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「やぁぁぁっ!」

コウキがガーゴイルに向けて剣を振るった。

だが、あっさりと弾かれて、ダメージを与えることが出来ない。

「もうっ!どいてなさいよ!」

私はあたふたしているコウキを押しのけて前に出る。

「ご、ごめん、ソフィアちゃん。」

私は舌打ちをして、ガーゴイルへと立ち向かった。

爪攻撃をかいくぐりながら間合いを詰め、力を込めて剣を振るい、ガーゴイルの首を一撃で両断する。

ガーゴイルは力を失って、ただの石像となった。

「……ふぅ。」

とりあえず、目に見える範囲のモンスターは一掃出来た。

私は騎士隊の隊長に警戒を怠らないように命じると、コウキに一言言いたかったので、コウキに話し掛けた。

「コウキ、話があるんだけど。」

「あっ、ソフィアちゃん。その、さっきはごめんね。……役に立てなくて……。」

落ち込んだ表情。

情けない。

「コウキは前に出なくていいから。というより、戦いに参加しなくてもいいから。」

私はきっぱりと言い放つ。

「え?で、でも……」

戸惑うコウキ。

ため息をついてから、見下すような視線でコウキを睨んで言った。

「足手まとい。」

私の言いようにすっかり萎縮している。

何か言いたそうにしている。

私は畳み掛けてやることにした。

「あなた達『勇者』は便利な武器なの。必要な時に、必要な力を発揮してくれればいいんだから、余計なことしないで。」

「そんな、余計なことって……。」

「『勇者』なんて、魔王を倒すための兵器なんだから、黙ってなさいよ。」

少しきつく言いすぎたかもしれない。

コウキが悲しそうにうつむいている。

「ふん。」

やっぱり情けない。

私は顔を背けて、コウキから離れた。



私は一人、トリオンの南側を守る壁に座って佇んでいた。

風が私の金色の髪をなびかせる。

「……。」

膝を抱えて座ると、軽鎧が音を立てた。

少しだけ憂鬱。

あぁ、もう、さっきはなんであんな言い方しか出来なかったんだろう?

確かに、優柔不断そうで、頼りなさそうで、情けない感じだけど、トリオンを救ってくれた『勇者』には違いない。

だから、もっと友好的に接っしなきゃ。

いや、でも、それはそれで、つけあがられても嫌だし。

んー、だけど、悪い人じゃなさそう。

というより、悪いことが出来ないというか。

とりあえず、トリオンを治めるお父様の娘として、恥ずかしくない対応をしないと。

反省しながらぼんやりしていると、駆けてくる足音が聞こえた。

振り向くと、それはコウキだった。

「何か用?」

顔を背けて、ぶっきらぼうに尋ねる。

さっき反省したばっかりなのに。

「えっと、お腹空かない?サンドイッチ持ってきたんだけど。」

包みを掲げるコウキ。

美綺さんのお手製らしい。

確かに今日は動きっ放しだったので、少しお腹空いたかも。

……でも、なんか受け取り難い。

「いらないわよ。」

つい言ってしまった。

目に見えて、シュン、と残念そうな表情を浮かべるコウキ。

「……そっか、美味しいのに……。」

壁をよじ登って、私の隣りに座るコウキ。

包みを広げ始めた。

「……なんで、私の隣りにいるのよ?」

「ダメ?」

「……。」

私は返事をせずに、そっぽを向いた。

コウキはそれを承諾と受け取ったみたい。

それにしても、けっこう冷たいことを言ったのに、よく話し掛けることが出来るなぁ、と思う。

チラリとコウキのほうを見ると、しっかりお手拭きで手を拭いてから、サンドイッチを頬張っていた。

……美味しそうに食べるなぁ。

あ、目が合った。

「食べる?」

首をカクンと傾げて尋ねられた。

……不覚にも、ちょっと可愛いと思ってしまった。

「いらないって。コウキが食べちゃいなさいよ。」

私の言葉に頷いたコウキは、ガツガツと食べるのを再開した。

たぶん成長期っぽい。



「ねぇ、なんで私に話し掛けるのよ?嫌なこと言われたのに。」

食べ終わったコウキに尋ねてみた。

目をパチパチさせたコウキは、少し、うーん、と唸ってから口を開いた。

「一緒に戦う仲間だからじゃないかな。」

なんともシンプルな答えだ。

「……一緒に戦う仲間だから、嫌なこと言われても我慢して話し掛けてる、ってこと?」

うわぁ、意地悪な質問だ。

私、ひねくれてるよ。

自己嫌悪。

コウキは私の言葉に首を振った。

「ううん、そんなんじゃないよ。戦う力が足りないのはソフィアちゃんの言う通りなんだ。純粋に、僕の力だけで戦えたことはないんだよ。」

もっと力が欲しいと言うコウキ。

好きなものを守れる、ありとあらゆるものを助けることが出来る力をと。

「『勇者』だから、頑張らないといけないんだけど、『勇者』らしいことが出来てない自分が悔しい……。」

コウキが泣きそうな表情を浮かべた。

え?う?こんな時、どうしたらいいのよ?

