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「遅刻するぅ〜!!」

朝の登校時間、自転車で爆走しているのはゆかりだった。

「姉ちゃん、寝すぎ」

横を併走するのは縁。

遅刻常習の縁はなぜか余裕の表情。

というのも、遅刻しても気にしないだけなのだが。

「昨日もバイトだったんだからしょうがないじゃん!」

ツインテールを揺らして叫ぶゆかり。

「それは自己責任だって。自分で決めてやってんだから、バイトも学校もちゃんとやらないと。」

珍しく真面目に答える縁。

ゆかりは、う〜、と唸ってから、

「遅刻ばっかの縁に、言われたくないよ!」

がおー、と言い放つ。

「ははは、そりゃそうだ。」

縁は苦笑いを浮かべて言った。

とりあえず全力疾走。

縁はゆかりに合わせているので、全力というわけでもないが。

とにかく急いだ。

「なんとか間に合うかも!?」

曲がり角を最小限のブレーキで曲がり、ペダルを踏み込む。

回転数を上げて、学校前の軽い登り坂を一気に行こうと思ったその時、白い光が目の前をちらついた。

「これって!?」

横の縁を見るゆかり。

縁は頷く。

「召喚っぽいな。」

体が白い粒子に変換されていく。

目の奥が白くなっていく感じ。

ゆかりはわなわなと震えて、叫んだ。

「急いだ意味ないじゃん!これじゃあ、遅刻どころか欠席だし!」

なんだか、とても悔しそうなゆかり。

なだめるように縁が口を開いた。

「その辺はメイディアさん家がどうにかしてくれるらしいじゃん。学校の経営者?らしいから。」

「それはそうだけど、なんか損した気分なのよ!」

「……そっすか。」

気分的な問題は、どうしようもない気がしたので、機嫌が直るまで放置することにした縁であった。

白い粒子に分解され、世界が変わった。

「おわぁっ!?」

白の部屋への具現。

前と違ったのは、自転車に乗っていたこと。

思わずブレーキを忘れて、ガイドのいる場所に突っ込んでいきそうになったり。

「姉ちゃん!ブレーキ、ブレーキ!」

縁の声でブレーキをつかみ、ハンドルを切ってギリギリ突っ込む手前で停止。

ゆかりは冷や汗を流しながら、ほっ、とため息。

ガイドも、ほっ、とため息。

「よ、よく来たな。」

ちょっとドキドキしながらガイドが挨拶の言葉。

ゆかりと縁は自転車を降りて、軽く頭を下げた。

「なんだか慌ただしい登場だね。」

そして、軽い足取りでオッドアイの時也が現れた。

「いやぁ、姉ちゃんが遅刻しそうだってんで、慌てちゃってさー」

縁が説明すると、ゆかりは頬を膨らませてぷいっと横を向く。

ちょっと不機嫌のようだ。

「あー、それでお主達はクラスチェンジをするのかね?」

ガイドが尋ねる。

三人は顔を見合わせ、その場にしゃがみこんで相談を始めた。

「僕はこのままのつもりなんだけど、ゆかりちゃん達は?」

時也が尋ねた。

縁は少しだけ考えてから、

「俺もこのままで。特に変える必要なし。」

(まぁ、密かに姉ちゃん達を守る、ってのには盗賊のままのほうがよさそうだし)

そんなことを考えながら、姉ちゃんは?、とゆかりに尋ねる。

「私は変えてみよっかなぁ……。前回、神官の意味無かったし。」

ぶっちゃけ、ウェイトレスをした記憶しかなかった。

「で、何にすんだよ?てか、スカートの中が見えてるから気をつけろ。」

しゃがんでるため、少しばかり無防備なゆかり。

縁に指摘され、スカートを巻き付ける感じでガード。

ついでに縁をぶっ飛ばしておいた。

「教えてやったんじゃん、てか、姉弟だからいいじゃねぇか……」

みぞおちを押さえてうずくまる縁。

時也は恐怖で青冷めていた。

ちなみに、それを見ていたガイドも。

「親しき仲にも礼儀あり!」

クワッ、と言い放つゆかりだった。

コクコクと頷く時也とガイド。

縁はうめきながら、とりあえずこの場を収めるためにも頷いておいた。

そして、クラスの一覧を見ながら、ゆかりのクラスを検討する。

しかし、なかなか決まらなかった。

「よし、なんかもう、フィーリングで『魔術師』にする。」

一覧表の魔術師のところを指差してゆかりは言った。

「えー、そんな適当でいいのかよ?てか、普通だな、おい。」

不満の声を上げる縁。

「いいんじゃない?便利そうだし。火力が足りない時とかに使えそうだよ。」

基本、料理のことしか考えていない時也であった。

「はい、決定ね。まぁどうせウェイトレスだしね……。」

なにか諦めた感じのゆかりは遠くを見ながら呟いた。

「まぁなー。」

縁もうんうんと頷く。

三人はなんとなく出稼ぎの気分で、白の部屋を後にした。



意識を支配する白い光が消え去り、瞳を開けるとそこは5日間を過ごした居酒屋『一灯料男』の一部屋。

なにげに二階の畳が敷きつめられた和室である。

ちなみに、自転車持参である。

「……チャリ、どうするよ?」

「とりあえず、保留でいいんじゃない?」

和室に自転車を放置して、まずは店長に挨拶しにいくことに。

階段を降りて店内へ。

厨房を見ると、店長が包丁を研いでいた。

ゆかり達に気付いて顔を上げる。

『ただいま戻りました!』

三人はなんとなく、ビシッと敬礼。

「うむ。」

店長は三人を一瞬だけ見ると深く頷き、包丁を研ぐ手を動かす。

そして、ゆかり達は現状を耳にした。

まず、客が来ていないこと。

由々しき問題であるはずだが、なぜか、店長はあまり気にしていなかった。

モンスターの凶暴化。

ゆかり達は実際に遭遇していないし、戦闘もしていないので、いまいち実感が無かった。

しかし、聖都リプルには避難民が溢れているという。

「だからといって、何か出来るというわけでもないけどなー。」

縁が率直な感想を呟いた。

「まぁ、何か出来たらいいなぁー、ぐらいは思うけどね。一般人レベルには。」

店長の煎れてくれたお茶を飲みつつ、店内でくつろぐ三人。

店長は研ぎ終わった包丁をしまいながら続きを語った。

「神殿の神官、神官戦士、聖騎士達はリプルの防衛と各地の防衛のために派遣され、今、休む間も無く活動している。」

今の状況は、10年前と変わらないほど悪い状態だ、と店長は言った。

「10年前も同じようなことがあったんですか?」

新ウェイトレス服に着替えてみた、ゆかりが言う。

自分達がいない間に、かなりの数が仕上がっていたので、ぶっちゃけ引いたゆかり。

しかし、着用しているのは店長の仕上げっぷりが素晴らしかったから。

「うむ。この世界は同じようなことを繰り返しているのだ。根本を絶たない限り、無限に続くだろう。」

店長はお茶を煎れなおすと、それぞれの湯飲みに注ぐ。

「根本って?やっぱり魔王?」

息を吹きかけて、お茶を冷まそうとする縁。

「おそらく違う。幾度も魔王は倒されてきたが、やつは何度でも現れる。何か……何かを我らは勘違いしているのかもしれない……」

店長の重く、静かな声がゆかり達に響いた。

答えの解らない問いに押し黙った……。



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