TOP
戻る
「…もうすぐだよ、ラクス…。君の望んだ争いの無い世界は…。」
机の上にある唯一の私物であるラクスの写る写真。
それに語りかけるのは現プラント議長キラ・ヤマト。
かの英雄アークエンジェルと共に、前議長であったギルバート・デュンダルの企みを暴き、そしてロード・ジブリールをも打倒したキラ・ヤマトだが、失ったものもあった。それはラクス・クライン。
最愛の人であり、キラを導いた存在でもあった。
ふと、浮かんでくる守るべきものを守れなかった記憶。
キラの目の前でたくさんの人が死んでいった。
そしてこの手で奪ったたくさんの命。
憎しみに駆られて殺したシン・アスカ。
もう二度とあんな思いはしたくない。
そのためにキラは自分の持つ力を発揮した。
世界の誰よりも優れた力を。
妬み憎しまれるこの力を。
今、キラ・ヤマトの名の下にプラントは平和を築いている。
双子であるカガリ・ユラ・アスハを首長とするオーブとも良好な同盟関係にあり、アスラン・ザラはカガリの公私ともに支えとなっている。
連合とは必ずしも良好な関係とはいい難い。
ブルーコスモスの盟主であったロード・ジブリールは死んだものの、未だにブルーコスモスの思想は残っている。
その根は深い。
執務室にて様々な記憶に思いをはせるキラ。
そこに通信が入る。
モニターに映るのは評議会のメンバーの一人。
『議長!連合が突然の宣戦布告を!』
キラは画面を切り替える。
そこには全チャンネルに向けた連合の宣戦布告の映像が映る。
血のバレンタインの時と同じ悲劇が繰り返されるのか?
連合の主張はコーディネーターの完全なる支配と搾取。
対等貿易が実現して、両者は和解したように見えていたが、やはりブルーコスモスはそれが気に入らないのだ。
無条件降伏に屈しない限りは、青き清浄なる世界のために核を撃ちこむことをも辞さないと言う。
緊急収集で会議が開かれる。
「我々プラントは、こんな連合の身勝手な要求には屈しない!」
評議会のメンバーの一人が叫ぶ。
皆がそれにうなずく。
誰もが自由を得るべくその想いを一つにする。
キラは立ち上がり皆を見回すと口を開いた。
「戦いましょう。我等コーディネーターの自由と争いを無くすために。」
世界は動き始める。
いくつもの人々の想いが交錯しながら……。
「連合がプラントに宣戦布告だと!?」
アスランはそれを聞いて椅子から勢いよく立ち上がる。
「あぁ、今、全チャンネルで流されている。プラントはどう対応するのだろうな……。」
カガリはアスランとは対照的に冷静だ。
「……キラ。」
「同盟は結んではいるがオーブはその理念に基づき中立を保つぞ。だが決してただ見ているだけにはしない。」
「あぁ、わかってる。もう二度とあんな悲劇を繰り返してはいけないんだ…。」
あの時、ラクスを失ってからのキラはただひたすらに力を求めて、その想いを貫こうとした。
弱音を吐くことも無く、涙を見せること無く……。
アスランはそんな少しバランスを崩すだけで壊れてしまいそうなキラが心配だった。
オーブ市街。
街頭テレビに映る連合の宣戦布告。
「お姉ちゃん、また戦争が起こるかもしれないね…。」
「そうね…。」
ルナマリアとメイリンが連れ立って歩いている。
花束を購入して、目的地を目指す。
それはシンの墓。
やっぱり生まれ故郷のほうがいいだろうと墓は作られた。
今、オーブに住む二人は1ヶ月に一度は墓参りに来ている。
「戦争って嫌よね…」
花を捧げて呟くように言うルナマリア。
メイリンはそれには答えず黙祷した。
「また戦争になるのかしら…。」
「だろうな。こんな無茶苦茶な要求をプラントがのむ訳がないぜ」
不安そうなマリューの肩を叩くムゥ。
「まっ、プラントにはキラがいるんだ。あいつなら最善の道を選ぶさ。」
「そうね…。」
不沈艦と呼ばれたアークエンジェルは前回の戦いで、メサイアへの決死の特攻によりとうとう沈んだ。
あれから、数年が経ちマリューはあの時記憶を取り戻したムゥと共にいる。
今は二人でマルキオ導師のもとに身を寄せていた。
「よーう、キラ。」
顔に傷跡を残す男がキラに声をかける。
「お久しぶりです、バルトフェルドさん。」
「ああ、お互い忙しかったからなぁ。」
バルトフェルドはエターナルが墜とされた時ガイアで出撃していたため死を免れた。
その後、プラントに戻りザフトの総指揮に就く。
「まぁ、俺の方はふんぞりかえってるだけでよかったから楽だったがね。」
「軍の準備の方はどうですか?」
「いつでも大丈夫だ。それにしても議長自ら出撃とはな。」
「えぇ、その方が守れるものが多いでしょうから…。」
「まぁそうだろうな。機体は要望通りのものを用意してある。」
「…ありがとうございます。」
「あまり気負うなよ。」
バルトフェルドの忠告に、キラは黙って会釈すると歩き出した。
その手に新たな剣を得るために……。
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
TOP
戻る