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包み込むような光の粒から解き放たれた。
チカチカする光が薄れていき、刀夜達は目を開ける。
そこは仄暗く、灰色の雲と息苦しくなるような空気に支配された場所だった。
「…やばい雰囲気だ。」
衛星が油断なく辺りを見回す。木々は枯れ、大地は荒れていた。
「ここは町……なんでしょうか?」
メイディアが不安な表情で町だと思った原因である半壊した家、壊された井戸、かろうじて残っている道を見つめる。
「なんだか天気悪いよね。」
刀夜が仄暗い空を見上げる。口調は、今日の天気を確認するような軽いものだ。
こんな状況でも、いつものペースを崩さない刀夜に衛星達は心が安らいだ。
「ここは王道にのっとり、情報収集をするべきでしょう。」
櫻が提案する。衛星達は異論無く頷く。
「でもこんなとこで、情報収集なんて出来るの?」
菫の言葉はもっともだった。ここに人の気配は無い。
「…そうね。とりあえず歩き回ってみるしかないでしょ?」
シルビアはお手上げ、といった感じで肩をすくめる。
みなもそれに賛成と頷く中、刀夜は違った。
ぼんやりと遠くを見ていた刀夜は、視線の方向を指差した。
「ねぇ、あっちにお城があるから行ってみない?」
そこにあるのは禍々しい黒い城。
負の存在そのものであるかのような歪さは、潜在意識の領域で恐怖を感じる。
衛星達は、あえてそれの存在を見て見ぬフリをしていたのだが、刀夜はなに食わぬ顔だ。
「刀夜がそういうなら行こうぜ!」
「決定よね!」
「刀夜様の行く所ならどこまでも!」
「迷う必要はありませんね。」
「と、刀夜がどうしても、って言うならついていってあげるんだから!」
刀夜騎士団に怖いものは無い。あるとすれば刀夜に嫌われることのみ。
てか、刀夜のカリスマ性の前にその程度の恐怖など打ち消されるのだ。
灰色の地面を踏みしめて一行は黒き城を目指した。
仄暗い空は時折雷を落とし、枯れた木を焼き尽くす。
「まさかとは思うが、魔王の城だったりしないよな?」
衛星は半笑いで冗談めいて言った。
それなのに、刀夜以外のメンバーは笑えなかった。
「僕達の目的は魔王を倒すことでしょ?それなら好都合じゃないかな?」
刀夜はにっこり笑ってそう言った。
アハッ、と笑うその姿は、騎士団の士気を取り戻すのに充分だった。
「刀夜の言う通りね。ここで倒してしまえばさっさと帰れるもの。」
「えぇ、シルビアさんと同意見です。早く帰りましょう。」
シルビアが不敵に笑い、櫻が冷静に答える。
「よーし、刀夜ぁー、レッツゴー!」
菫が刀夜の手を掴んで走り出す。
「うわぁ、菫ちゃん待ってよー!」
「待たないもーん!」
走る速度を落とさず、城門のほうに走っていく。他のメンバーも、
「あはははー、待てよ刀夜ぁー。」
といった感じで、この場所の雰囲気を完全に無視して走り始めた。
たくましいというか、なんというか、やはり彼らは刀夜騎士団なのである。
「とうっ!」
朽ちかけた木製の城門に蹴りを入れる菫。バカッと音を立てて割れ落ちる城門。
「うわぁー、すごいね菫ちゃん。」
素直に感嘆の声を上げる刀夜。
「こんなの楽勝~。」
照れながらも胸をそらしてブイサインである。
「体力だけが菫の取り柄ですから。」
「ムキーッ!お姉ちゃんのバカー!」
ヒュンッと鋭いパンチが繰りだされる。
しかし、櫻はいとも簡単に片手でいなした。
「力だけでは私に勝てませんよ?」(ニヤリ)
「むぅ……。」
悔しそうな菫に対し、涼しげな櫻だった。
「あはは、仲が良いんだね。」
和やかに城に入る。
やはり城内も外見同様に朽ちかけており、埃と澱んだ空気しかない。
先頭に立つ菫は、蜘蛛の巣を払い、床に注意しながら廊下を進む。
もちろん刀夜がケガをしないようにである。
