

語られる真実。

それは唐突で、衝撃的なものだった。

「誰かは知らないけど魔王を意図的に復活させようなんて、かなりぶっ飛んだやつだ。はっきり言って早く潰したい。」

穏やかな表情には似合わない物騒な物言い。

「どれだけの勇者が犠牲になったか、どんな想いで魔王を倒したかも知らない愚か者の仕業に違いない。

僕はそいつらの存在を決して許しはしない。」

静かな怒り。

感情のうねりをひしひしと感じる。

「とりあえず、怪しい奴が一人いるな。」

ニヤリッと笑う九条さん。

それはたぶん、僕達に魔王を倒せとけしかけた人物。

「……白の部屋のガイド、セイドリックさんか……。」

今度あそこへ行くことがあれば、問いたださなければならないだろう。

「君達を容易に還さないためにも僕達、魔王の力を管理するものは簡単に死ぬわけにはいかない。

死ねば君達は元の世界に戻されちゃうからね。」

だから、『復活の指輪』を死ぬ前に使ったのか。

確かにあの場面で輝さんが死んで送還が始まった場合、トリオンは魔王によって完全に墜とされていただろう。

いや、トリオンだけの問題じゃなくて、もっと大きな災いが起こったに違いない。

そんな魔王を復活させようとさせる存在。

僕だって許してはおけない!

「確かにそれは由々しき事態だな。だが、我々には直面している問題がある。」

今まで黙って聞いていた朔夜さんの主張。

「実はトリオンはゆるやかに墜ちている。」

『は?』

朔夜さんの言葉にみんなが唖然とする。

零式のマナ・エンジンでなんとかなったのでは?

「出力が足りない。今の高度を保つほどの力が無いんだ。」

なので愛ちゃんの舵により海へと着水させるそうだ。

「むむ、ってことは、第三部の光ちゃんと愉快な仲間達は、海が舞台?」

「第三部ってなんなのさ?」

あとその変なタイトルも。

どこかを向いてしゃべる美綺姉。

気にしてはいけないようだ。

何にしても、僕達の戦いは終わっていないらしい。

元の世界に戻る方法を見つけなければならないし、魔王の復活を望むものを止めなければならない。

きっと辛いことが待っているだろうけど、みんなと力を合わせて乗り越えてみせるさ!

                                     〜了〜



あとがきっぽいもの。
作者「第二部前半終了しましたー。」
リーア「お疲れ様でーす♪前回から随分空きましたが。」
作者「言ってくれるなよ、なんだか忙しいのさ。」
リーア「知りませ〜ん♪両立してくださ〜い♪」
作者「……善処します。と言っても、またしばらく空くかも。」
リーア「有言実行って言葉知ってますかぁ?」
作者「くっ!?ショートストーリーぐらいなら書くかも!」
リーア「かも?」
作者「書きます!」
リーア「よろしい♪」
作者「ということで、第二部後半戦に入る前にSSをいくつか書きますのでよろしく〜。」
リーア「私も出ますよ〜♪」
作者「それは知らねぇよ。」
リーア「えー!?」
    おわり



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