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「シルビア!刀夜を俺達で生き返らせるんだ!」
衛星は突然やってくると、その勢いのままにそんな言葉を放った。
生き返らせる?
衛星は何を言ってるの?
そんなこと無理に決まってるじゃない。
「出来るんだよ!こっちの世界で無理でも、あっちの世界なら!シルビア!目を醒ませ!いつものように毅然としろ!」
衛星の言葉が頭の中を渦巻いていた。
止まっていた思考能力が動き始める。
「刀夜とまた会いたいんだろう?刀夜を抱き締めたいんだろう?」
心に熱が通り始めた。
熱は全身を駆け巡り、体に活力を与える。
「刀夜の笑顔を取り戻したいんだろう?」
私はコクコクと何度も頷く。
「……会いたい、刀夜に会いたい!」
かすれてしまった声で私は私の想いを口にした。
衛星は力強く頷く。
私達は揺るぎない決意をもって、次の召喚を待った……。
夜、23時を少し回ったぐらいの時間。
ここはまだまだ光が消えることはない。
「騎理君、なんだかぼんやりしてるけど、考えごと?」
腕を組む暁実が俺を覗き込んで尋ねてくる。
「ん?あぁ、別に。」
面倒なので適当に答える。
「うわぁー、なんか余計に気になるんですけど。」
教えて、教えて、って感じでまとわりつく。
おまえは犬か?、と思った。
どうでもいいけどな。
「……色々あった。説明が面倒だからそれだけ。」
説明したところで、脳の心配をされるのがオチだろう。
「ふーん。大変だったの?」
「別に。疲れただけだった。」
まぁ、慎悟に任せていたから楽といえば楽だった。
体を動かすのに疲れただけ。
考えるのは慎悟の仕事。
面倒なことはおまかせ。
慎悟なら率先してやってくれるしな。
「そっかぁー。騎理君も何かと忙しいんだねぇ〜。」
納得したように頷く暁実。
空気が読める子は面倒が無くて助かる。
しばらく暁実の軽快なトークに相槌を打っていると、前方に見知った顔を見つけた。
「よう、仁。」
黒いジャケットを着込んで、サングラスをかけた仁が歩いていた。
「あぁ、騎理か。」
どうやら仕事が終わったような感じだ。
いつもならそっけなく通り過ぎていくが、今日は立ち止まって煙草に火をつけていたりする。
「仁も今日の集まりはサボりか?」
「ああ。会長からの仕事を優先にした。どうせ会長には仕事の報告をしなきゃならんからな。その時にでも聞けばいい。」
携帯灰皿に灰を落としながら話す仁。
「騎理はデートか?彼女だろ?」
仁は暁実をチラリと見て言った。
「彼女じゃないけど、デートだ。」
「何人かいる彼女候補中の一人ですっ♪」
暁実は俺にさらに密着して存在をアピールした。
「……いつか刺されるぜ。」
仁が呆れたような口調で言った。
「おまえには言われたくない。」
たぶん、俺よりも刺されそうなのは仁だ。
今日は仕事帰りで一人なのだろうが、見かけるたびにいつも違う女の子を連れていた。
いや、女の子じゃなかったりもしたが。
「ははっ、まぁ、お互い長生きしようぜ。」
携帯灰皿に煙草を押し込むと、仁は背を向けて去っていった。
「大丈夫!私は刺さないから!正妻にはなりたいけど我慢する!」
暁実が冗談めかして言った。
「刺したきゃ刺しとけばいんじゃね?どうせ俺は抵抗しないし。」
再び歩き出しながら俺は呟くように言った。
「他の子はどうか知らないけど、私は騎理君をそこまで憎めないなぁ。ちょっとは嫉妬したりもするけどね。」
俺の胸に人指し指でのの字を書く暁実。
表情はなんとなくイタズラっ子に見えた。
「……。」
返す言葉が思い付かない。
より深く言葉を探そうとしたが、面倒なのでやめた。
「騎理君ってさ、ぶっきらぼうだけど、なんだかんだいって優しいからみんな好きになるんだよ。」
ニコッと微笑む暁実。
思わず目をそらしてしまった。
「…優しくないよ。」
「優しいよ。」
「そんなことない。」
「優しいの♪」
これ以上言ったところで暁実の言葉は変わりそうにない。
俺はもうなんでもいいや、と思って黙って歩いた。
「ねぇ、これからどうする?」
スパッと話を切り替える暁実。
「暁実にまかせる。」
解散でもいいし、まだ二人でいてもいい。
どちらでも構わないそんな気分。
「じゃあ、今日はお泊まり決定!ラブラブしよー♪」
手を引かれて連れていかれるのは、休憩所があるほうへ。
「……あー、久しぶりな気がする。」
「溜ってる?」
「そうかも。」
「私の身体、もつかしら?」
きゃはー、って感じで身をくねらせる暁実。
「……。」
ノーコメント。
「優しくしてね?」
パチッと可愛くウィンクする暁実。
「気分次第。」
俺は短く答えて夜の街に溶けた。
お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)
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