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『勇者だ!勇者がやってくれたぞ!』

『ありがとうございます勇者様!』

『勇者様のおかげで助かった!』

『勇者が帰ってきてくれた!』

口々に勇者の凱旋を讃える民衆。

心からの称賛に違いないが、晴れやかな気持ちになることは無かった。

(……いつまで続くんだ、この戦いは……。)

店長は力の入らなくなった右足を引きずりながら、縁達のもとへ帰った。

「ご苦労様でした。」

縁を歩ける程度まで治癒したリセミア。

少し顔色が良くないものの、店長の帰りを微笑みを浮かべて出迎えた。

「……店長って強かったんだな。」

軋む体を堪えて立ち上がる。

息をしなくなったゆかりが眠るように死んでいた。

リセミアが防腐の奇跡をかけているので、ゆかりの遺体はこのままの状態を保つことが出来る。

「……すまない、俺がもっと早く駆けつけていれば……。」

「……いいって。あの時は仕方なかったし。それに蘇生出来るからさ。さて、リセミアさん。どんな代償でも払うぜ?」

開き直ったような表情を浮かべる縁。

「えぇ。貴方には一人の人生に匹敵する代償を払ってもらうわ。」

リセミアの妖艶な微笑みが縁の背中をゾクリとさせた。

「リセミア、まずは場所を変えよう。今後のこともある。」

店長はゆかりを抱え上げた。

リセミアは頷き大聖堂へ向かうことにした。

荒れた道をゆく。

紅い夕日を背にして。

リセミアが大聖堂の扉を開けると、司祭達が出迎えた。

教皇のご機嫌を取ろうと労をねぎらう。

リセミアはその言葉を受け流して、指示を下す。

「すぐに復興作業を始めて下さい。あと、各地に派遣した神官戦士団を呼び戻すこと。

そして、最優先事項です。『勇者』を集めなさい。

10年前の悲劇を繰り返さないためにも、魔王を討ちます。」

手早く指示をすると、司祭達が各々の役目のために走った。

大聖堂にはリセミア達と、幾人かの避難民のみになった。

「フフッ、愚劣な司祭達もさすがにフットワークが軽いわね。」

「……あれだけの被害が出たんだ。当然だろう。」

店長は、お姫様抱っこで抱えていたゆかりを抱えなおしながら言った。

「店長!縁!」

大聖堂に避難していた時也が、二人の姿を見て駆け寄ってきた。

二人の無事を喜ぶ笑顔を浮かべていたが、店長の腕の中のゆかりを見て一気に表情が青ざめた。

「……ゆかりちゃんに何が……。」

時也が店長に問いかけると、無言で首を振った。

膝の力が抜けて、よろめく。

とっさに縁が時也を支えて、口を開いた。

「大丈夫だ。そこのリセミア、って人に蘇生してもらえることになったから。」

「そ、そうなんだ。」

時也は一番辛いはずの縁に支えられて、自分の不甲斐無さに情けなくなった。

「で、すぐに蘇生してもらえるのか?それとも支払いのほうが先なのか?」

閉じられたまぶたの向かうの瞳へ、挑むような目つきで縁が問いかけた。

リセミアは、せっかちねぇ、と言ってから、

「『蘇生』の奇跡は、私一人でも使えるけど万全を期して複数人での儀式形式にするわ。

『防腐』の奇跡の効果が切れるのが一週間。

だから一週間以内には行うけど、明日、明後日はまだ忙しいだろうから無理。

でも、大丈夫。必ず蘇生するから少し待ちなさいな。」

子供に諭すように話されて、少しムッとした縁だったが、我慢をして頷いた。

「縁、支払うって何をさ?」

時也の疑問。

縁もどんなものかは知らないが、蘇生のための代金みたいなものだと答えた。



「……もう、一週間経つのか。」

俺は小高い丘の上からリプルの街を見下ろしながら呟いた。

外套が風に揺れた。

街の人口は半分に減ったものの、生き残った人々は必死に復興へ向けて活動している。

姉ちゃんの蘇生は先日行われ、10日後に目覚めるそうだ。

気持ち良さそうな寝顔を思い出してつい笑ってしまった。

左目に手をやると、まだ慣れることのない眼帯。

姉ちゃんを蘇生してもらった代償。

それは、『魔眼』の管理を受け継ぐこと。

『魔眼を統べる王』とやらを俺が受け継ぐことだった。

リセミアの言葉を思い出す。

「『魔眼』、いえ『魔王の眼』の管理をしてもらいます。要は、『魔眼を統べる王』になってもらうわけですがね。」

「待て!それは縁には荷が重すぎる!」

店長が驚愕の声で言った。

「あら、私もそう言われて『魔眼王』になったんですよ?なんとかなるものです。レベルもギリギリ足りてますし、大丈夫でしょう。」

俺は現在レベル5。

店長が目立つ格好で、居酒屋やら出前をやらせていたのは、少しでも存在力を高めるためだったらしい。

ついでに言えば、店長が俺達を居酒屋で働くよう頼んできたのは『勇者』である俺達を、自分と同じ境遇にさせないように保護するためだったとか。

知らないところで随分店長に助けられていたようだ。

そして、俺は民衆に戦えと求められた時と、モンスターとの死闘でレベルが上がったというわけだ。

レベル5以上なら、『魔眼王』になる資格があるそうだ。

「その『魔眼王』は、何をするんだ?『魔王の眼』の管理と言われても、もっと具体的な説明をしてくれ。」

俺が説明を求めると、リセミアはやっぱり、せっかちね、と前置きしてから話し始めた。

「なによりも優先するのが、『魔王の眼』を魔王の手から守ることよ。『魔王の眼』の能力も強いけど、これが魔王に戻れば存在力が強固になるから倍は強くなる。自分の命より優先だから。」