慰めるとか?

わかんないし!

「な、泣くなぁ!」

いや、まだ泣いてないんだけどさ。

コウキはコクコクと頷いて答える。

どうにも、きつい言い方になるなぁ。

コウキみたいに、自分の想ってることを素直に伝えられたらいいのに。

うーん、コウキは素直すぎるような気がするけど。

私はどうしたらいいか悩んでいると、助け船のごとく私を呼ぶ声が聞こえた。

「ソフィア様ーっ!大変です!かなり手強いモンスターが現れました!」

騎士隊の副隊長だ。

隊長のほうは応戦しているらしい。

「わかったわ。行きましょう。」

副隊長と共に走り始めようとする。

その前にコウキへ、

「コウキは待ってなさい。絶対来たらダメだから。」

と忠告しておく。

「で、でも……。」

案の定、不満そうだ。

「ダメだからね!」

コウキは納得はしていないものの頷いた。

手強い敵なら、余計に連れていけない。

『勇者』の使い所を間違えてはいけないのもある。

もう一つは、こんな世界とは無縁なところが似合うコウキを帰してあげたい気持ちになったから。

よし、コウキが強くなりたいんなら、特訓とかしてあげよう。



思考を切り替え、モンスターの元へ。

騎士隊が応戦している敵を視認。

二つの首を持ち、知性が人並みにはありそうな気配の目。

背にはコウモリのような翼があり、手に鋭い爪があった。

「あれは……ツインヘッド・デビル!?」

強敵だ。とびっきりの。

一つ首の悪魔でも、かなりの強敵だというのに二つ首!

剣を構えて、奇跡を紡ぐために集中。

「『気斬』!」

力の込められた刃が敵に飛ぶ。

当たった、はずなんだけど、ダメージを与えた様子が無い。

「対魔法障壁を張ってるわね……。」

それなら剣で攻撃するまでのこと。

障壁を貫くまで、奇跡を使うのも手の一つだが、精神力を消費するのは得策ではない。

まだ相手の力量が測れていないから。

騎士隊の隊長との連携攻撃。

爪と剣のぶつかる音が辺りに響く。

動きは私のほうが少し早い。

「はぁっ!」

胴を斬る、が手応えが無い!?

隊長に目配せして、一旦距離を置いた。

「対物理障壁も張ってるのか……。」

なかなか器用なことをする敵だ。

こうなったら障壁を破るまで攻撃するしかない。

聖騎士の奇跡を織り混ぜつつ、攻撃を繰り返す。

『人間のクセにナカナカやるな。』

裂けるようにして口を開いたツインヘッド・デビルが始めてしゃべった。

『だがその程度デハ、我は殺せヌヨ。』

もう一つの首が口を開き、魔術を紡ぐ。

詠唱を止めようにも、敵にダメージを与えられない。

「来るわよ!」

隊長に警告を発っした。

『我紡ぐは炎。現れよ、火炎玉』

炎の玉が具現した。

私達に向かってそれは降り注ぐ。

その熱量は火傷ではすまない。

くっ、防御が間に合わない!

油断してた!?

少しでも抵抗するために意識を集中。

まともに食らえば大ダメージは必至。

「この盾はあらゆる炎を振り払う!絶対炎防御の盾!」

え?

この声は、コウキ!?

火竜のブレスさえも無効化した勇者の盾が展開した。

火炎玉があっさりと消え去る。

「大丈夫?ソフィアちゃん?」

心配そうに駆けてくるコウキ。

「ま、待ってなさい、って言ったじゃない!?」

ありがとう、と言おうとして思わず口走ったのはそんな言葉。

「だって心配だったから。」

本当の本気、心の底からの想いが込められた眼差しに何も言えなくなった。

『この力、勇者ダナ。』

敵は醜悪な笑みを浮かべると、標的をコウキに定めた気配。

私は隊長にコウキを守るように言う。

『我紡ぐは氷。現れよ、氷雪華』

炎の次は氷。

それは予想していた!

