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ザ、ザザザ、ザザザザザザ――

耳障りな音。

空が、青いはずの空が黒かった。

不安と苛立ちがただひたすらに高まる。

聖都リプルは、迫りくる脅威に絶望しつつあった。



大聖堂。

どの司祭よりも立派な法衣を纏うもの、救世主信仰の現教皇が厳かに現れる。

「結界を張ります。」

教皇の言葉は絶対である。

閉じられた瞳のために表情は読めないが、司祭にとってそんなことは関係無かった。

ただ、指示を仰ぎ、現状に対応出来ればよかった。

自分達の身の安全を確保するために。

リプルは結界を発動させた。



少し時を遡る。

ゆかり達は、今日も炊き出しに精をだしていた。

「まぁ、根本的な解決にはなってないんだけどね〜。」

時也がお椀に味噌汁を注ぎながら言った。

「その辺は他の連中におまかせで。」

縁はウェイターの格好で、それを配りまくった。

「それにしても、あっちのほうの空、天気悪いね。」

今日のゆかりは、割烹着風ウェイトレス(改)である。

ゆかりの視線のほうには、黒い空があった。

見れば見るほど、曇り空なんかではなくて、もっと闇に近い黒色だと、本能で理解。

ふつふつと湧いてくる危機感。

「……大丈夫なはずだ。」

「?」

店長の呟いた言葉の意味はわからなかった。

ゆかりはその意味を尋ねようと思った。

しかし、その時リプルに異変が起こる。

リプルを囲むようにして配置された塔から淡い光が溢れ、それはリプル全体を包みこむ。

「なんだか優しい光ですね。」

「あぁ。あれはリプルを守る光だ。あれが発動すれば、上級のモンスターでも手を出すことは出来ない。」

店長の説明に、ほっ、と胸を撫でおろす。

「てか、やっぱりモンスターなんだ。」

空を埋め尽くす闇を見て言う時也。

呑気な口調だが、内心は不安だらけ。

あの光景を見たものに不安が生まれないはずは無かった。

「少し席を外す。お前達、何かあれば神官の指示に従え。」

ゆかり達が頷くと、店長は去っていった。

「どこ行くんだろ?」

ゆかりが首を傾げる。

「さてねー。ちょっとトイレ、って感じじゃなかったし。」

リプルを守る光が時也の不安だった心を落ち着かせた。

とりあえずは炊き出しに専念する二人。

しかし、縁は不安を拭えないでいた。

(あの光が無くなったら、とんでもないことになりそうだ……。)

リプルを優しく包んでいる光。

今は、闇の侵入を抑える光に頼るしかなかった。



闇の軍勢がリプルを囲む。

地と空に数えきれないモンスターの群れ、群れ、群れ。

地を叩き、うねり、波打つ。

空を汚し、ばたつき、うごめく。

しかし、聖なる光に阻まれて動けない。

焦れて光に挑むものは軒並、無意味に焼かれて死滅。

獲物を前にしておあずけをくらったような状態。

その時、モンスター共が動いた。

モーセが海を割ったように、モンスターの海が割れた。

荘厳と言っても過言では無い光景。

その道を往くのは、この世で最も濃い闇を纏うモノ。

外見は少年にも青年にも見えるが、漂う雰囲気の中には老成した、くたびれた印象もあった。

その眼差しは、憎しみを抱き、哀しみを捉える。

口元に浮かんでいるのは、愛を嘲笑う綻び。

歪みそのもの故に、純粋なるそれは、世界の誰もがこう呼んだ。

魔王、と。



我はリプルを囲む光を見上げた。

「クックックッ、さすがに対抗策を講じてくるか。今の我では手こずるな。」

少し触ってみようか。

ジュウッといい音。

さすがは聖なる光。

いい感じの焼け具合。

はははっ、ただれた感じがどうにも情けないねぇ〜。

さて、どうしようか?