ニヤリッ、と笑って脅すように言ったリセミア。

リセミアはその『魔王の眼』を下腹、というか子宮に封印していたそうだ。

神官の高位の奇跡で、『移植』というものがあって、それを使ったのだと。

体内に封印しておくのが一番気付かれにくいらしいのだが、この前は魔王本人が現れたためにすぐに見つかったというわけだ。

大聖堂の中に入れば見つからなかったのだろうが、魔王の所業が見過ごせなかったと。

……子宮に封印していたから、子供を産むことは出来なかったらしい。

「結婚していませんでしたから、気にしてませんけど。それに神官ですからね。主に仕えないと。」

「あんたらの主、って信仰上、救世主なんだろ?ということは、『勇者』のことなんじゃねぇの?」

俺がそう言ったら、リセミアは何故か店長のほうを向いて、

「そうなんですけど、どっかの英雄さんは私の気持ちなんか気付かずに、居酒屋なんか経営してるんですよ。」

「?」

店長は?を頭の上に浮かべていた。

店長の鈍感さに笑いながら、リセミアに続きを促す。

「『魔王の眼』だけが管理対象ではありません。『魔法の眼』の管理も対象なのです。」

まさしく『魔眼を統べる王』ということだ。

『魔法の眼』の中にも『魔王の眼』に匹敵する強力なものが存在している。

そういう危険なものを回収、場合によっては封印などして管理するのが『魔眼を統べる王』、『魔眼王』としての役目だそうだ。

リセミアは教皇としての立場もあるから、最近は『魔眼王』としての仕事は滞りがちだったと言う。

「分かった。俺にも出来る、ってんなら『魔眼王』にでもなんにでもなってやるさ。」

俺がそう言ったら、リセミアはここで重大なことを言いやがったのだ。

「『魔眼王』である間は、元の世界には帰れませんけどね。」

一瞬思考が止まった。

だが、姉ちゃんが帰れなくなるか、俺が帰れなくなるかの違いに過ぎない。

姉ちゃんや、時也みたいな穏和な奴らは帰ったほうがいいに決まっている。

「あんたも俺が『魔眼王』を受け継げば、帰れるんだろ?」

「いえ、私は長い間『魔眼王』をやってましたから接続が切れてます。でも、もうこの世界に骨を埋める気ですから問題無しです。」

確固たる意志が垣間見える表情だった。

リセミアの両目は『魔眼』である。

後天的に得たもので、『移植』の奇跡を使って埋め込んだものだ。

時と場合により、管理している『魔眼』の中から選んで『移植』する。

強力なものは常時発動型が多いので、自然と両目を閉じていることになるらしい。

「そっか。あんたも、店長も大変だったんだな。」

それから、俺は『魔眼王』になった。

リセミアから『摘出』の奇跡で取り出した『魔王の眼』を、『移植』で左目に埋め込んでもらった。

『魔王の眼』は、所持者のレベルの半分(切り上げ)以下のものをただ視るだけで殺せる魔眼。

俺なら3以下のものを視るだけで殺すことが出来る。

一般市民なら簡単に皆殺しにすることが出来る、最悪の魔眼だ。

ふとした拍子で、眼を開いてしまわないように眼帯を付けた。

他の『魔眼』の管理は、引き続きリセミアに行ってもらうことにした。

まずは、レベル上げをしないと話しにならないらしい。

『魔眼』を守る力と、『魔眼』を制御する力が必要なんだと。

だから、俺は旅に出ることにした。

レベル上げと、教会の人手不足で、『勇者』探しを手伝うためもある。

「そろそろ行くぞ。」

店長も一緒である。

鈍った腕を鍛え治すのと、旧友の『勇者』を訪ねるそうだ。

ついでに俺を鍛えるんだとさ。

「わかってるって。」

俺はリプルの街並みを右目に焼き付けると、店長の背中を追った。

「てか、もう店長じゃないよな?」

居酒屋を時也に譲った店長。

時也の好きにしろ、と男前で太っ腹である。

「そうだな。」

「なんて呼んだほうがいい?」

店長は少し考えてから口を開いた。

「隊長だな。」

「ほー、なぜに?」

「勇者部隊の隊長だからだ。」

「OK。だったらこれから隊長な。」

隊長と並んで歩く。 片目でも、空はどこまでも広かった……。




今回からちょろっと、書いてみます↓ あとがきっぽいもの。
作者「ゆかりシナリオ第2章、終了!」
麻衣「ゆかりシナリオと言いながら、ゆかりさん後半ほとんどしゃべってないですね。」
作者「復活の指輪での蘇生なら、もっと会話あったよ!」
麻衣「その場合って、縁さんが『魔眼王』になりませんよね?」
作者「だね。それはそれで別の話が紡がれていたでしょう。」
麻衣「次は光騎さん達ですね。」
作者「うむ。まぁ、間に何か挟むかもしれんがのぉ……。」

お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)


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