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「何から話せばいいかな?」

何でも聞いてこい、と待ち構える厳重朗さん。

ふむ、確かに何から尋ねればいいものか。

「では、まず貴方のことから。盗賊王と呼ばれる貴方のことを知りたい。」

さっきの力、突然目の前に現れたことも含めて知っておきたい。

「いいだろう。まぁ、俺から語るのもアレなんだが・・・。」

グラスのワインを飲み干すと語り始める。

どうやら自分のことを話すのは照れるらしい。

おっさんだから別に可愛くもなんともないんだがね。

「俺が盗賊王と呼ばれる所以は、俺に盗めないものは無いということ。」

突然、手をかざす厳重朗さん。

その手には・・・タバコ?

「まさか・・・。」

俺はポケットを探ってみた。

案の定、タバコが無くなっている。

「・・・いつのまに。」

「な?」

悪戯っ子のような笑みを浮かべて、タバコを返却される。

「だが、俺の盗賊としての能力は6レベルまでしかない。この意味がわかるか?」

6レベルまでだと?

それで盗賊王と呼ばれるほどになれるとは思えない。

ということは、俺の知らない裏技でもあるっていうのか?

俺はわからないと、首を振る。

「はっはっは、クラスが盗賊じゃなくても、盗賊のように振舞えるクラスがあるということさ。

もちろん、盗賊だけではなく他のクラスも同様に出来る。」

聞く限りだと、そのクラスは万能なクラスに聞こえるが・・・。

そんなクラスがあったか?

それとも、俺のまだ知らないクラス?

「難しく考えることはない。何かに特化していないということは、どんな力も無難にこなせるということ。

もし特化させたいのなら、力を使えばいいだけのこと。」

厳重朗さんからのヒント。

そうか、いまいちパッとしなくても、その力の使い方でどうとでも出来るクラスがあった。

「・・・貴方は勇者なんですね?」

「正解。やっとその答えに辿り着いたな。」

そうだ、最初から答えは解っていたんだ。

厳重朗さんは俺のことを『同胞』と言った。

それは少なくとも『勇者』であることの証。

きっと、突然姿を現したのも勇者の武具の力なのだろう。

厳重朗さんの手の中に光の粒子が集まり、何かが具現した。

「俺の勇者の剣、『盗賊の七つ道具』。」

ピッキング出来そうな道具やら、手鏡やらがひとまとめになったもの。

「それで剣なんですか?」

明らかに剣ではない。

「視野が狭いな。剣とは『剣』の意味ではなく、武器としての意味合いが強い。

そして、俺にとっての武器は盗賊としての技能を高めてくれるものというわけだ。」

「ということは、勇者の盾、勇者の鎧もその名前に囚われないということですか?」

「そういうこと。」

この情報は貴重だ。

これで、勇者の武具の使い道がグンッと広がる。

「俺は勇者でありながら盗賊を極めた。俺だけではなく、そういうパターンの人間は他にもいる。」

そして、そういう勇者達は勇者を極めんとする者達の補佐に回ったという。

勇者を極めんとする者、すなわち魔王を打倒しようとする者。

「勇者を極めたものでないと、魔王は倒せないからな。」

「他のクラスでは倒せないと?」

「そうだ。勇者は魔王に対する唯一の幻想武装。勇者と他のクラスでは違うものがあるだろう?」

「勇者の武具ですね。」

「勇者の武具は魔術でも神官の奇跡とも違うもの。存在力によって形を成す。」

『盗賊の七つ道具』を出しては消すを繰り返す。

そのたびに光が瞬いた。

「この存在力というものは、魂であり、想いでもある。それを魔王にぶつけてやるのが勇者の仕事というわけだ。」

それゆえに魔王と戦う勇者は、どうしようもなく光に満ち溢れたものでなくてはダメらしい。

純粋無垢な光。

穢れ無き黄金の光。

「前回の魔王との戦いでは、何十人という『勇者』が召喚された。

そのうちの9割ほどが勇者になったわけだが、結局そんな光を持った人間は1人しかいなかった。」

1人に全てを背負わせることになってしまったよ、と苦笑いを浮かべる厳重朗さん。

その勇者も魔王を倒した後、仲間達を弔いながら居酒屋を経営しているらしい。

「元の世界に戻っていないんですか?」

魔王を倒したのだから、元の世界に戻っていてもおかしくないと思うんだが。

目の前の盗賊王も含めて。

「あるアイテムの効果で帰れなくなったんだ。俺は自分から残っているんだがね。」

「そんなことも出来るのか・・・。」

だったら、各地にたくさん勇者が残っているかもしれない。

「連絡は取れませんか?その勇者とか他の勇者もですけど・・・。」

もっと詳しい話を聞きたい。

俺達が生き残るために、経験者からのアドバイスを聞くのが一番手っ取り早いはず。

「連絡の取れるものもいるが、魔王を倒した奴はもう関わりたくないといっていたからな。

俺はあいつをそっとしておきたい。」

無理に聞く出すことは出来ない。

せめて、他の人の居場所だけを教えてもらおう。

「ところで、さっき盗賊としては6レベルしかないって言ってましたけど、どういうことなんですか?」

「単純明快さ、6レベルまでしか鍛えられない。そういうルールになっているみたいなんだ。」

「じゃあ、6レベルまでなら、どのクラスであろうと身に付くと?」

「全てを身に付けたっていうやつは見たことないが、おそらくはそうなのだろう。」

だったら騎理達、クラスが勇者の連中には鍛えてもらったほうがいいな。

勇者達が要となる魔王との戦いまで、生き残ってもらわなければならない。

生存率上げるためならなんでもしよう。

「なんにしても、まずは存在力を高めること。勇者にとって最も重要なのは存在力の扱い方だ。」

レベル6ぐらいになったらまた尋ねて来いという。

「勇者を連れてな。」

騎理がレベル6ぐらいになったら連れて来ようと思う。

その時には、勇者の力の一端を話してくれるという。

もったいつけやがる。

「これでもギルド長やってるからな。色々と忙しいんだよ。」

立ち上がる厳重朗さん。

「最後に一ついいですか?」

「なんだ?」

「この情報は無料でいいんですかね?」

けっこう貴重な情報だったと思うが。

厳重朗さんは快活に笑ってから、

「同胞と愛すべきこの世界のためさ。金には換えられまい。」

心からのその言葉は、俺の心に響いた。

男前なおっさんだ。

勇者の居場所リストは使いの者に持っていかせる、という言葉を残し去っていく。

女幹部に礼を言って俺もVIPルームを後にする。

俺も、ちっとはこの世界のために働いてみようかねぇ?



あとがきっぽいもの。
作者「脳をもっと使わないといかんな、と思いました。」
リーア「なぜそうお思いに?」
作者「文章がスムーズに出てこない・・・。」
リーア「致命的ですねぇ〜。」
作者「小説とか読みまくろかなー。」
                       おわり



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