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「いってみよー♪サモン・グリフィン!」
眞彩は宙空に指をクルクルってやって、召喚陣を描いた。
セットされた召喚陣が世界に認められて門になる。
その門から、眞彩に力を貸してくれる色んな生きものが現れる。
生きものだけしか呼べないのかなぁ?
なんて思いながら、グリフィンさんに敵を攻撃するように命じる。
くちばしと爪の2連撃がベアバードさんに命中する。
「今だ!撃て!」
朔夜さんの号令で、魔銃兵さん達の魔銃が放たれた。
ベアバードさんに2発、3発と魔弾が命中して、墜ちていった。
ここはトリオンの北の位置。
眞彩達が来たことで、トリオンの防衛に参加してくれる人が増えたんだけど、それでもまだまだ足りなくて、トリオンの東西南北に戦える人達を分散する形になった。
で、眞彩と朔夜さんと魔銃兵の人達はここの配置になった。
ちなみにお兄ちゃんは南側。
一緒じゃなくて残念。
「眞彩ちゃん、お疲れさま。」
白衣をはためかせた朔夜さん。
魔銃兵さん達に指示を出してから眞彩のところへやってきた。
「眞彩はたいして何もしてないですよー。グリフィンさんが頑張ったんだよねー?」
グリフィンさんが眞彩の言葉にクキュルルルー、って鳴いてすりよってきた。
眞彩は頭を撫でてあげると、グリフィンさんは気持ち良さそうにおとなしく撫でられていた。
「ふむ、随分なついているな。」
朔夜さんもグリフィンさんに手を伸ばして、頭を撫で撫でした。
「召喚士だからなついてるのかなぁ?」
だとしたらちょっとつまんない気がする。
「いや、召喚士は強制的な面が強い。なにしろ、普通に生活しているところをいきなり召喚するわけだからな。むしろ、恨まれる可能性のほうが高い。それでもなつくということは、このグリフィンが人懐っこいか、眞彩ちゃんの才能だ。もしかしたら魔物使いのクラスが向いていたのかもしれん。」
「じゃあ、今度は魔物使いをやってみよっかな〜♪」
眞彩達は、戦闘の合間にそんなたわいもない会話をしていた。
「さて、そろそろ時間だ。」
朔夜さんが腕時計を確認する。
ということは交代の時間。
ちょうど、時間きっちりに交代の人達がやってきた。
今日はいつもより戦闘が少なかった。
でも、普段に比べると戦闘量は格段に多いんだって。
元々、トリオンは空中に浮かんでるだけあって、なかなかモンスターが現れない。
空中を移動しているからなおさら。
なのに襲われるのは、何かあるんじゃないかって、朔夜さん達が言ってた。
難しいことはよくわかんないから、とりあえず、お休みタイム。
グリフィンさんにお礼を言って送還。
引き継ぎのための手続きを終えた朔夜さんと宿舎に帰ることに。
「辛くはないか?」
帰り道、朔夜さんがそんなことを尋ねた。
眞彩は、ちょっとだけ悩んでから答えた。
「うーん、疲れたりはするけど、お兄ちゃんや朔夜さん達も頑張ってるから眞彩も頑張らなきゃって思うよ。」
それで、お兄ちゃんに褒めてもらうの!
「そうか。皆で帰れるといいな。」
朔夜さんが微笑む。
ちょっぴり寂しそうに見えたのは気のせいかな?
「大丈夫!必ず皆で帰れるよ。朔夜さんも一緒だよ♪」
眞彩も微笑み返した。
そしたら、朔夜さんは驚いたような表情のあとに、
「ありがとう。」
と言って眞彩の頭を撫でてくれた。
宿舎の眞彩の部屋。
眞彩はベッドに寝転びながら、読書中。
タイトルはモンスター大図鑑。
召喚士は召喚対象のことを知っていないと、召喚することが出来なくて、現在お勉強中。
知っていても、レベルが高いのはまだ召喚出来ないんだけど。
「ふんふーん♪」
適当な鼻唄を唄いながら読んでいく。
挿絵がリアルで、気持ち悪いのもいるけど、けっこう楽しい。
しばらく読み進めていると、コンコンッとドアがノックされた。
「はーい、誰ですかぁー?」
モンスター大図鑑から目を離さずに問いかける。
「僕だよ、眞彩ちゃん。」
お兄ちゃんの声だ。
「空いてるよー♪」
眞彩はモンスター大図鑑を放り捨てた。
勢いよく立ち上って、カチャッ、とドアが開いたところに飛び込んだ。
「おっと!?」
ポスッとお兄ちゃんの胸に受け止められる。
見上げると、お兄ちゃんの笑顔。
お兄ちゃんは私の頭を撫でながら口を開く。
「お菓子の差し入れもらったから、眞彩ちゃんにもお裾分け。」
お兄ちゃんの手には、白い布に包まれたクッキー。
避難民の人達から日頃のお礼に、って貰ったんだって。
「わーい♪お兄ちゃん一緒に食べよ♪」
お兄ちゃんの手を引っ張る。
少し戸惑いながらもお兄ちゃんは、
「じゃあ、ちょっとだけお邪魔します……」
と言って、眞彩のお部屋へ招くことに成功。
椅子は一つしか無いから、ベッドに座ってもらって、眞彩もお兄ちゃんの隣に腰かける。
密着〜。
なかなか二人きりになることなんか無いから、ここぞとばかりに甘えるんだぁ〜。
顔を赤らめるお兄ちゃん。
「え、えっと、お菓子開けようか。」
白い布にかかる細い紐をほどいた。
形はあまり整ってないけど、美味しそう。
一つ手に取って食べてみた。
サクサクしてて美味しい。
お兄ちゃんも手を伸ばした。
でも、眞彩はそれを制して、一つ手に取り、
「はい、お兄ちゃん、あーん♪」
お兄ちゃんの口許に運んだ。
お兄ちゃんは本格的にあたふたして、顔を赤くした。
美綺さんとかによくやってもらってるに、お兄ちゃんは相変わらず慣れないみたい。
そこがいいんだけど!
