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刀夜と共に戦った魔王城の近くにある小さな村。

魔王城が近いということもあり人は少なく、他の場所へ移りたいという人が多いらしい。

前は泣いてばかりだったから村の事情を知らなかったが、私達が思っていたほど魔王の脅威は無かったようなのだ。

確かに他の街よりもモンスターの出現頻度は高かったものの、襲われることは少なかったという話。

だけど、現在は状況が悪い。

以前よりもモンスターが凶暴化し、それでなくても少ない村の人口は激減しているらしいのだ。

刻々と悪化しているところに私達は再召喚された。

以前にも泊まった宿にて状況整理。

「村が朽ちてゆくのを見過ごすわけにはいかないわね……。」

本音では一刻も早く刀夜を生き返らせるために行動したいところだけど、

刀夜のことを想えば想うほど、刀夜だったらこうするだろうということをしなければと思ってしまう。

「そうだな。大きな街まで移動させよう。たぶん、ここよりマシだろう。」

衛星も同じ考え。

かといって、私達の目的もおろそかにはしたくない。

「とりあえず、ベンドに続く街道までは皆さんで護衛しましょう。そこから状況次第ということで。」

櫻さんの提案に頷く。

「じゃあ、早速行動に移そうよ!」

勢いよく立ち上がり、そのまま駆け出してしまいそうな菫ちゃん。

「まずは村の代表の人に話を通さないといけませんね。」

メイディアさんも柔らかそうな髪を揺らして勢いよく立ち上がる。

皆に負けてはいられない。

「有言実行。早速村長さんの所へ行こう。」

私達は息つく暇もなく村長さんの所へ向かった。

場所は宿の女将さんに尋ねるとすぐに教えてもらえた。

特に迷うこともなく村長さんの家へ到着。

快く迎えてくれた村長さんは、私達を家に招き入れるとお茶を出してくれた。

「たしか、前に訪れて下さったのは3ヶ月程前のことですね。

その時はたいしたおもてなしも出来ませんでしたが……。」

温厚そうな初老の村長さん。

「いえ、お気になさらず。今日はお話があって訪ねさせていただきました。急な話なんですが……。」

櫻さんが村人を移動させようという話を切りだした。

ベンドまでの護衛を約束する。

しかし、村長さんはいまいち気が乗らないというような顔をしていた。

何か気にかかっていることでもあるのだろうか?

「現在残っている村人は、年寄りや病人がほとんどなのです。その者達を連れての移住は困難でしょう……。」

諦めてしまった末に浮かぶ笑顔。

村長のそんな表情に私達は何も言えなくなってしまう。

だけど、だからといって見捨てていくことなんて出来ない。

「私達が必ず皆さんを連れていきます。

私達に出来ることは限られているけど、困っている人達が目に付いたからには助けます。

それが『勇者』ってものでしょう?」

手を差しのべるには勇気が必要だ。

差し出された手を取るにも勇気が必要だ。

その論理からすると、きっと誰にでも『勇者』になれる素質があるに違いない。

私は刀夜の手を取り、今がある。

私も刀夜のように手を差しのべたいんだ。

誰だって救いを求めているはずだから。

「……気持ちは嬉しいのです。しかし、勇者様達の足を引っ張ることになります……。」

村長さんは自分達のことは忘れて下さいと言う。

その力をもっとたくさんのために使ってくれと。

目の前にある小に目をつぶり、未だ見ぬ大のために力を奮ってくれと。

村長さんの言う通り、ここで立ち止まっている暇は無いのかもしれない。

この村のことを忘れ、すぐに私達の目的のために動いたほうがよいのかもしれない。

……それは何か違う気がする。

上手く言えないけど、違う気がするんだ。

きっと後悔する。

この時、助けておかなかったことを後悔すると思う。

でも、後悔すると思うから助けるなんて自己満足だよ……。

正義の押し売り。

間違っているのは私?

そうだ、そもそも私ごときが何かを救おうなんて間違っている。

人を惹き付けることも出来ないただの凡人が、自分さえも救えそうにないのになんて傲慢な……。

どうしようもない渦巻く闇に心が引きずりこまれてゆく。

何も考えられなくなってゆく。

その時、脳裏に一筋の光が入れ込んだ気がした。

『君は君の思った通りにやればいいんだよ』

沈んでゆく心にそんな言葉が響いた。

それは波紋のように広がり、心を震わせる。

私のよく知っている声だった。

泣いてしまいそうなほど焦がれた声。

「……刀夜?」

辺りを見渡しても、怪訝な顔をしている衛星達しかいない。

幻聴?

刀夜を求めるあまりに聴こえた妄想?

それでも一番聴きたかった声。

『僕はいつでもココにいるよ。少しだけしか手を伸ばすことが出来ないけど、僕も一緒にいるから。』

浮かぶあがるイメージは遙かなる地平線。

それはきっと幻想。

心地良すぎる揺り篭。

刀夜と私がいる真っ白な世界で、全てを包み込むような微笑みを浮かべた刀夜の手を掴んだ。

『だから、振り向かずに前に進んで。』

刀夜が光の粒となってサラサラと舞い散る。

私はその光を優しく抱き締めた。

私の中に宿る刀夜の想いと、刀夜への想いが交わる。

とめどなく湧いてくる力。

前を向いて走り出せそうな力。

深呼吸。

改めて村長さんへと語りかける。

「私達が必ず安全な場所までお連れします。どうか私達を信じて連いてきてください。」

澄み渡る心から溢れ出た言葉。

信じるに足る根拠も何も無いけど、

私達はやってみせる。

刀夜なら絶対にそうするから。

村長さんは何か眩しいような表情をしていた。

まるで神々しい存在と出会ったような。

あぁ、感嘆の声を上げると口を開いた。

「わかりました。私達は勇者様を信じてみます。」

その目には生きる活力が戻っていた。

希望の光。

それを灯すことが出来たのは、間違いなく刀夜のおかげだ。

「今のシルビアの眼差し、刀夜とそっくりだな。」

衛星が私の肩を叩いて嬉しそうに言った。

刀夜に少しでも近づくことが出来たのならそれ以上に嬉しいことはない。

「それでは準備を始めて下さい。すぐにでも出発しましょう。」

村長さんは頷き、村中に連絡をした。

突然のことであったが、1人に1人にしっかりと説明をすれば納得してもらえた。

私達は各自バラけて準備を手伝うことに。

病人は櫻の司祭の奇跡を使って、程度によるが緩和して連れていく。

滞りなく準備が進み、夜が明けた。

ベンドへ向けて村人の移動を開始した・・・。



あとがきっぽいもの。
作者「キャラクター人気投票やりまーす。ちょい下にありまーす。」
リーア「まずは前半メンバーからですね。」
作者「いえっす。このメンバー以外に投票したいキャラがいる場合はweb拍手に名前を書いて下さい。
ちゃんと集計しますよ〜。で、投票結果は存在力に影響されます。あと、ノベルへの出現頻度とか。」
リーア「それだけですかぁ〜?」
作者「ん〜、ベスト3ぐらいまではキャラ絵でも描きましょう!画力は期待しない方向で!」
リーア「全力を尽くすべしですよ!」
作者「それではみなさんよろしくお願いしまーす!」
リーア「お願いしまーす♪」
                              おわり



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