しかし、刀夜の好奇心は止められない。
「これなんだろう?」
壁に明らかに不自然なでっぱり。
言わずもがなトラップである。にも関わらず刀夜はそれに触ろうとする。
「いけません刀夜様。それは罠です。」
櫻がとっさに刀夜の腕を掴んで止める。
「罠?そっか。そうだよね、そういうのもあるよね。僕、そこまで考えてなかった…。ごめんね、みんなに迷惑かけるところだった……。」
刀夜が泣きそうに言った。
後悔と悲しみの念が渦巻き、周りのものの心にも同じ感情が流れ込む。
「いえいえ、いいんですよ!刀夜様は罠なんか恐れずに進んで下さい!刀夜様の行く手を阻むものを排除するのが私達の役目です!」
櫻が熱く語る。騎士団は頷く。
「刀夜には出てるものを触る権利があるの!むしろ、義務!さぁ、こんな風に!」
シルビアが刀夜の手を掴む。そして片手は櫻を一歩前へ押す。
『???』
刀夜と櫻がシルビアは何をするんだろう?、と思った瞬間、刀夜の手を引っ張り、櫻の出てる場所。
まぁ、あれだ、豊満な胸である。
それをガッシリと掴ませる。
「~!!?」
櫻の思考が停止する。ダメとか嫌とかの感情は無いが、とりあえず今は単純に驚きしかない。
「うわぁ、大きくて柔らかいや。シルビアのより大きいかな?」
モニュモニュと絶妙な力加減で櫻の胸を吟味する刀夜。
「と、刀夜様?その、あの……。」
櫻は戸惑いながらも、刀夜のモニュモニュに無抵抗である。
「ちなみに私は美乳だから。どう?刀夜の絶技は?」
シルビアの手は離れ、刀夜は楽しそうに櫻の胸をモニュモニュしている。
赤子が母親のものをそうするように。
そう、刀夜のお触りには一切の下心が無いのだ!
「……。」
菫が自分の胸を見下ろす。なんだか微妙な気分になった。
「心配するな。刀夜に好みは無い。どんなオッパイも揉むぜ。」
衛星の頼もしい言葉。菫は自分が考えたことを見透かされてしまったことに顔を赤らめた。
「不潔だーっ!」
「ハハハハー。」
菫のパンチを衛星はことごとく避ける。
不毛な戦いが続く。
「メイディアのも柔らかいね。温かくて、気持ちいいや。」
なんとなく刀夜はメイディアの胸もモニュモニュしていた。無意識である。
ちなみに櫻はクタッとして、荒い息になっていた。
「はぁ……はぁ、刀夜様、恐るべし……。」
頬を赤く染めて悩ましげな櫻だった。
「刀夜様、その、や、優しくお願いします・・・。」
ある意味手加減無用の刀夜。自分のやっていることがどういうことか、理解していないあたり始末が悪かったりする。
ニコニコしながらモニュモニュし続ける刀夜。
刀夜の手の中でメイディアのオッパイが絶えず形を変え、うねる。
次第にメイディアの息遣いは荒くなり、瞳が潤む。
「刀夜、そろそろ止めようね。後でいくらでも揉んでいいから。」
このまま刀夜のやりたいようにやらせておくと、女性陣が動けなくなる。もちろん自分も含めて。
「でもシルビアがやらせたんだけどなー。」
「お黙り。」
衛星のツッコミを冷酷に黙らせた。
「うん、わかったー。」
メイディアのオッパイから手を離す。メイディアのほうが名残惜しそうなのは頂点秘密である。
「……では、そろそろ先に進みましょう。」
気を取り直した櫻が、着崩れた制服を直しながら言った。頬は赤いままである。
ご機嫌な刀夜を先頭に城の中を進む一同だった。
ふと、刀夜が後ろを振り向く。
「ねぇ、菫ちゃん。今度、触ってもいい?」
無邪気な笑顔の刀夜。
「え?う、うん。……えっ?」
ひたすら動揺の菫だったとさ。
迷路にも似た回廊を進む。
いくつもの階段を上がり、静かな廊下には刀夜達の足音しか聞こえない。
「この深い闇の気配みたいなもの……この階の上からかな?」
刀夜が天井、そのさらに向こうの上の階を見上げた。
騎士団もつられて上を見る。
「確かに嫌な気配がします……。」