精神を集中して、奇跡を紡ぐ。

「『氷の防護円』!」

鋭い氷の礫を防ぐ。

なんとか私の力でも防げるみたいだ。

私の後ろに隊長、隊長の後ろにコウキ。

これならコウキを守れる。

「どうしますか、ソフィア様?」

隊長が不安を混じらせた口調で尋ねてくる。

「障壁が厄介ね……。」

対魔、対物理、のどちらかを破っても何重にもなっているため、ダメージが通らない。

さらに、二つ首のどちらかが障壁を修復させる呪文を唱えている。

攻防、共にかなり手強い。

「えっと、じゃあ、そのバリアーが破れればいいのかな?」

コウキがなんだ簡単じゃない、って感じで言った。

「それが出来れば苦労しないわよ。」

剣を構えて、敵の出方を窺う。

「あ、そっか、悩んでたから、ちょうどいいや。これに決めよ。」

「え?」

コウキは持っていた剣を鞘にしまうと、両手を包むようにして掲げた。

光が集まり、力あるものが生成される。

「結界破りの剣〜。」

紋様の入った剣が現れた。

たぶん、紋様に意味は無いが、あれは勇者の剣!

「えーと、ソフィアちゃん一番強いから正面ね。隊長さんは右。副隊長さんは左。僕は後ろに回って結界を斬るから。」

コウキがあれよあれよと作戦を決めてしまった。

「じゃあ行こうか。」

私達が返事をする間もなく、敵の後ろを取ろうと駆け出した。

あぁ、もう!やるしかないじゃない!

隊長と副隊長も駆け出す。

『フハハは、ナニをやるかは知らぬが無駄だヨ!』

敵の言葉は無視。

とりあえずはコウキがなんとかしなくちゃ全滅の危険性がある。

私達は引き付けることに専念だ。



敵は油断していた。

障壁に頼りすぎていたのだ。

背後から攻撃されたところで、障壁があるからとタカをくくっていたらしい。

「えいっ。」

『へっ?』

敵は聞いたことの無いようなマヌケな声を出した。

コウキの勇者の剣が、対魔、対物理障壁をあっさりと斬り裂き、さらに敵を真っ二つに斬ってしまった。

「あれ?弱くない?」

いや、強いんだよ?

本来の防御力は弱いんだろうけど、そもそも障壁を突破するのが難関だし。

それほど、勇者の武具は破格の強さなのだ。

ツインヘッド・デビルは息絶えて、崩れて砂となり散った。

それを見届けると、ほっ、と一息。

私は隊長と副隊長に休憩を取るように言った。

「ソフィアちゃんも休んだら?」

コウキは勇者の剣を光に還元していた。

そうだ、それについて、言いたいことがある。

「コウキ、話しがあるんだけど。」

「何?」

くっ!ほんわかした笑顔を浮かべても、容赦しないんだから!

「勇者の剣よ!なんで勝手に使うのよ?それはもっと使うところを考えないといけなかったの。切り札なんだから!」

コウキはキリっとした表情になった。

「な、何よ?」

ちょっとたじろぐ私。

「間違ってないよ。だって、ソフィアちゃんや隊長さんを助けなきゃ、って思ったんだ。目の前のピンチを見逃すことは出来ないよ。」

「でも、私達を助けたことで、もっと大勢の人を助けることが出来なくなったかもしれないのよ?」

『勇者』にはそれだけの力があるという。

だったら身近な個人を助けるよりは大勢を助けるべきだ。

「身近な人も、大勢の人も全員助ける。」

そんな、なんて大それた理想を真っ直ぐに言えるんだろう。

「無理よ。」

「大丈夫。ほら、ソフィアちゃんも、他の皆もいるし。ね?」

根拠は無い。

だけど、コウキの信頼しきった笑顔に、まぁいいか、と思ってしまった。

ん?ちょっと待てよ?

「……それって、他人まかせにしてない?」

「ははは、そんなことないよ〜。」

なんか、いきなりうさんくさくなったんだけど、気のせいかしら?

「……しょうがないわね。もうちょっと剣が使えるように、特訓してあげるわ。」

私は腰に手を当てて言い放った。

「え?ほんとに?」

なんだか嬉しそうなコウキ。

それを見た私、う?、なんか頬が熱い?

「べ、別に、コウキのためなんかじゃないんだから!トリオンの人達を守るためなんだからね!」

ちょっと、コウキ、笑ってないで、何か言いなさいよ!



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