「あ、あーん……。」
悩んだ結果、口を開けたお兄ちゃん。
クッキーを口に入れてあげる。
優しいお兄ちゃんは、人の好意も厚意も行為も、受けとめちゃう。
優柔不断と言ってしまえば、そうなんだろうけど、誰にでも優しく出来ることって凄いことだと思うよ。
「美味しい?」
「うん、美味しいよ。甘さもちょうどいいし、歯応えもいい感じ」
なんだかホクホクなお兄ちゃん。
クッキーがお気に召した感じ。
「ね、ね、今度は眞彩にも食べさせてー♪」
おねだり。
「そ、それはなんか恥ずかしいなぁ……。」
「お願〜い、お兄ちゃん♪」
断れない性格のお兄ちゃんはクッキーを手に取るのだったぁー。
おやつを食べ終わってお兄ちゃんとおしゃべりする。
「眞彩ちゃん、勉強してたの?」
お兄ちゃんは、適当に放置されたモンスター大図鑑を指差して言った。
「うん♪たくさん覚えたら、色んなのが召喚出来るようになるの。お兄ちゃんをサポートするために頑張らなきゃ♪」
お兄ちゃんにピトッてくっつく。
「そっか、頑張ってるんだね眞彩ちゃん。」
頭を撫でてくれるお兄ちゃん。
わーい、褒められた♪
「僕も頑張らないといけないなぁ……。」
お兄ちゃんは力無く笑って、溜め息をつく。
「え?お兄ちゃんだって、頑張ってるよ!」
眞彩はお兄ちゃんの瞳を見て、事実を言葉にした。
でも、お兄ちゃんのかげりの表情は変わらない。
「お兄ちゃん、何かあったの?」
眞彩の問いかけに、お兄ちゃんは少し迷ってから口を開いた。
「今日の戦闘でね、避難民の人を助けられなかったんだ……。」
お兄ちゃんはポツポツと今日起こったことを語り始めた。
お兄ちゃんが配置されたトリオンの南側は、モンスターの出現率が高い。
かといって、トリオンの面積からすると飽和状態になりかけの現在の人口では、どうしても南側にも人々が住むことに。
他の場所より、人数を割いてはいても抑えきれなくて被害が出る。
今日は死亡者が出て、怪我人も多かった。
眞彩達が来てから、一番大きい被害だったらしい。
いない間、それよりも大きい被害が幾度もあったことを考えると、よくやっているということで、トリオンの偉い人や避難民の人達からは何の不満も無いのだが、お兄ちゃんは抑えきれなかった自分が許せなくて、落ち込んでるみたい。
「そっかー。じゃあ、眞彩達の連帯責任だよね。赤信号皆で渡れば怖くない、ん?これはちょっと違うかな♪」
あははー、と笑って雰囲気を変える努力をしてみたり。
あっ、お兄ちゃん、ちょっと笑った。
「みんなを助けるんなら、みんなで頑張らなきゃだよ。だって、眞彩達、皆が『異世界の勇者』なんだから。クラスだけ見たら、お兄ちゃんが勇者だけど。あと、この世界の人達も一緒に頑張るの。だって、この世界はこの世界の人達のものなんだから。えっと……」
自分で言ってて、よくわからなくなってきちゃったけど、たぶん言いたいことは言えたような気がする、かな?
お兄ちゃんは真剣に聞いてくれていた。
眞彩が話し終わると、一度目を閉じてから頷く。
それから、笑顔を浮かべて口を開いた。
「ありがとう、眞彩ちゃん。そうだね、皆で頑張ればいいんだ。」
お兄ちゃんは手を伸ばして、眞彩の頭を撫でた。
前髪がクシャッ、てなる。
「でも、誰も傷ついて欲しくないから、出来るだけ頑張るよ。」
そう言ってお兄ちゃんは立ち上がり、また明日ね、って言って出てった。
眞彩は、また明日、って言って見送った。
お兄ちゃんが頑張り過ぎて、疲れてしまわないか心配になった……
「よし、眞彩も頑張っちゃおう!」
この頑張りが、きっとお兄ちゃんや皆の助けになるはずだー!
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
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