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「今日もご出勤っと。忙しいねー。」

私は澄んだ空を見上げ、空気を一杯に吸い込んで気合いを入れた。

「あやつらも、よく飽きもせず攻めてくるのぅ。」

聖ちゃんも戦闘スタイルでスタンバイ。

両手にエクスカリバーと同じデザインの剣を持っている。

サイズは聖ちゃんの体格にあった大きさだ。

戦闘が始まると、一番前に立って戦う剣姫。

私のクラスは、前で戦うタイプじゃないから聖ちゃんは大活躍。

もちろん私も頑張ってるよ。

ヒラヒラでフワフワした衣装をこの身に纏って、あっ、もちろん露出度高め〜。

動き安さ重視ってとこ?

で、歌って踊ってみんなをサポートだ〜。

「毎日毎日、モンスターが襲ってくるけど、トリオンって、重要な場所だったりする?」

「ふむ、技術力は一番高いが、モンスターにとってはあまり関係無かろう。単純に墜とそうとしているに違いあるまい。恐怖と絶望で魔王の力が増すからのぅ。」

「それは厄介。てか、トリオンって墜ちるんだ?」

「中枢部を破壊すればの。もしくは東西南北にある浮遊装置を破壊すれば墜ちる。」

「うわぁ、それってやばくない?」

「守りきればよいだけじゃ。」

簡単に言ってくれちゃって。

かなり難しいことじゃない?

「じゃあ、五つの拠点を守りながら戦うと。街の人も守らないといけないから……明らかに人手不足じゃん。」

「だから、こうして剣である我も参戦しておるではないか。」

「そりゃまぁ、そうだけどねー。」

それでもまだまだ足りないよ。

けっこう一般人の人達も志願してるけど、まだ足りない。

やっぱりどうしても毎回の戦闘で死傷者は出るわけで、このままじゃじり貧。

詰んじゃうよ〜。

どうにかして、スカッと解決できるようなことがあればいいんだけど、そんな簡単に物事はうまくいかない。

その辺は『勇者』が鍵を握ってるみたいなんだけど、光ちゃんだけに重いものを背負わせるわけにはいかない。

全力で私も頑張るよ。

そんな風に決意を新たにしてたら、偵察隊の人から敵襲の合図が。

翼を持つモンスターが飛行能力の無いモンスターをひきつれて、次々とトリオンの空へ現れる。

引き付けてタイミング良く弓隊が一斉に矢を放って攻撃。

魔術師達も時間差で魔術を射つ。

それらをかいくぐってくるものは騎士隊が薙ぎ払った。

最近ではすっかり見慣れてしまった戦場の光景だ。

モンスターの容赦無い攻撃に勇気を奮って立ち向かうトリオンの人々。

「さて、歌いましょうか!戦の歌を!」

私も戦うんだ。

聖ちゃんが頷く。

基本的には私の護衛をする聖ちゃん。

数が少ない時は前に出て戦うけど、今日は数が多いので私の護衛。

私はステージに立つ。

ステージといっても、2メートルほどの高さの歌って踊るに困らない程度のスペース。

深呼吸。

リズムは戦場の足音。

コーラスは戦場の叫び声。

戦場の中で私は歌う。

勝利を掴むための歌、戦乙女の歌を。

遥かなる空の下で戦うもの達へ
勇ましく戦うその姿は語り継がれるだろう
大地を踏みしめて
両手を握りしめて
守りたいもの達のために戦え
その心に宿るのは希望という眩しい光
その陽射しは凍えるような闇を溶かし
夜明けと共に揺るぎない明日を迎える
伸びやかに、誰もに染み渡ることを想いながら心を込めて歌う。

体は自然と軽やかに、時に緩やかに、時に激しく舞う。

味方は士気高揚し、前へ前へと進んでいく。

敵は怯み、一歩、また一歩と後退っていく。

私は休むことなく、歌と踊りを続ける。

それはきっと運命を打ち破る心
目がくらむほどの輝きを放つ魂
思い出を守るのはあなた達
未来を守るのはあなた達
忘れることのない勇ましき心は
終末の風を吹き飛ばすハッピーエンドの風
戦場の怒号が治まっていく。

敗走するモンスターを追撃する騎士隊。

深追いしないように命令を飛ばす声が聞こえた。

「……ほっ、今日も終わった……。」

額から汗が伝い落ちていく。

体は熱く火照る。

息を整えながら辺りを見回すと、聖ちゃんがやってきた。

返り血を全身に浴びた様は、戦いの激しさを物語る。

もちろん聖ちゃん自体は無傷だ。

「お疲れじゃったな、美綺。」

「聖ちゃんもお疲れさま。」

お互いの健闘を称えあう。

今日も戦い抜いた。

心地よい疲労感。

ベットに身を投げ出してしまいたいが、交代の引き継ぎをやらないと。

贅沢を言うなら2、3日ほど、光ちゃんとダラダラしてたいな。

うーん、最近はラブが足りないね。

あとで、光ちゃんにベタベタして、光ちゃん分を補給しなきゃ。

そうと決まったら、お風呂入って、着替えて光ちゃんのところへダッシュだ!

ん?光ちゃんのシフトってどうだったっけ?

「聖ちゃんはこの後、ヒマかな?」

とりあえず、聖ちゃんをお風呂に入れてあげなきゃダメ。

「我は一休みしてから偵察隊に参加しようと思っているのだが。」

「もう、女の子なんだから身だしなみに気を付けないと!」

持っていたハンカチで顔についた血を拭ってあげる。

むー、なかなか取れないなぁ〜。

「いや、我は剣ゆえにそういったことは不要じゃ。」

大人しくフキフキされてる聖ちゃんはなかなか可愛いぜー。

「ダーメ。そんなことじゃ、光ちゃんに嫌われちゃうよー?」

「むぅ、そ、そうなのか?」

そんなわけないけど、連れだす口実〜。

聖ちゃん、ちょっと動揺?

はははー、光ちゃんも罪だねー。

「さっ、行こうか聖ちゃん。背中、流しっこしよー♪」

休息は大事。

戦い続けてると心が擦りきれると思う。

意識をちゃんと切り替えて、日常を大切にしよう。

だから流しっこ♪

光ちゃんともやりたいなぁー♪

ちっちゃい時みたいにね♪



お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)


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