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振り下ろされた光の剣は、溢れそうな光をほとばしらせながら魔王を捉えた。

・・・かに見えたがここでアクシデントが起こった。

光の剣の高すぎる出力のせいで刀夜の周りに力場が発生し、脆くなっていた城の地面が陥没したのだ。

城が崩れるほどでは無いにしろ、光の剣の照準を外すには充分だった。

凄まじい光が魔王の横を走り抜ける。

魔王は手をかざして光に目を焼かれるのを防いだ。

「くっ!?」

刀夜はなんとか持ち直せないかと試みるがダメだった。

剣から放たれた強烈な光は魔王を外れて、城の壁を破壊し、空に一条の光の線を走らせた。

どこまでも遠いところまで届いた光はあっという間に見えなくなった。

「外したか・・・まだ俺には運があるようだな!」

横目で破壊跡と空に走った光を見た。

魔王はその破壊力に戦慄しながらも、己の運に感謝する。

「……みんな、ごめんね……。」

刀夜の表情が沈む。必殺の一撃を外し、注ぎ込んだ精神力を消費してしまった今、事態は悪化した。

刀夜はその事実にうなだれる。

「気にするな刀夜!俺達はまだ戦える!」

衛星が歯を喰いしばり、血を流しながらも立ち上がる。

刀夜を元気付けるために。

「そうだよ。あの鎧の力が働いている間に倒しちゃえばいいのよ!」

菫が大声を上げて、絶望を吹っ飛ばすように叫ぶ。

刀夜にその声が届くように。

「刀夜様にそんな顔は似合いません。笑って下さい!」

櫻が背筋を伸ばし、毅然に言い放つ。

刀夜にもその姿を見せて欲しいから。

「刀夜!私はまだあきらめないよ。だから刀夜も!」

シルビアがまぶしい笑顔で刀夜を見つめる。

刀夜にその笑顔を取り戻すために。

騎士団の士気は落ちていなかった。

刀夜の見せた光は騎士団の心に光をともしたのだ。

刀夜は熱くなる心のままに笑顔を浮かべた。

「みんな・・・ありがとう。!」

光を失った剣を構えて刀夜は走った。

みんなの力を合わせて魔王を討つために。




「能力の半減、これはきついな……。」

基本能力に加えて、レベルまで半減しているのだ。

魔王は本来の力が発揮出来ずにイライラしていた。

「さすがに喚ばれたものだけのことはある。」

なんとか最小限のダメージで食い止めるも、刀夜と衛星の攻撃が体力を削っていった。

「うらぁぁーっ!」

衛星の槍が魔王を捉える。

今までのダメージの蓄積で魔王はそれを捌ききれなかった。

「チッ!やるな!」

無手であるため反撃するにもリーチが足りない。

しかも衛星に気を取られてるうちに、櫻と菫が神速の踏み込みをみせた。

「よそ見はしないことです!」

「そこぉ!」

櫻のダガーが鎧の隙間に入りこみ切りつけ、菫の拳が魔王の顎を叩く。

魔術師のシルビアとメイディアは何も出来ずに戦いを見守る。

補助魔術を使い終わった今何もできないでいた。

攻撃魔術は味方も巻き込むからだ。

その時、刀夜が声を張り上げた。

「みんな!鎧の効果がきれるよ!」

刀夜の警告。

鎧が光の粒子となって大気に溶けていった。

「ふははははっ!時間切れだ!」

魔王が何かをつぶやく。すると魔王の体を黒い粒子が纏わりついた。

そこには魔王の本来の鎧である漆黒の鎧があった。

「やっと戻ったか・・・。」

魔王の威圧感が増していく。

そして手には黒い剣が現れた。

感触を確かめるように2、3度剣を振る。

黒の剣に魔王の意識がいっている隙に衛星が駆け出す。

「叩みかけることは無理だったか……だが、まだだ!」

奥歯を噛み締めた必死の形相の衛星の槍が魔王に届いた。

槍が魔王のわき腹を掠める。しかし浅かった。

「ふん、感覚が合わなかったか。だが、もうわかった。・・・おまえ達の攻撃は、もう、届かない。」

衛星の槍を受けながらも、魔王はニヤリと笑った。

膨れあがる殺気に衛星は思わず飛び退いた。

「なにしてんのよ!」

菫が躊躇せずに踏み込む。

「待ちなさい、菫!」

櫻の静止する声。しかし、菫は攻撃のモーションに入っていた。

「無駄だ。」

魔王が無造作に剣を振るう。

その剣速は菫の目には捉えられなかった。

「きゃあっ!」

菫の体に赤い線が走る。浅くはない傷。

菫はなんとか後退するが膝をつく。

魔王はただつまらなそうにそれを見ていた。

「菫ッ!」

櫻が菫に駆け寄る。

癒しの奇跡を使い、菫の傷を塞ぐ。

「ありがと、お姉ちゃん……。」

傷は塞がっても、菫の表情は暗い。

自分の攻撃をあんな簡単に避けられ、なおかつ魔王の攻撃に反応出来なかったことにショックを受けているのだ。

「……このままじゃ、全滅……。」

青ざめたシルビアの口から聞いたことの無い、弱気な言葉がでた。

衛星は傷だらけの体で無言のまま立ちつくしている。

メイディアの瞳にも恐怖の色が濃かった。

世界の修正力が働いて、こういうことはあるものだと理解したところで、圧倒的力の前での恐怖はあがなえない。

