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体が勝手に動いて、敵を刻む。

生きるためにあがく。

例え、醜く見えても。

姉の魔術の支援を受けながら、体が動かなくなるまで戦おうとする姿は修羅。

「おおぉぉぉぉっ!」

ナイフはすぐに使えなくなった。

そこからは手足が唯一の武器。

指で突き、払い、刻んでやる。

片腕を盾に姉を防御。

血が噴き出るのを利用し、めくらまし。

蹴り殺しては、次の敵を咬み殺す。

体はすぐに限界へ辿り着いていた。

ゆかりの精神力も尽きていて、魔術が使えない。

そして、戦いの終わりが訪れる。

脳はまだ戦える気分でも、体の各所が機能の大半を失っていた。

縁はまだ正常な機能を発揮する瞳で、ゆかりに迫る鈍く光る爪を捉えていた。

一薙ぎで、命を奪いかねない一撃が、ゆかりに降り注がれようとしている。

スローモーション。

縁は警告を発しようとしたが、血を吐き出しただけだった。

盾になるべく走り出そうとして、つまずく。

足が足としての機能を果たさず、ただぶら下がっていただけ。

ゆかりが振り向いた時には、何もかも遅かった。

ズシャッ

肉を斬る音。

縁は、最愛の姉が、目の前で、血を噴き出して、倒れていくのを、ただ見ていることしか出来なかった……

「……あ……あっ……あっ?……あ、ああぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

血をげぼげぼと吐きながら叫ぶ。

血まみれの地を這って姉のもとへ。

「時也!縁達はどこにいる!?」

駆け付けた店長は、民衆を押しのけ、やっとのことで時也を見つけた。

縁達がいないことに、ただ焦る。

「僕は、何も出来なくて、見送ることしか出来なかった……。」

噛みしめた唇から血が流れた。

時也の目は、縁達が向かったほうだけを見ていた。

店長は時也の肩に手を置き、目線を合わせて落ち着かせるように言葉をかける。

「俺が連れ戻す。おまえは大聖堂に逃げるんだ。あそこなら大丈夫だ。」

時也がなんとか頷くと店長は駆け出した。

そして、店長が駆け付けた時には、縁とゆかりが血まみれで倒れていた。

「来るのが遅かったかっ!?」

群がろうとするモンスター達を素手で打ち貫き、投げ飛ばす。

圧倒的なレベルの差を見せつけられて、遠巻きに様子を見るモンスター達。

店長はそれを捨て置いて、二人のもとへ駆け寄った。

「て、店長……。」

縁は血と涙で顔をグシャグシャにして、声を出した。

「姉ちゃんが、姉ちゃんが……。」

血を吐いてもなお、姉のことを想う。

店長は頷いて、ゆかりを診る。

かろうじて息をしていた。

弱々しく息を吸い込み生きようとする。

出血多量。

傷の深さは、じっくり見ずとも致命傷であることがわかった。

店長は自分では何も出来ないと悟る。

「……姉ちゃんは?」

店長が黙っていることに絶望する縁。

ゆかりに手を伸ばそうとして、力が入らなかった。

そこで骨が折れていたのを自覚。

店長は縁の状態を確認しながら、苦々しい表情で残酷な事実を告げた。

「……ゆかりはまもなく死ぬ。」

縁の表情が凍る。

絶望に次ぐ絶望で、心が死んでしまいそうだった。

いっそ殺して欲しかった。

それならこんな想いはしないのに。

店長は縁の応急処置を始める。

縁のほうは助かる見込みがあったから。

(しかし、本人に生きるつもりが無ければどうにもならんか……。)