櫻の表情がスッ、と冷たく研ぎ澄まされる。感情を抑え、臨戦体勢に入ったのだ。
「怖いのがいるな。やっぱり魔王……か?」
衛星が呟く。刀夜達は押し黙って、濃厚な闇へと続く階段を上がった。
階段を登ったそこには重厚な扉があった。
扉の横には悪趣味な悪魔をモチーフにしたような像が建つ。
刀夜達は刀夜の背丈の3倍はある扉を押し開ける。
こぼれ出る闇が恐怖心を煽ろうとする。
しかし、そんなものに屈する刀夜と騎士団では無かった。
「フッ、よく来たな。」
ロウソクの光と窓の外の雷光のみが照らすこの部屋に、玉座にふんぞりかえった男がただ一人いた。
その黒衣の男から闇の気配が発せられ、刀夜達を威圧する。
「……あなたが魔王ですか?」
一歩前に出たシルビアがプレッシャーに臆せず尋ねる。
「そうだ。知っててきたんだろう?俺を倒すために。」
衛星が無言で槍を構える。櫻がどこからかダガーを構え、菫が拳を構えた。
シルビアとメイディアが杖を構えて、魔術の準備をする。
「僕達はあなたに恨みなんてありません。それでも、僕達の力でこの世界が救えるなら、あなたを倒します。」
刀夜の右手に光の粒子が集まり収束する。刀夜の剣が出現する。
「ふん、勇者か。いいだろう、俺を倒してみるがいい!」
黒衣を翻し、玉座から立ち上がる。その手には黒い剣が現れた。
「行こう、みんな!」
刀夜の号令と共に、戦いの火蓋が切って落とされた。
「うおおぉぉーっ!」
衛星が槍を突きだす。しかし、軽々と避けられてしまう。
シルビアが強化の魔術を衛星、櫻、菫の武器に施す。
「なかなか良い動きだが、まだまだ!」
魔王の攻撃。衛星に軽く剣を振るう。
「なめるな!」
衛星は盾でそれを振り払う。そして、衛星の影から櫻と菫が踊りでる。魔王を挟むように側面から攻撃を仕掛ける。
「ふっ!」
「とりゃあっ!」
櫻の攻撃は黒衣の下の鎧に阻まれ、菫の拳は余裕を持って避けられた。
「えぇい!」
刀夜の剣が命中する。しかし、またしても鎧に阻まれた。
「はっ、軽いな!」
魔王はその黒髪をかきあげて、余裕の表情を浮かべる。
「守りよ!」
メイディアが前衛組にシールドの魔術をかける。
「賢明な判断だ。俺を楽しませろよ!」
魔王が笑う。そこに衛星の槍が迫るが当たらない。
シルビアとメイディアが身体能力を上げる魔術を唱える。
魔王の剣が衛星の体に命中した。
「衛星!」
刀夜が魔王に切りつけながら身を案じる。
「大丈夫だ、鎧で防いだ!」
衛星は刀夜に笑いかけると槍を構える。
「フンっ、運のいい奴だ。」
櫻と菫の攻撃をさばきながら魔王が不敵に笑う。
「笑ってられるのもいまのうちだ!」
衛星の槍が鋭く突きだされた。速度の乗ったその突きが魔王に初のダメージを与えた。
「やるな、だが!」
魔王が瞬時に反撃。剣が衛星を捉えた。
「チッ、かすった!」
避けきれずに、ごく浅い傷を受ける。
それをカバーするように櫻と菫の連携が入るが、魔王の体術は凄まじく、ダメージを与えられない。
「やはり、こんなものか!」
魔王が期待はずれとも言うように叫ぶ。
「いえ、必ず倒してみせるよ!」
刀夜が無手で櫻の後ろから現れる。
魔王は刀夜が不意に現れたことと、何も持っていないことに戸惑い、反応出来なかった。
懐に入った刀夜は魔王の鎧を触る。
その手には光の粒子が集まっていた。
「ぐはっ!?」
鎧の下、肉体への突然の衝撃に魔王は刀夜から距離を取る。
刀夜も追撃はせずに、剣を出して構える。
「…今、何をした?発勁?いや、違うな…。」
魔王は衝撃が来る前に刀夜の手に光の粒子が集まっていたのを見ていた。
「勇者の武具の力か。なかなか楽しませてくれる!」
心の底から楽しそうに笑う魔王。
刀夜は衛星に小声で話す。
「・・・魔王は大分手加減してるね。」
「そうみたいだな。倒すなら今のうちだ。」