「……みんな、あとは僕にまかせて。」

刀夜が一歩踏み出す。

何かを決意したかのような表情。

それは明日へと希望を繋ごうとするものの笑顔だった。

「何が出来るんだよ、刀夜。剣と鎧の能力だって1日に1回だけの力なんだろ?」

「そうよ!刀夜こそ、ここはまかせて逃げてよ!」

衛星とシルビアが刀夜のことを想って叫んだ。

なぜだか、刀夜が遥か遠い場所にいってしまうような気がしたから。

「私達は刀夜様の剣であり、盾です。刀夜様は下がってください!」

「私にまかせなさい!刀夜より体力も力もあるんだから!」

「刀夜様は上に立つものです!私なんかよりずっと……、だから!」

櫻と菫が泣きそうになりながら刀夜の前に立つ。メイディアの瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。

それはきっと手の届かない場所にいってしまうと思ったから。

刀夜はいつもお世話になりっぱなしだなぁ、と思いながら衛星とシルビアに笑いかけた。

櫻と菫はやっぱり姉妹なんだなぁ、と思って笑いかけ、メイディアには泣いてほしくないなぁ、と思って笑いかけた。

そして、刀夜は騎士団が遮るのを優しく止めさせると、魔王の前へと歩んだ。

「おまえ一人で足止めでもするか?それとも一人で俺に勝つか?」

魔王が黒衣をなびかせ言い放つ。

刀夜は自然体になり目を閉じる。

光の剣で開いた壁の穴から外の空気を感じる。

刀夜はそれを吸い込み、体内に行き渡らせる。

ゆっくりと目を開けて口を開いた。

「……勝つよ。」

刀夜の剣を構える。

その瞳は静かに燃える炎をたたえていた。

「……おもしろい。」

魔王も剣を構える。

「……刀夜。」

シルビアの表情が歪む。

刀夜の優しさは全てを包みこむような優しさ。

それはいつしかシルビア達にとってかけがえのないものになった。

しかし、その果てない優しさは刀夜自身を省みることのないもの。

今、まさに、刀夜は、自分が傷つくことをものともせずに・・・。

シルビアの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。




刀夜は自分の中に流れこんでくる力を感じた。

自分の存在が増大する。

それは自分の器を超えた存在力。

「おまえ、今、レベルが上がった!?」

存在力の流れを感じとった魔王が驚愕の表情を浮かべる。
「応援する声が聞こえたんだ。それなら、頑張らないといけないじゃない?」

刀夜の全てを包み込む笑顔。

それは騎士団がいつも見ていたいと思っている笑顔。

それはもう、取り返すことの出来ないものになったような気がして騎士団の表情が歪む。

刀夜の周りに光の粒子が集まる。

そして身体が発光し始めた。

「勇者の鎧、レベル2発動……。」

絡み付く光の粒子は、刀夜の身体を何か別のものに変えてしまうのではと思うほどに包み込む。

制服は消し飛び、上半身は冷たい空気にさらされる。

しかし、光の粒子が身体を覆い、積み重なっていく。

幾重にも織り上げられた光の粒子。

それは背中に集まり光の翼を形成した。

「・・・黄金の・・・翼・・・!?」

美しいそれに目を奪われる騎士団と魔王。

刀夜の中性的な顔立ちと黄金に輝く翼が、まるで刀夜を天使かのように見せた。

フワリと刀夜の身体が浮かぶ。

「これは・・・いや、まさか・・・。」

魔王は背中に冷や汗が伝うのを感じた。

膨れあがる刀夜の存在力に戦慄を感じざるをえない。

まぶしい輝きを放つ黄金の翼を広げた刀夜は歌うように言った。

「さぁ、決着をつけよう!」

「あぁ、俺も本気でやらせてもらう!」

魔王から黒い粒子が噴出す。

その粒子は魔王を取り巻き、力あるものを形成する。

黒衣がバキバキッと音を立てて変化していく。

鳥と竜の中間のような翼が漆黒の鎧に生えた。

そして漆黒の鎧は低い唸り声をあげる。

鎧の銅に当たる部分に目と口が現れた。

それは獣のそのものの雄叫びをあげ、辺りへと響いた。

「いくぜ!黒の剣撃!」

黒の剣から放たれた無差別に広がる黒色のカマイタチ。

部屋一杯に広がるそれは刀夜だけでなく騎士団も射程に捉えていた。

「盾よ、在れ!」

刀夜が不可視の盾を自分と騎士団の前に展開する。

その盾の前にカマイタチは無散した。

「やるな!」

魔王が翼を展開し、飛翔する。

刀夜も黄金の翼をはためかせて高く飛翔した。

刀夜と魔王の剣がぶつかる。

凄まじい衝撃が城の内部を壊す。

刀夜は騎士団をチラリと見て、場所を変えるべく魔王を誘導する。

魔王も刀夜の意図を理解し、あえてそれにのった。

もはや、騎士団に興味はなく、刀夜との一騎打ちを望んでいるのだ。

「刀夜……。」

刀夜の展開した不可視の力場に守られながら、戦いの行く末を見守る騎士団。

何も出来ない自分達が歯がゆかった。

ただ刀夜の勝利を信じることしか出来なかった。



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