「こじ開けるしかないか。」

結論なんていとも簡単に出ていた。

破壊衝動のままに、目の前のものを叩き潰して進むのみ。

それが我には一番似合う。

魔王は魔王らしく、全て踏みにじるべし。

光の結界に両手をかける。

ジリジリと失われていく肉を無視して、気合一発、力を込めた。

「オオォォオォォ!」

指が焼ける、ただれる、千切れる、吹っ飛んでいく。

皮膚がめくりあがり、筋肉、神経共に断裂。

むぅ、ちっとも動きやしない。

肉が保たないな。

補充、補充。

「獣よ、我が肉と成るがいい。」

闇より生まれしモノを統べる我。

闇が闇を取り込むことは道理に適っている。

近くにたむろしている獣共を無差別に引き寄せる。

ブラックホールみたいだろう?

モテモテだね!

ズルズルと取り込む。

せっせと吸収、融合。

味とかあれば、食も進むのに。

使えないやつらだー。

いやいや、部下にあたるのはよくない。

そもそも味覚が無いのは我だし。

おぉー、人間食って、味覚を付けてみようかな!

暇つぶしにはいいかもね!

テンション上がってきたかも!

そうと決まれば、この結界を引き千切ってやろうじゃないかー!

さっきよりも力を込めてやる。

我が背筋よー、今こそ我に力を〜、ってか?

ギキキキキッ、ジジジジジジッ

なかなか骨が折れる。

ちょびっとしか開いてないな。

焼かれっ放しなので、こっちも肉を補充しっ放し。

おあぁぁ〜、超痺れるぜ〜。

バチバチするぅ〜。

焼けて、痺れて、刺激的ぃ〜。

ふははは、遊んでないで本気出そ。

ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ――

結界が少しずつ開かれていく。

力ずくの無理矢理。

強姦してるんじゃないよ?

違う、違うって〜。

クックックッ、膜を破ってる感覚だけどね!

ようやく、顔が入るくらいは開けたぜ。

「さぁて、細かいのから行ってもらうか。」

絵的に格好悪いが、まぁ、仕方ない。

闇である我から、闇であるモンスター共を創り出す。

この場合、口から吐き出すんだけど。

オエーッ、ってね。

もうちょっと穴をほぐしたら、絵はよくなるよ。

ほんと。

結界の向こう側に、鼠ほどのサイズのモンスターを送りこむ。

まずは、結界を作っている場所の捜索。

あとは適当に人間をかじっちゃって下さい。

クチャッと踏み潰されてもめげないように。

とりあえず、まだまだこじ開けながら肉を喰らいて、我が肉とし、生ける肉を解き放つ。

なんか循環?

ちょっと違うかもー。

気にしない、気にしない。

おぉっ?ネズミちゃん(仮)達、いい感じで暴れてるじゃん。

泣いたり、わめいたりの悲鳴って、耳に心地良いよね。

これを聞くと力が湧いてくるってもんだ。

頑張るぞ、っと。

ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ――

上半身はいける?

ここまできたら、人間サイズもいっとく?

腹から足が飛び出る。

徐々に体から、違う体が創りだされる。

行ってらっしゃい、我が息子!えっ?娘?

どっちでもいいよ。

親父でも、お袋でもない我だし。

とりあえず、ネズミちゃん(仮)達と協力して結界を潰す方向で。

あっ、人間には軽く天誅を与えちゃって下さい。

んー、我も参加したいなぁ〜。

ヒーヒー、言わせてぇなぁ〜。

もうちょい我慢。

我慢したほうが、後でもっと気持ちいいかもしれないじゃん!

さぁ、開け!

守ってばかりで、本当に、守りたいものを守れるのかな!?

手遅れになっても知らないぜ!

早く来いよ『勇者』!

手の鳴るほうへ!

殺してやるから!

殺られっ放しは、性に合わない。

殺られたら殺り返す。

以前のようにはいかないぜ?



お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)


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