「うん。僕は衛星の動きに合わせるから同時に攻撃しよう。」
「わかった。」
二人が駆け出す。魔王はここでも少しとまどう。
さっきまでと刀夜の速度が違うことに。
「…可愛い顔してやってくれるな。わざと速度を落として様子を見ていたというわけか。」
「おぉぉぉぉーっ!」
衛星の会心の一撃が迫る。
「クッ!?」
受け止めきれずに、魔王は槍をうける。
その隙を逃さずに刀夜の攻撃が入る。それも捌ききれずに、ダメージが入った。
思わぬダメージに魔王の攻撃は空振りに終わり、次は櫻と菫が踏み込んでいく。
その時、魔王の雰囲気が変わった。
膨れあがるのはまごうことなき殺気。
「……もう、遊びは終わりだーっ!」
危険な気配に櫻と菫は攻撃を中断して距離を取る。
「本気にさせちまったようだな…。」
衛星は冷や汗が出るのを感じながら呟く。
「思ったより早かったね。」
刀夜は魔王の殺気の前に平然としながら、剣を構える。
「もうやめだ。やっぱり手加減なんて性に合わない!」
魔王の攻撃が衛星に向かう。今までと比べると、とんでもなく速かった。
「くぅっ!?」
反応出来ずに衛星は斬られた。苦痛の声を上げる。深手だった。
「ハハハハハーッ!レベルが違うんだよ!その程度で倒せるわけがないだろう魔王を!」
騎士団の顔にかげりがよぎる。
やはり魔王に挑むには早すぎたんだと後悔の念が渦巻く。
「衛星、少し時間を稼いでくれるかな?」
しかし、刀夜は、まだ、こんな状況でも笑顔だった。
その笑顔は絶望をぶっ飛ばす、明るい希望だった。
「わかった!いくらでも時間を稼いでやる!」
衛星は刀夜に負けないよう、精一杯の笑顔を浮かべた。
刀夜の笑顔でもって心が奮い立つ。
精悍な顔つきで魔王に立ち向かう。
「ふん、まだやるのか、愚かな。」
魔王は見下したような、さげすんだ表情で剣を構えた。
「刀夜に頼まれたら断れないさ!」
衛星は清々しい顔だ。
「ねぇ、櫻さんと菫ちゃん、精神力を分けてくれない?」
ニコッと微笑みかける刀夜。
「どうぞ、遠慮なく使って下さい。刀夜様のものですから。」
櫻が忠誠を誓うような心で刀夜へ語る。
「刀夜が必要なら惜しまないよ!どうせ、使ってないしね。」
菫がニカッと笑う。刀夜の笑顔につられて出た、心からの笑顔。
「ありがとう。」
二人から精神力が流れ込んでくる。
温かいそれは、刀夜の剣へと収束していく。
「…あれは?」
衛星を切りつけながらも刀夜のほうへと目を向ける魔王。
あの光の収束が気になった。
「それが刀夜の剣の特殊能力?」
シルビアが光に目を奪われながら尋ねる。
刀夜は頷くと魔王のほうへ向き直り、空いた手をかざす。
「勇者の鎧。発動。」
光の粒子が魔王へとまとわりつく。
「な、なんだ!?」
魔王は勇者の鎧というからには刀夜が身に付けるものと思っていたのだ。
「これは、力が入らない!?」
刀夜の鎧が魔王の身体をを包む。
その鎧は軽く、扱いやすいはずなのに体がおかしかった。
「その鎧は闇に属するもの力を半減させるんだ。」
刀夜が剣を天にかざした。
「くそっ、剣が使えない!」
筋力が落ちて剣を重く感じた魔王は剣を光へと無散させる。
「衛星、離れて。」
衛星は頷くと魔王から離れる。
魔王は衛星から離れまいとするが、敏捷性が半減していて追い付けない。
「勇者の剣、発動。」
天にかざした剣が発光し始める。
それは次第にまぶしくなり、この暗い部屋を照らす。
それは太陽の輝きにも似た、希望の光。
闇を照らし、絶望を打ち砕く勇者の剣。
「こんな隠し玉を!?あれはヤバい!クソックソッ!全然、力が使えない!」
鎧を打ち破ることも出来ない、防ぐことは出来ない。
その先にあるのは死。
「勇者の剣、開放!いけぇーっ!!!」
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