繰り返される悲劇に、店長の心は既に折れている。

どうすることも出来ない無力感に、打ちひしがれる。

そして、さらなる悪夢が訪れた。

「濃い絶望に誘われて来てみれば、懐かしい顔ではないか!」

喜悦。

狂気を孕んだ喜び。

店長にとって、最悪の存在。

全てを奪っていった元凶。

「魔王っ!!!」

憎しみをぶつける。

哀しみをぶつける。

呪いをぶつける。

店長のぶつける感情は全て魔王にとって爽やかな風そのもの。

「フハハハッ!そんなに我が憎いか!そのような心の持ちようで我を倒せると思うか?」

闇の波動が辺りに充満する。

縁の傷口がうずき、血がにじむ。

ゆかりは苦しそうにうめいて血を吐く。

ただそこにいるだけで闇と死を振り撒く。

二人の前に店長が立っても、気休めにもならない。

死の足音が聞こえる。

地に臥してしまえ、という声が聞こえる。

「絶望のまま殺してやろう。」

店長をつまらなそうに見据え魔王は言った。

「そう簡単にはいきませんよ。」

透き通った、それでいて揺らめくことの無い力強さを秘めた声が響いた。

闇を振り払いながら現れたのは、聖なる衣を纏う両目を閉じた女。

「……ほぅ、我が力の匂いがするな。」

女を興味深そうに上から下へと、見回す。

「えぇ、そうでしょうとも。貴様の力は私の内に在るもの。」

「クックックッ、ならば返してもらおうか。元は我のものだ。持ち主に返すのは道理に適っていよう?」

手を差し出す。

女はそれに対して、

「『聖弾』!」

闇を払う一撃でもって返した。

いくつもの聖なる光の玉が打ち込まれるも、魔王は無傷だった。

「顔に似合わず好戦的な女だ。……なぶりがある。」

ギラリと目つきが変わった。

「こちらも本気を出しましょうか。」

ゆっくりとまぶたが開く。

そこにある瞳は左右で色が違った。

視線が魔王を貫く。

魔王の体が動かなくなる。

「石化、いや麻痺の魔眼か。」

体が動かずとも、大したことではないという表情の魔王。

「単なる足止めに過ぎません。さて、隊長、貴方はどうするつもりですか?」

魔王から瞳を反らさずに、店長へと語りかける。

「持ってきているのでしょう?『復活の指輪』を。」

「……。」

店長は無言でポケットから指輪を取り出す。

「店長、それは?」

縁が見つめる。

店長は力無く説明を始めた。

「……これは戦友が遺したものだ。身に付けているものを蘇生させることが出来る。効果は一度きりだが……。」

縁の瞳に光が灯る。

「だったらそれを姉ちゃんに!」

「副作用がある。使用すると、何かを失うんだ。恐らく、多少の存在力だろう。記憶を失う場合もあるが、こっちは稀だ。」

「存在力の少しぐらいなら!」

「……もう一つあるんだ。これは、創造の時にはマイナスなると思わなかったものなんだが、蘇生後は、あらゆるものから解放されるようになっている。魔術、魔法、呪い、ありとあらゆるから。」

「それがなんだってんだよ!?」

店長は言いにくそうにうつむいてから、なんとか言葉を紡いだ。

「俺達は召喚魔法によってここへ喚ばれた。あらゆるものから解放されるということは、召喚魔法による接続が途切れるということ。つまり、元の世界に還れなくなる。」

「なっ!?」

縁は世界の不条理さに愕然とした。

光の届かぬ場所に放りこまれたような気分。

「ひしひしと伝わってくるぞ!そのものの絶望が!」

とても嬉しそうな声をあげる魔王。

「その姉とやらが完全完璧に死ぬば、どんな絶望が味わえるんだろうなぁ?」

魔王は世界に闇を振り撒く。

「黙りなさい。」

睨みつけると麻痺がより強固にかかったのか、魔王がしゃべるのをやめた。

顔はにやにやとした表情を浮かべたままだったが。

「……リセミア、お前の力でなんとかしてやってはくれないか?」

店長はリセミア、魔眼の女へ言葉をかけた。

「私が?私に何の得があるというんですか?」

リセミアは冷たくあしらう。

「あんた、何とか出来るのか!?」

縁がボロボロの体を起こして問いかけた。

「最高位の神官ですもの。『蘇生』の奇跡は使えて当然です。」

「なら使ってくれ!」

悲痛な叫び。

懇願。

心からの願い。

かすかな希望にすがりつく。

「嫌です。」

完全なる拒絶。

交渉の余地が無い。

「何も恨みがあって拒否するのではないですよ?たくさんの人間が死んでいる中、その娘だけを蘇生しようなど虫が良すぎる。」

「俺が払う!金でもなんでも払うから!姉ちゃんを助けてっ!助けて下さい!お願いします!」

自分の怪我を忘れて額を地面にすりつける。

「リセミア、俺からも頼む。もう身近な人間が死ぬのは見たくないんだ……。」

店長も深い深い土下座を見せた。

リセミアはため息をつく。

「いいわ。縁、選びなさい。『復活の指輪』を使い、姉のいない世界に一人で還るか、高い代償を払って姉と共にいるか。どっちにしろ姉は取り戻せる。破格の交渉よ?」

縁は選択しなければならなかった。

(……どっちを選んだって、生きているほうが何倍もマシに決まってる!)

縁はしばしの沈黙の後に答えを口にした……



読者の方へ
今後の話の展開に関わる選択肢を用意しました!
1、『復活の指輪』で蘇生する
2、『蘇生』の奇跡で蘇生する

どちらかを選んでいただき、web拍手か、掲示板、メールにて回答してもらいたいわけです
番号だけの回答でもよろしいので、ぜひ回答していただけたらと思います
・・・感想などもいただけたら幸いです(笑)
期限は3月1日、23時59分までです
少しでもこのノベルに関わったなぁ、と感じていただきたいと思っております!

終了しました。回答ありがとうございました!


お気軽に叩いてやってください、喜びます(笑)


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